第5話川をこえて

魚を焼いたあと、ぼくは川の水を飯ごうにすくうと、それを火の上に置いて温めだした。

「なにやってんの?」

「これは煮沸しゃふつといって、自然の水は飲めるようにするために一度沸騰いちどふっとうさせるんだ。自然の水にはバイ菌などがあるから、それを熱で殺菌してから飲むんだ。」

「なるほど、水を飲むのも大変なんだな」

「今は池や川のおかげで水には困ってないけど、そのうち池や川はなくなってしまうかもしれない。だから水の確保はとても重要なんだ。」

そして煮沸を終えると、ぼくたちは川にそって歩きだした。川を渡るのは危険なので、川沿いを歩いて橋を探すことになった。

しかし歩いても歩いても、橋の姿はない。

「ねぇ、その地図に橋は載ってないの?」

「うーん、この川には橋がかかってないかもしれない・・・」

コンパスは川の向こう側をしめしている。

「つまり、ぼくたちは川を渡らないと先に進むことができない・・」

「ええっ!?それって、まずいんじゃないか・・・?」

先を進むには川をこえないとならない、だけどぼくたちが川の中をそのまま進むのは危険だ。川遊びの時は川原に近い方で遊んでいたけど、その先は水が深いかもしれない・・。

おじいちゃんも「川は見た目によらずあぶないんじゃ、油断したら深みにハマってしずんでしまう。」と言っていた。だからおじいちゃんは、ぼくを決して川のなかに入らせなかった。

「でも、川を越えないと先に進めない・・。一体どうしたらいいんだろう・・・」

アイデアを出そうとしていると、ふと川原に竹がいくつか転がっているのが目に止まった。

「これは・・・、そうだ!!」

ぼくはあることを思いついた!

「そうだっ!イカダを作ろう!」

「イカダ・・・!?東野、本気で言っているのか?」

「うん、ぼくは本気だよ!」

みんなは考え込んでしまった、ぼくだってイカダ造りは初めてだから、みんなが悩むのは当たり前だ。

「確かに、イカダで川を越えるのはいいけどよ・・・。オレたちで作れるかな?」

「確かに、作り方なんて知らないし・・」

「もし途中でこわれたら、オレたち流されてしまうよ。」

「でもイカダは作らないと川は越えられないし、それにぼくたち四人ならがんじょうなイカダを作れるはずだ!」

「そうだね・・・、ここでぐずぐず言ったって解決しないし、イカダを作るぞ!!」

ぼくたちは「おーっ!」と拳を上に突き上げた。

まずはサバイバルナイフで竹を切り分け、ワイヤーロープで縛っていく。

「東野くん、どんなイカダを作るの?」

「シンプルなものだよ」

「それって帆がついているのか?そんなシンプルなやつじゃつまんねぇぜ、バラエティー番組でやっているようなデザインや模様にこだわりのあるやつじゃだめか?」

「そんなの作ってたらつかれちゃうよ、それにもっといろんな材料を集めないと・・」

「しょうがないか・・・」

そしてぼくたちは協力してイカダの形を作ることに成功した、だけどこれだけではイカダは完成じゃない。

「あとはオールと帆が必要だ・・・」

オールは竹をつかえばできそうだけど、帆は竹では作れない。

「帆には布が必要だ、何か大きな布を見つけないと・・・」

ぼくたちは辺りに布が落ちてないか探した、すると南原ちゃんが何か見つけた。

「あっ!?あれ見て!!」

「どうしたんだ!?」

そしてぼくたちが見つけたのは、川原に打ち上げられた中型舟だ。かなりボロボロで、打ち上げられて数年が過ぎている。

「あっ、あれは・・・!?」

その舟を見てぼくはあることに気づいた、これはおじいちゃんの舟だ!!

