第3話草原を切り開け

全員橋を渡り、先へと進んでいくぼくたち。

しかし橋を過ぎてからしばらくく歩くと、一本道は途中でなくなっていた。

「あれ?道が無いぞ!?」

「本当だ・・・」

そして途切れた道の先には、草原が続いていた。

「この先は、草原を渡らないと行けないようですね。」

「へへっ、なんか面白くなってきたな・・!」

そう言うと北邦くんが先に歩きだした、ぼくも後に続いて歩き出す。

「全く・・・、本当に男子って冒険好きだよね」

「ぼくはあの二人みたいに、不安だから冒険は苦手だけど・・」

「安心して、あたしだって不安だから・・」

「おーい、二人とも早く来て〜!」

ぼくは南原ちゃんと西野くんを呼んだ、二人も草原の中を歩きだした。

草原は背の高い草が多く、乗り越えるのが大変だ・・・。

「はぁ、はぁ・・・。二人とも、大丈夫?」

ぼくは出遅れている南原ちゃんと西野くんに言った。

「もぅ!なんでこんなに険しい草原なのよ!さっきから葉っぱが肌にこすれて、痛いのよ〜」

「ぼくたちは大丈夫、だけどこのまま草原を乗り越えるのは難しいかも・・・」

確かに草原に入ってどれだけたったかわからない、最初は元気だったぼくも北邦くんも息が切れるようになった。

「東野、どこかで休もうぜ・・・」

「うーん、じゃあここで休もう。」

ぼくがみんなに地図を見せながら指をさした、そこは草原の真ん中にぽつんとある池だった。

「池か・・・、ここの水飲めるかな?」

「自然の中の水は直では飲まない方がいいよ。病原菌や寄生虫がいるかもしれないからね」

「でも早くその池の水が飲みたいわ、もうのどがからからよ・・・」

「そうだね、急いで池へ向かおう。」

ぼくたちは池を目指して歩きだした。

しばらくすると、目の前に水平線が現れた。ぼくたちが近づくとそこは、とても広い池だった。

「ここが池だ!」

「おお、広いなぁ!学校の池より広いんじゃないか?」

「それにとってもきれい・・・、水の底がとてもよく見えるわ」

「本当だ、これはもしかしてわき水かもしれないよ。」

確かに今までよく見た学校の池より、とてもキレイだ。

「この水、飲もう!」

南原ちゃんはそう言うと、両手で池の水をすくうと飲みだした。

「ああ、飲んじゃった・・・」

「この水、とっても美味い!」

「本当だ!めっちゃ美味い!」

美味しそうに水を飲む北邦くんと南原ちゃん、西野くんもおそるおそる水を飲む。

「本当だ・・・、すごく美味しい。」

ぼくも水を飲もうとした時、池の真ん中の水面が少し盛り上がっているのに気づいた。そこから水がわき出ている。

「ねぇ、あそこを見て。水が盛り上がっているよ?」

「本当だ、一体なぜだ?」

池の方へ目を凝らすと、池の底から水がわきでているのが見えた。

「あそこから水が出ているんだ!」

「ということは・・・、この池は地下水がわき出てできた池・・・」

「ねぇ、こんなにキレイな水だから持っていこうよ!」

「確かに、ここで水は確保したいです。」

「そうだね、でも水筒すいとうが無い。どうしよう・・・?」

ぼくたちが困っていると、コンパスから古くて丸い入れ物が出てきた。

「なんだそりゃ?」

「あっ、これはおじいちゃんが使っていた水筒だ!」

「おお、これはちょうどいいぜ!ここに水を入れていこう。」

ぼくはおじいちゃんの水筒に、池の水をすくっていれた。

「ようし、先を目指すぞ!」

そしてぼくたちは池を越えて、先へと進んでいった。







数分後、先へと進むぼくたちの足取りがおそくなった。理由は腹ペコだからだ。

「東野くん・・・、おれ腹が減ったぜ」

「あたしも・・・、誰か食べ物持ってない?」

「そういえば、ぼくチョコレートを持っていますけど・・・」

西野くんが言うと、北邦くんと南原ちゃんが素早く反応した。

「それ、ちょうだい!!」

「わわっ、待ってよ!みんなで分けないと、ダメだよ!!」

「そうだよ、落ちついて!!」

ぼくは北邦くんと南原ちゃんをなだめた、そして西野くんはチョコレートをみんなに配った。

「これでチョコレートはもう無くなった、これを食べたらもうぼくたちの食糧がなくなってしまう。」

ぼくは考え込んでしまった、ぼくたちはこの後食糧をどうするか解決しなければならない。

「どうしたの東野くん?」

「いや、この先食糧をどうしたらいいのかなって、考えたら不安になったんだ。」

「そうだよな・・・」

みんなが一同に不安になった。すると北邦くんが言った。

