第2話冒険の仲間

あの日から三日後、ぼくの家の部屋。

おじいちゃんの家の物置小屋で見つけたコンパス、このコンパスにはこの世界とは違う世界へ行くことができる・・・はずだったんだけど。

持って帰ってから、何も起きないんだ・・。

「あーあ、つまんないな・・・」

あの日からコンパスを持っても何も起こらない、魔法のコンパスは普通のコンパスになってしまった。

だけどおじいちゃんが愛用していたコンパスだから、ぼくのお気に入りだということに変わりはない。ぼくはコンパスを首にかけて、出かけることにした。

「今日は何しようかな・・・」

そんなことを考えながら歩いていると、北邦民夫ほっぽたみおが声をかけてきた。

「おーい、歩見!一緒に遊ぼうぜ!」

北邦くんはぼくと同じクラスの友だちで、機関車みたいな名字なので「SL」とみんなから呼ばれている。

「SL、いいよ。」

「あっ、お前それはコンパスか?」

「うん、おじいちゃんの家で見つけたんだ。」

「へぇー、古いコンパスだな。今どきそんなのつけてる人みたことないよ」

北邦くんが言うと、ぼくはちょっとムッとした。

「これはただのコンパスじゃないよ!魔法のコンパスなんだ!!」

「魔法のコンパス・・・?なんだそれ!おとぎ話の読みすぎなんじゃないか?」

北邦くんはお腹を抱えてゲラゲラ笑いだした、ぼくは頭にきた!

