第4話狩りと釣り

その日の夜は、夕ごはんを食べずにねむったぼくたち。なので朝はお腹が鳴る音で目が覚めた。

「あ〜、腹減った・・」

「そうだね、何か食べたいよ・・」

みんなヨダレをたらしている、そして昨日しかけた罠のことを思い出した。

「ウサギ・・・、かかっているかな?」

とれなかったら今日から飯は抜きの日々が始まる、ぼくはウサギがかかっていることを祈りながら罠のところへ向かった。

すると罠をしかけたところから、「ガサッガサッ!」という音がした。

「これは・・・!」

そしてのぞきこむと・・・、茶色いウサギが一羽かかっていた。

「やった!みんな、ウサギが捕れているぞ!」

ぼくがみんなを呼ぶと、みんなは猛ダッシュでやってきた。

「本当だ!!すげぇな東野!!」

「すごい、本当に捕まえられたんだ!」

「だけどここからは慎重に・・・、ウサギが逃げちゃうといけないから」

ぼくは持っていたサバイバルナイフを取り出すと、ウサギに近づいていった。

「本当に殺しちゃうんだね・・・」

「ああ、でも仕方ないよ・・」

みんなとても複雑な表情でぼくを見ている、かなりやりづらいけどやるしかない。

ぼくはウサギを背後から取り押させると、ウサギの首をサバイバルナイフで切りつけた。ウサギの悲鳴がぼくの心に深くささり、それが悲しさと申し訳なさになって広がっていく。

だけどぼくは冷静にウサギをさばいていく、その時ぼくはおじいちゃんが言っていたことを思い出した。



『人間は生きるために動物を狩るのだ、そして野菜や果物を育てる。人間は一人一人が多くの命の上に成り立っている、だから狩りをする時は命に感謝しなくてはいかん』




このウサギにも、ぼくみたいに生きたいという思いがあったかもしれない。だけどぼくたちのために、ぼくはその命を殺した・・・。

それが生きるということだと、ぼくは改めて思い知った。

「みんな、ウサギの肉をさばけたよ。」

「おお、焼いて食べようぜ!」

ぼくたちは火を起こして、棒にさしたウサギの肉をあぶりだした。

そして焼けたころを見て、ぼくたちはうさぎの肉にかぶりついた。

「美味い!!これがウサギの味か・・・!」

「本当に食べられるんだ・・!」

「ウサギは昔から世界中で食べられているんだ、味はとり肉に似ていて淡白たんぱくな味だね。」

「うん、おじいちゃんも同じ事を言っていたよ。」

そしてぼくたちはウサギを食べ終えると、再び歩きだした。おじいちゃんの水筒には、池の水がたっぷり入れておいた。

草原はまだまだ続くようで、ぼくたちは先へ先へと歩いていった。

その途中で北邦くんがぼくに話しかけた。

「そういえば、東野のおじいちゃんは冒険家だったよな。今でも世界を冒険しているのか?」

「ううん、つい数日前に亡くなってしまったんだ・・・」

「そっか・・・、イヤなこと聞いてごめん」

「いいよ、気にしないで」

「それにしてもすごいよな、一人で火を起こしたり、ウサギを捕まえて料理したりなんて、正直すげぇよ。」

「うん、みんなおじいちゃんが教えてくれたんだ。他にもテントを設置したり、魚釣りも少しならできるかな・・・」

「すごい・・!もうアウトドアの達人だね!」

「達人なんてそんな大それたことないよ・・、本当におじいちゃんから教えてもらったことばかりなんだから・・・」

「でもここではお前だけが頼りにしているからな、これからもよろしく。」

「うん、がんばるよ・・・」

みんなに期待されぼくは、うれしい気持ちになった、しかしぼくは緊張で震えていた。






草原を抜けるとぼくたちは川原に出た、川原は石ころがそこらじゅうにあって、水はおだやかに流れている。

「おお、川だ!」

「ここもキレイな水ね・・・」

すると北邦くんが川に片足をつっこんでいる。

そして足を川から出すと、突然服を脱ぎ始めた。

「どうしたの!?」

「いや、オレら風呂入ってないからよ。代わりに川の水を浴びようとしたんだ」

「確かにここに来てからお風呂に入っていなかったわね、もう体がかゆいわ・・」

南原ちゃんは不快そうに背中をかきはじめた、そういえばぼくも背中がかゆくなってきた。

「よし、それじゃあ入ろう!でも深いところには気をつけてね。」

ぼくたちは服を脱いで川の中へ入っていった、川の水はプールみたいに冷たくて気持ちいい。

「ぷはーっ!!気持ちいい〜」

「プールみたいに冷たい、自然の川は気持ちいいな〜」

「確かに、そういえば夏休みはまだ自然と遊んだことないもんね!」

「確かに・・・、こういうのもいいね。」

ぼくたちは互いに水をかけあったりして、川遊びを楽しんだ。その間ぼくたちは、すっかりサバイバル気分をわすれていた。

川遊びを終えて服をきがえていると、ぼくのお腹がグーと鳴った。

「あ、お腹が空いた・・・」

「あたしもよ、もうペコペコ・・・」

「でも何食べたらいいんだ?チョコはもう無いし、ウサギの肉はもう食べちゃったし・・」

「うーん、川なら魚が捕れると思うけど、どうやって捕ったらいいんだ?」

するとコンパスが光だし、釣りざおが現れた。

「これは・・・、おじいちゃんの釣りざおだ!」

「釣りざおってことは、魚が釣れるということだな。よし、東野くん!何か釣ってくれ!」

北邦くんがぼくの背中を叩いて言った、他のみんなもぼくに期待の視線を向けている。

「よし・・・、絶対に釣るぞ!」

簡単な釣りなら、おじいちゃんに教わったことがある。ぼくは川原の石をひっくり返すと、そこにいたミミズをつかまえて針につけた。そして川の中へミミズのついたハリを投げ入れた。

ぼくは全ての感覚を竿に集中し、魚のアタリを待った。

「釣れないね・・・」

「しっ!そんなこと言うなよ、東野くんがせっかく釣っているんだから・・」

ぼくの後ろでみんなが待っている、なんとか一匹釣りたいところだが、魚はなかなか釣れない・・・。

するとここで北邦くんがぼくに言った。

「ごめん、オレにやらせてくれないか?」

「えっ、北邦くんできるの?」

「ああ、おれ釣りが趣味なんだ。」

そう言うとぼくは北邦くんに竿を渡した、エサを付け替えて再び川へ針を投げ入れる。

そして五分たったころ、アタリがきた!

「よっしゃ、ヒット!!」

「すごい・・・!」

そしてなれた手つきで魚を釣り上げた。

「すごい、北邦くん・・・。」

「よーし、この調子で釣りまくるぞ!!」

ほっぽくんはそれから連続で魚を釣り、あっという間に八ぴきの魚を釣りあげた。

「よーし、これでいいかな?」

「すごい、すごい!あっという間にこんなに釣るなんて・・・!」

ぼくは川原ですぐに火を起こして、魚を串刺しにして焼いた。けむりに乗って魚の匂いが食欲をそそる。

「北邦くんのおかげでこんなに魚が捕れた、

本当にありがとう!」

「いいよ、魚釣りできて楽しかったし」

「それにしても、このコンパスって本当に便利よね。いろんなものが出てくるし」

「うん、でも出てくるのはみんなおじいちゃんのものばかりなんだ。一体、これはどういう意味なんだろう・・?」

ぼくはコンパスに疑問をいだきつつ、焼けた魚を食べた。



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る