「なぁ、東野。そう不安になることないぜ!今は西野がチョコレートを持っていたというラッキーがあってよかったじゃないか、だから今は気楽にチョコレートを食べようぜ!」

北邦くんはチョコレートを一口で食べた、それを見ていたらぼくの心が少し楽になった。

「そうだね、不安になったってしょうがないよね。」

ぼくもチョコレートを食べた、みんなもチョコレートを食べた。

そしてぼくたちは先へと進みだした、すると目の前の草原から何かがピョンと飛び出した。

「うわぁ、なんだなんだ!」

「ウサギだ!」

白くてツヤのある毛並みがキレイなウサギ、学校で飼っているのよりもずっとかわいい。

「あ、ここにもウサギがいる!」

「ここにも!!」

よく見ると茶色や黒・ぶち模様もようなど、いろいろなウサギが草原から顔を出している。

「ねぇ、このウサギ一匹連れ帰っていいかな?すごく可愛いし!!」

南原ちゃんはそう言うと、ウサギを捕まえようとした。しかしウサギはすばしっこく跳ねるので捕まえられない。

ぼくはウサギを見て、おじいちゃんが言っていたことを思い出した。


『ウサギは食べられる動物なんじゃよ。』

「えっ!?そうなの!?」

『ああ、ワシも冒険していた時に捕まえて食べたことがあるぞ。』



おじいちゃんの言うとおり、このウサギを捕まえられたらぼくたちはこの先も進むことができる。ゴールがどこかわからない以上、みんなの食糧しょくりょうは確保しておきたい。

「よし、あのウサギを捕まえるぞ・・」

「捕まえてどうするんだ?」

「ぼくたちの食糧にする、おじいちゃんからウサギは食べられるって聞いたことがある。」

ぼくは六歳のころから、おじいちゃんと山へキャンプに出かけ、サバイバルを教わったことがある。ウサギを捕まえる方法もおじいちゃんが教えてくれた。

「ちょっと待って!!ウサギを食べるなんて、可哀想よ!!」

南原ちゃんが止めに来た、確かに南原ちゃんの気持ちも解るけど・・・。

「でも、ウサギを捕まえないとぼくたちが食べていけないよ。」

「南原ちゃん、君の大好物のから揚げはとり肉だよね?ぼくたちが食べていくには、他の生き物を食べなきゃだめなんだ。ウサギを食べるのは初めてだけど、とにかく食べないとぼくたちはダメになってしまうんだ!」

ぼくの言葉に西野くんがフォローを入れた。

「・・・わかったよ」

南原ちゃんは悲しげに言った。

さて、ウサギをどう捕らえたらいいんだろうか・・・?おじいちゃんはワナをしかけていたけど、その罠に必要な道具は持っていない。

するとまたコンパスが光って、ぼくの元にワイヤーロープとサバイバルナイフが現れた。

「これはおじいちゃんの・・・!!」

「どうしたんだ東野?」

「これでウサギを捕まえられるぞ!」

ぼくはワイヤーロープを使って、ウサギを捕らえるワナをこしらえていった。

「すごいな東野くん・・・」

「おじいちゃんからいろいろ教わったからね、大抵のことはできるよ」

そしてぼくはワナをしかけた、ワイヤーロープの輪っかにウサギが引っかかると、ワイヤーロープが締まりウサギを捕らえる仕組みだ。

「後はウサギがかかるのを待つだけだ・・」

ぼくたちはウサギがかかるまで、静かに待つことにした。その間、ここでキャンプするための準備を始めた。コンパスからおじいちゃんのライターが出たので、枯れ葉や枝を集めて火をつけた。

「キャンプということは、今日はここに泊まるのか?」

「うん、今日はもう日もかたむいているし、先に進むのは危険だよ。」

「え・・・!?ということは、今日一日家に帰れないってことなの!?」

南原ちゃんは叫ぶと、ヤダヤダと騒いだ。

「しょうがねぇだろ、まだこの世界から出られる方法もわかってないんだぜ?」

「うぅ〜・・・、今日の夕ごはんは大好物のから揚げなのに・・・」

「ごめん・・・、ぼくのせいでこんなことになって・・・」

ぼくは申し訳なくなって、小さな声で言った。

「まぁ、この世界から出ることを考えようよ。今はスマホの連絡も通じないしね・・」

「えっ、あっ!?そうだスマホがあった!」

南原ちゃんは思い出してポケットからスマホを取り出したが・・・

「あれ・・?つながらない・・」

「だからそう言っただろ、今日一日おれたちはここで泊まるんだ。」

「はぁ〜・・まぁキャンプみたいだし、いいよ!今日はどんな話をしよっか?」

気を取り直した南原ちゃんを中心に、ぼくたちは会話を始めた。





















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