「本当だよ!!本当に魔法のコンパスなんだ!ぼくはこのコンパスで、こことは違う世界へ行ったことがあるんだ!!」

「それってマンガでありがちな『異世界へ来ちゃった!』ってやつだろ?そんなことあるわけないじゃないか、ハハハハハハッ!!」

北邦くんは完全に信じていない、ぼくは話すのを止めた。

「もういいよ、今日は遊んであげないから」

「あぁ〜、ごめんごめん!家でアイス食べさせてあげるから、機嫌を直してくれ〜」

「・・・いいよ」

アイスにつられてぼくは北邦くんを許した。

「おーい、東野くん!」

「あっ、南原ちゃんだ」

ぼくを呼んだのは、南原真矢なんばらまやちゃん。ぼくの幼なじみで近所に住んでいる。ショートヘアーが可愛い女子で、天真爛漫な性格だ。

「ねぇねぇ、何の話をしていたの?」

「この魔法のコンパスについてさ」

ぼくは南原ちゃんに魔法のコンパスのことを話した。

「へぇ、東野くんってロマンチストね。」

「え?どういうこと・・・?」

「だって、ただの古いコンパスにすごい想像力を働かせているんだもん。とても面白いなって」

フフフと笑う南原ちゃん、どうやら実際には信じていないようだ。北邦くんはそれに気づいて、ぼくの後ろで静かに笑っている。

「いや、これは本物の魔法のコンパスだよ。ぼくはこのコンパスに案内されて、宝箱を見つけたんだ!」

「へぇー、そうなんだ・・・。それで宝箱はどこなの?」

「うーん、それは・・・」

「もういいって、お前の物語の続きはまた今度聞いてやるよ!」

北邦くんは後ろから肩を叩きながら言った。

なんだよ・・・、せっかく面白い話をしてあげたのに、みんなまともに信じてくれない。

ぼくは落ち込みながら二人の後についていった。

そしてぼくたちは公園に到着した。

「おーい、西野!遊ぼうぜ!!」

先頭を歩く北邦くんが、ベンチに座っている男の子に声をかけた。

彼の名前は西野秀次にしのしゅうじ、学年でトップを争うほど頭がいい。だけどみんなと交わるのが苦手らしい。

「なんだ、北邦か・・・。今はそれどころじゃないんだ」

「お前、夏休みも勉強してるのか?そんなのつまんないだろ?たまにはオレたちと遊ぼうぜ!」

「いいよ、ぼくには勉強があるから」

「ふーん、でもどうしてこんなところで勉強してるの?勉強なら図書館でやればいいじゃない!」

「今日は図書館休み、家には兄たちが来ているから五時まで入れない・・」

「そっか、大変だね・・・」

するとコンパスが光だして針が勢いよく回りだした、そのことをぼくより先に西野くんが気づいた。

「あれ?コンパスが変だよ?」

「コンパスが変・・・って!光ってる!!」

「ウソだろ!!マジかよ!!」

「なにこれ!?とてもキレイ、どうして光っているの!?」

ぼくたちが光るコンパスを見ていると、突然風が吹いてぼくたちを包み込んだ。

「この感じはまさか・・・!」

そしてぼくたちは、吸い込まれていった。







ぼくたちはどこかの道に倒れていた、ぼくが一番先に目を覚ましてみんなを起こした。

「みんな、起きて!」

「うーん、おれは無事か・・・?」

「みんな無事だよ!」

三人が目を覚ますと、三人がその景色にとても驚いた。

「ええっ!?ここ・・・どこ?」

「あたしたち、公園にいたよね?」

「うん、そのはずだよ・・・。でも、ここは公園じゃない・・・」

「おれたち、どこへ来てしまったんだろう・・・?」

それはぼくにもわからない、だって前に来たところとは全然違うところだもん。

するとぼくの目の前に地図が落ちていることに気づいた、それは以前ぼくが見つけたのと同じ地図だ。

「これは・・・!」

「おい、どうしたんだよ?」

「ぼくが前に見つけた地図だ、でもどうして現れたんだろう・・・?」

「ねぇねぇ!早く元の世界に戻りたいよ!」

南原ちゃんがぼくを急かすように言った。

「でも、この地図には公園も学校ものってないよ。」

「ということは・・・、ここはオレたちの世界ではないということか!?」

西野が大声で言うと、みんなパニックになった。

「どうするんだよ東野!」

「あたしたち、帰れないの!?」

「その地図に、出口みたいなものは書かれていないのか!?」

「うわぁ、みんな落ち着いて!」

ぼくは三人を落ちつかせると、改めて地図を見た。しかし地図には出口らしきものはのっていない。

「出口はのっていないみたい・・・」

「そんな、ウソだろ!?」

「あたしたち、これからどうなるの!?」

すると西野くんがこんなことを言った。

「なぁ、オレたちがここに来たのはそのコンパスのせいだよな?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、壊したら元の世界に帰れるかも。」

ええっ!?まさか西野くん、コンパスを・・

ぼくがそう思ったとたん、西野くんはぼくの首にかけているコンパスを、無理矢理取ろうとしてきた。

「ちょっと!はなして!!」

「この魔法のコンパスのせいで、ぼくたちはここへ来たんだ!コンパスをこわせば・・!」

「落ちつけ西野!!」

北邦くんが西野を止めた、そして西野くんに言った

「これは東野くんの大切なものなんだ!それにもしかしたら、元の世界へ戻るにはこの魔法のコンパスが関係しているかもしれない。もしそうだとしたら、こわしたら二度ともどれないかもしれないぜ・・」

西野くんはハッとすると、コンパスから手を離した。

「ごめんなさい、東野くん・・・」

「いいよ、気にしないで」

するとコンパスの針が動き出して、道の向こう側を指し示した。

「これは・・・?」

「もしかして、こっち側に行けば何か見つかるかもしれない・・」

そしてぼくたちは道の向こう側を見つめた。

「・・・行こう、みんな」

ぼくの口から自然と言葉が出た、みんなはうなずいた。ぼくが先頭を歩き、みんなが後に続いた。

どこまでも広がる草原の一本道を進んでいくと、やがて橋が見えてきた。地図を見ると、確かにこの先に橋があることがのっていた。

「あの橋を渡れば、いいんだな?」

北邦くんが突然走り出した。

「待って!北邦くん!!」

ぼくたちが北邦くんを追いかけると、北邦くんは突然何かにぶつかってしまった。

「いてて・・・、なんだこりゃ?」

「北邦くん、どうしたの?」

「なんか壁にぶつかったような感覚がするんだ、だけどこの先には何もないんだぜ?」

確かに目の前には何もない、ところがぼくが先に進もうとすると、なぜか先に進めない。

「一体、どうなっているんだ?」

ぼくたちが考え込んでいると、橋の近くに立て札があるのに気づいた。

『四人の仲間携えれば、新たな旅が始まる』

そして文章の下には、十字に組まれた棒と四つの四角が書かれていた。

「なんだこの文章・・・?ゲームのオープニングみたいだな」

「その下のイラストは何?」

「なぁ、西野はわかるか?」

「うーん、これは東西南北を示していると思うけど、なんの意味があるのかさっぱりわからない」

するとコンパスから黒い棒みたいなものが出てきた。それはおじいちゃんが使っていたペンライトだったんだ。

「東野くん、それは何?」

「これはおじいちゃんのペンライトだよ!コンパスから出てきたんだ。」

「マジか・・・、もしかしてそのペンライトでこの四角に文字を書き込めばいいんじゃないか?」

北邦くんの言葉にぼくの頭がひらめいた!

「そうだよ!!ぼくたちで東・西・南・北と書きこめばいいんだよ!」

「なるほど、それやってみよう!」

ぼくたちは四角に文字を書き入れた、ぼくが東、北邦くんが北、南原ちゃんが南、西野くんが西の文字を書きこんだ。

すると立て札がすぅと消えて、橋の方からギィーと扉が開くような音がした。

「なんだ今のは・・?」

「おい、この先に進めるぞ!」

先に歩いていた北邦くんがみんなに言った。

「よーし、このまま進むぞ!!」

ぼくたちは橋を渡っていった。




















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