東西南北団の冒険〜不思議なコンパスの宝探し
読天文之
第1話魔法のコンパス
車にゆられ田んぼ道をぬけていく、ふだんならいい気分だけど今回はイヤな気分になるよ。
「歩見、おじいちゃん家に着いたら片づけをするんだぞ」
車を運転する父さんが、後ろにいるぼくに行った。
ぼく・
ぼくのおじいちゃん・
ヒマラヤのエベレスト・アメリカのナイアガラの滝・オーストラリアのエアーズロックなど、世界のありとあらゆるところを旅してきた人だった。そして旅で見た景色やちょっとした出来事を、帰ってくる度にぼくに話してくれた。
ぼくもおじいちゃんのように冒険家になりたい・・・、だけどぼくにはそんな自信はないよ。
運動はそれなりにできるし、勉強だってまあまあできる。だけどぼくは「本番に弱い」という欠点がある。体力測定の五十メートル走で転んでしまい、自己ベストよりおそい記録を出してしまったこともある。
そんなぼくが冒険なんて、絶対に危険なことしかないよ・・・。
車はおじいちゃんの家に到着した、家にはすでに
「おお、歩見!久しぶりだな、今日は手伝いに来てくれてありがとう」
「それで、今日は何をすればいいのですか?」
父さんが弥太郎おじさんに質問した。
「服や食器などをダンボールにつめてくれ、入れ終わったら家の庭にまとめて出していい。後は業者に頼んである」
「それじゃあ、始めようか」
おじいちゃんの家にはおばあちゃんも一緒に住んでいたけど、おじいちゃんが亡くなってからおばあちゃんは、弥太郎おじさんの勧めでおじさんと一緒に暮らしている。三ヶ月後にはこの家は取り壊される予定だ、その前に物を運ばなくちゃ。
ぼくは服を折り畳んでダンボールに入れた、二時間ぐらいで終わったがもうヘトヘトだ。
「はぁ・・・、せっかくの夏休みになにしてんだろう・・?」
そう思いながら空を見上げると、ぼくはあることを思い出した。
「そうだ、あの小屋の中!気になっていたんだよな・・・」
それはおじいちゃんの家の隅の方にある物置小屋だ、前に小屋の中に入ってみたいとおじいちゃんに言ったら『ダメだ』と言われて、それ以降小屋のことについては気にとめていなかった。
だけどおばあちゃんがこっそり小屋の中を教えてくれた。
『あの小屋には、おじいちゃんが世界中で見つけてきた宝物が入っているんだよ』
その宝物が一体なんなのか、ぼくはとても気になっていた。
そして片づけが一段落して、みんなが休憩してた時、ぼくは物置小屋へ向かった。
物置小屋は壁が所々ボロボロで、かなり年季が入っている。ドアノブを持つと、鍵が開いていた。
ギィ〜とドアを開けると、中はホコリをかぶったものでいっぱいだ。ぼくはホコリを吸い込んで、せき込んでしまった。
「げほっ、げほっ!!なんだここ?」
壁にはシカの角やいろんな顔の仮面、大きな世界地図がかけられていた。そしておじいちゃんが使っていた大きなリュックサック・スキー用具・釣竿が床に置かれていて、さらに部屋の奥には机があって、机の上に木の箱が置いてあった。
「なんだこれ?」
ぼくは木の箱を開けた、そこには古いコンパスが一つあった。
「かなり古い感じ・・・、これおじいちゃんのかな?」
おじいちゃんが冒険していた時に使っていたことを思い浮かべたその時だった・・・!