「どうしてここにおじいちゃんの舟が・・!」

「えっ、これが東野のじいちゃんの舟か?」

「ああ、大西洋を冒険した時に舟に乗って海を渡った時があるんだって言っていた。これがその時の舟だよ!!」

「知ってるわ、東野くんのおじいちゃんって世界一周したことあるんでしょ?」

「え!!もしかして、あの東野旅師ひがしのりょしか?」

「うん、ぼくのおじいちゃん。」

「マジか・・・、東野旅師といったら世界中で話題の、未開の地を制覇してきた探検家だよ。彼が冒険した記録は、いろんな大学や研究所の資料として役立っているという話だ。」

「それすごいのか?」

北邦くんは今一つわかっていないようだ。

「すごいよ!!だって世界を冒険しているんだぜ?誰でもマネできることじゃないことをやっているんだ!」

「あははは・・・、確かにみんなそう言うけどね、ぼくはおじいちゃんのことあんまり好きじゃなかったな・・」

「えっ!?どうして?」

西野くんが意外そうな顔で質問した。

「だってぼくはあんまり外に出たくないし、おじいちゃんとのキャンプだっておじいちゃんが無理やりさそうから仕方なくついてきただけなんだ。本当は家でマンガやゲームをしている方がずっと好きなんだ。」

そしてぼくたちはおじいちゃんの舟を調べた。帆はボロだけどイカダには充分役に立つので、帆のところをもらうことにした。

「あっ、これは何かしら・・・?」

南原ちゃんが船内で何かひろった、それは銀色のカギだった。

「このカギは一体・・・?」

するとコンパスの針が激しくゆれてカギに反応した、これは一体どういうこと?

「おーい、行くぞ!」

北邦くんに呼ばれてぼくはみんなのところに戻った。







そしてぼくたちはおじいちゃんの舟からもらった帆を、イカダに取りつけた。

そしてオールを作り終えて、イカダを完成させた。

「よーし、イカダの完成だ!」

「やったぞ!!」

ぼくたちはイカダの完成をよろこんだ。

「よし、それじゃあ浮かべてみよう」

ぼくたちはイカダを運んで川の水面に置いた、イカダは水面に浮いた。

「おお、浮いた浮いた!!」

「だけどここからだよ、問題はみんなをちゃんと乗せられるかだ。」

「よし、一人ずつ乗ってみよう」

まずぼくがイカダに乗った、イカダは大丈夫だった。次に北邦くん、南原ちゃん、西野くんがイカダに乗った。

イカダはしずむことなく、ちゃんと浮かんでいた。

「やった!イカダ作り成功だ!!」

「このまま川を越えていくぞ、出航だ!!」

ぼくがオールをこいでイカダを進める。川の幅を考えると、そう長くはかからずに反対の岸にたどり着ける・・・そう思っていた時だった。

「ん?あれなんだ?」

西野くんが下流の方を指さした、するとイカダに向かって黒い巨大な影が近づいてくる。

「ねぇ、もしかして巨大な魚がいるんじゃない・・・?」

「いや、カッパみたいな妖怪か・・」

「それかワニかカバか・・」

「こわいこと言わないで!東野くん、イカダのスピード上げて!!」

南原ちゃんがパニックになりながらぼくに言った、しかし巨大な影はぐんぐん迫ってきて、ついにイカダのとなりに並んだ。

「うわぁ!こっちに来ないで、あっちにいって!!」

「落ちついて南原ちゃん!さわいだら刺激されて、攻撃されるよ!!」

そして水面から顔を出したのは、なんとイルカだった!ぼくたちは思わずあっけにとられて、目が点になった。

「え・・・・・、イルカ?」

「どうしてイルカがここに?」

よく見るとイルカはつつをくわえていて、受け取ってほしいとこちらを見つめてくる。

ぼくがおそるおそる筒を受け取ると、イルカは水の中へもぐっていった。

「なんだったんだ・・・?」

「ていうかなんで川にイルカがいるの?イルカは海にいるんじゃないの?」

「いや、カワイルカといってイルカには川の中に住んでいる種類もいる。」

「それよりもその筒は一体なんだ?」

みんなはイルカからもらった謎の筒に、目がくぎ付けになった。





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