第25話 卒業パーティ!!

 狩り大会以来、さらに黒い靄が増えて来たような気がする。そのせいなのか、なぜか私の傍にはいつも誰かがいてくれた。さすがにセルディ殿下はいないのだが、残りの三人組かアイリーンが常に傍にいる。

 私を護るためなのか、それとも私が無茶しないように見張るためなのか……どっちなんだ。ま、まあ、私としたらアイリーンを護りたいんだから、傍にいてくれるのは、こちらとしても願ったりなんだけどね。


 アイリーンにも黒い靄の話はしたそうだ。しかもこれだけ周りに不穏な空気が溢れかえっていると、皆なにかしら感じるようになってきたようだった。


 アイリーンとはランチを共にしたり、長期の休みには公爵邸に招待してくれたりもした。

 最近では魔法訓練だけでなく剣も習い出したそうで、公爵邸でも護衛騎士たちに訓練をしてもらうそうだ。


 セルディ殿下と仲良く二人で話しながら歩いている姿もよく見かけた。うふふ、この様子ならきっと婚約破棄になんかならないわよね!

 他の三人とも特に密な関係にもなってないし! ……というか、皆、護衛のつもりなのか真剣な顔で傍にいるものだから、そんな恋愛的な雰囲気には一切ならない。良いことなんだけど……そこまで警戒した態度を取られると、私まで不安になってきてしまう……。だ、大丈夫よね……。


 黒い靄の対策のためなのか、生徒会メンバーは生徒会室に籠る日々が続いていた。どうやらあの『黒い影』の話に出てくる魔石、あれに関する噂が浮上してきたらしい。

 詳しくは教えてもらえなかったが、どうやらどこぞの貴族がその魔石を手に入れた、とかなんとか。どこまで本当の話なのかは分からないが、それで生徒会メンバーは色々と忙しくなっているようだ。

 セルディ殿下からもしかしたら国王にも話が行っているかもしれない。なにやら大事になりそうで怖い……。


 そのせいでなにやら不穏な雰囲気が続いているのだが、そんなことを吹っ飛ばすことが!!

 生徒会メンバーが傍にいないときはアイリーンがいてくれるのだが、たまにアイリーンも生徒会室に呼ばれて行ってしまう。そのときはなんと!! シュリフス殿下が傍にいてくれるのよぉぉおお!!


 黒い靄の話からの狩り大会の怪我で、どうやらシュリフス殿下は私のことをかなり心配してくれているらしい……会うたびにいつも「大丈夫ですか?」と聞かれる。嬉しいんだけど心配かけて申し訳ないような。

 そして狩り大会以来、シュリフス殿下は会うたびに! なんと! いつも頭ポンッてしてくれるのよー!! むふぅ!! たまらん!!

 心配をかけていることは心苦しいけど、頭ポンッは譲れない!! これはやめないでもらいたい!! にやける顔を必死に我慢する日々です、はい。



 そうやって過ごしているうちになぜか徐々に生徒会メンバーとアイリーンと会う機会が減っていっていることに気付いた。その分シュリフス殿下と過ごすのが増えていてむふむふしているんだけどね。始めは嬉しさのあまり気付かなかったんだけど、そういえば最近シュリフス殿下ばかりだなぁ、とか思い始めた。魔石のことがそんなに大変なのかしら。


「最近、皆さんお忙しいんですかね? シュリフス殿下ばかりに傍にいてもらい申し訳ありません」

「あぁ、みんなは色々卒業に向けての準備があるようですよ」

「あ……なるほど」


 卒業パーティ!! アイリーンの婚約破棄!! いや、大丈夫よね。あれだけ仲良さげなんだし、私もアイリーンとは仲良くて苛められたりなんかないし。最近は会えてすらないし。


「ルシアさんは私と一緒では嫌ですか?」

「え!?」


 考え込んでいた私の顔を覗き込むように見たシュリフス殿下と至近距離で目が合った。

 ぎゃぁぁああ、ち、近い!! 瑠璃色の瞳が綺麗ぃぃい!! じゃなくて!!


「そ、そ、そんなわけないです!! むしろ一緒にいたいです!!」


 あ、ヤバい、本音が漏れた!!


 キョトンとした顔になったシュリフス殿下も可愛いわぁぁ!!


「あぁ、いえ! その! 違っ!! いや、違わない……じゃなくて……」


 あわあわしていると、シュリフス殿下はクスッと笑った。


「フフ、なら良かったです」


 はにかむように笑うシュリフス殿下!! ぐはぁぁああ!! 抱き付きたいぃぃい!! 誰もいないんだから抱き付いて良い!? いや、あかんやろ!! でも……ちょっとくらい……いやいやいや、我慢よ、ルシア!! 変態になってしまう!!


 悶絶しそうな勢いで私の脳内は激しく天使と悪魔が戦っておりました……。




 そしてとうとうやってきたセルディ殿下たちの卒業。


 そして同じ日に行われる卒業パーティ。皆が正装し、大広間に集まるなか、全生徒に見守られながらセルディ殿下たち三年生が卒業を迎えた。

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