突然、コンパスの針が勢いよく回転して、ぼくを風が包みこんだ。
「えっ!?なにこれ〜っ!」
そしてぼくの体はどこかへ吸い込まれていった。
目が覚めるとそこは草原だった。どこまでも続く緑の草に、青い空に白い雲が浮かんでいる。
「え?え、え、えぇっ!?ここどこ!?」
辺りを見回したけど、草原以外に何にもない。今までおじいちゃん家の物置小屋にいたのに、何で草原に移動したのかわからない。
ぼくがぼうぜんとしていると、コンパスが震えているのに気づいた。
「あれ?コンパスの針が・・・」
コンパスの針が右を向いたままになっている、そして針から光が真っ直ぐどこまでも伸びている。まるでぼくがこれから進む道を指し示しているようだ。
「この先に進めば・・・、何かあるのかな?」
ぼくは真っ直ぐ進みだした、草原を一歩一歩踏みしめて進む。風が吹き、草が旗のようになびき、ぼくは不思議とワクワクした気持ちで進んでいく。
そして宝箱を発見した、宝箱の近くには立て札が立てられている。
『この宝箱が開けられたとき、冒険の幕が上がる。宝箱のカギは己である』
立て札にはこんな文章がかかれていた、ぼくはおじいちゃんの言葉を思い出した。
『世界の宝箱は、一つだけじゃない。この世界のありとあらゆるところにあるんじゃ。そして宝箱のカギは己なのじゃよ』
つまりじいちゃんはこの世界にいくつもある宝箱という何かを、見つけるために冒険をしているということ言っていた。そしてぼくの目の前にある宝箱、これは世界の何かを見つけるために手にしなければならないもの。ぼくはそう思った。
「・・・おじいちゃん、この宝箱を開けるよ」
ぼくは意を決して、宝箱を開けた。
すると中には一枚の丸められた紙が入っていた、紙を広げるとそれは地図になった。
「この地図は・・・?」
それは世界地図とちがうけど、いろんな大陸がある地図だ。もしかしてここは、ぼくが住んでいる世界とは、別の世界なの・・・?
そんなことを考えていると、目の前に扉が現れた。そして扉には文章が刻まれていた。
『四人の仲間携えれば、新たな旅が始まる』
もしかして、この扉の先で仲間を四人みつけろと言っているのか?
「考えていたってしょうがない、扉を開けるぞ!」
ぼくは扉を開けた、そしてたどり着いたのはもといたおじいちゃんの物置小屋だった。
「あれ・・・?戻ってきちゃった・・なーんだ、つまんないの」
せっかく新しい冒険が始まると思っていたのに、ぼくは気を落としてしまった・・。
だけど手にしたコンパスと地図は確かに持っている、つまりこれは夢ではないということだ。
「歩見、歩見!どこにいるんだ?」
弥助おじさんがぼくを呼んでいる、ぼくは物置小屋から出ていった。
弥助おじさんに呼ばれたぼくは、両親・おじさんたちとお弁当屋で買ったお弁当を食べた。
ぼくは食べながら弥助おじさんに質問した。
「ねぇ、あの小屋は結局なんなの?」
「え?お前、あの小屋の方に行ったのか?」
「ダメじゃない!入っちゃダメだって、言われていたでしょっ!?.」
両親がぼくをしかったが、弥助おじさんが両親をなだめてくれた。
「まあ、いいじゃないか。おじいちゃんはもういないんだし、あの物置小屋も取り壊す予定だからな。それで、物置小屋の中はどうなっていたんだ?」
「あのね、シカの角や色んな顔の仮面が置いてあって、リュックサックなどが置いてあったよ。」
「やっぱりそうか・・・。実はあの物置小屋はな、おじいちゃんの秘密基地なんだ」
「えぇっ!?弥助おじさん、知っていたの!?」
「ああ、前におじいちゃんが冒険に行く前にリュックサックを物置小屋に忘れてしまったことがあって、おれに持ってきてくれと頼んだことがあったんだ。おれがあの物置小屋に入ったのはこの時が初めてだけど、冒険に必要なものや行き先で手に入れたいろんなもので、溢れていたよ。」
「そういえば子どものころに、お父さんが東南アジアのどこだったかな・・・で手に入れた仮面をプレゼントしてくれたことがあったな。嬉しくてみんなの前でつけて見せたら、大笑いされてイヤな気持ちになったっけ」
父さんが懐かしそうに言った。
「それで物置小屋で、こんなものを見つけたんだ」
ぼくはみんなにコンパスを見せた。
「おお、懐かしいなぁ・・・!おじいちゃんのコンパス」
「そういえば元気な時は、冒険の時だけじゃなくていつも持ち歩いていたものね。」
「車を運転する時も、カーナビを使わずにこのコンパスで方向を見ていたっけ」
「そうそう、カーナビ使えばいいのにって言ったら『このコンパスは魔法のコンパスだ、カーナビよりよほど頼りになる!』って、言っていたっけ」
両親と弥助おじさんは、おじいちゃんの思い出で盛り上がっていた。
「ねぇ、このコンパスぼくがもらってもいい?」
ぼくは弥助おじさんに聞いた。
「もちろんいいけど、物置小屋を取り壊す前にもう一度中を見たらどうだ?もっといいものがあるかもしれないよ?」
「ううん、このコンパスだけでいい」
ぼくはコンパスを手に入れたことがとても嬉しかった。この先、どんな冒険が待っているのか楽しみなんだもん!
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