第14話 次の行き先

「……じゃあ行こうか。」

「……うん!」「はい。」…うん。元気があるのは良いことだね。それからオストリッチの門番に軽く挨拶をして、街を出た。


***

しばらく歩くと道は急に険しくなっていった。草むらは深くなり、山は少しずつ近づいてきている。

するとクーラが話しかけてきた。

クーラは錬金術師と言っていたが…かなりの使い手だろうな。さっきの大砲を見る限り、相当鍛えられている。ヒトコちゃんにとって良い先輩になってくれるかもしれんな。「ねぇ。アンタ達ってどこから来たわけ?」そんなことを考えながら歩いているといきなり聞かれた。

「カクノシンの方な……。」「……私もです。」

「へぇ!何処だろ?なんか聞いたことあるかも!どんな所なの?」

「……え?行った事ないの?…冒険者はみんなそこにいくと思うけど?」

「え?そうなの?知らなかった!」

「……え?知らないの?……え?」

クーラはキョトンとした顔でこちらを見た。この子は一体今まで何をしてきたんだろう?……それにしても……この子、本当に無知なのか、それとも何か事情があるんだろうか?…ない訳ないか…滅んだ国の女の子なんだから…


***

それからもオレたちは歩き続けた。辺りは暗くなり始め、日が落ちかけていた。

ヒトコちゃんは相変わらずオレの隣で歩いていた。クーラは……あれ?……いない。

すると後ろから声が聞こえた。「おーい!アンタらぁー!待ってー!アタシを置いてかないでー!」

振り返るとそこには息を切らしたクーラがいた。

「ハァ……ハァ……アンタら…後ろ…後ろ!」そう言って後ろを指差した。その先には……マンイーターがいた。

「え……嘘……」

「これは……」

そう言いながらオレらは全力で走り出した。…マンイーターとは随分と厄介な奴を連れてきてくれたな。こいつは植物型の魔物で普段は大人しいが、攻撃されると凶暴化する。だが、一番の特徴はそいつの体液にある。そいつの体液は猛毒であり、浴びたものは全身に激痛が走る。その上、皮膚が爛れるという最悪なものになる。…毒にされては俺ではどうにも出来んぞ!?そう思いながらも走っていると、前から別の個体が現れた。(……二匹だと!?)一匹だけでも厄介なのに、更にもう一匹だと!? その時、クーラは叫んだ。「来て!」

クーラは地面に円を書き始め、陣を書き始めた。するとその声と陣に反応してスライムが出てきた。…そのスライムは基本的には普通と大差なかったが背中にあの陣があった。(…移動式の陣か。)そして彼女はスライムに向かって錬金用の機材を放り投げ、スライムの中で錬成した。

背中に大砲が現れたスライムは狙いをつけて弾を発射し、マンイーターに命中させた。しかし、体内の毒が勢いよく飛び散り、オレ達はまともに食らいかけた。だがヒトコが毒と俺たちの前に立ち塞がり、盾を構えた。……その瞬間、オレは理解した。

(……しまった!オレはまたやってしまった!)

そう思った時、彼女は苦しそうにしながらも口を開いた。「…だ…大丈夫…で…す…サボタージュ!…か…解除。」毒が治ったらしいヒトコはふらつきながら立ち上がった。「……ありがとね。ヒトコちゃん。」「…何言ってるんですか。仲間でしょ?」


***

しばらくして山の中に立つ一軒家にたどり着いた。

その家には看板があり、義肢屋と書かれていた。

そのドアを開けると、そこには一人の女性が座っていた。その女性はオレ達に気づくと、ゆっくりと立ち上がり、こちらに来た。

その女性を見て、ヒトコは驚いた顔をしていた。

その女性は長い黒髪に青い瞳をしていた。背は高く、手足は長く、スタイルは抜群だった。

彼女は微笑みを浮かべた。「…父に用ですか?」俺たちがうなづくとヒトコとクーラを連れて奥へ帰って行った。


***

連れてこられた部屋は

ベッドと机しかない簡素なものだった。そして彼女は椅子に座り、話しを始めた。

彼女の名前はアリッサと言った。彼女はまず最初に謝罪をした。

彼女の父はもう既に亡く、今は彼女が店を切り盛りしていると言う。

「…だから最近下に義肢を持って行けてないの。すみませんね。」

「い、いえ気にしないでください。…と、という事は今は貴女が造っているんですか?」

「えぇ。……といっても簡単なものだけですがね。」

「……そうですか。じゃあそれで良いんで買わせてください。」

「…親父の遺作とかないの?」

「ちょ、ちょっとクーラちゃん…!」私が諌めるとすぐに「だってどうせなら強い腕が良いでしょ?ヒトコもそうじゃないの?」

(…うぅ。ま、まぁそうだけど…流石にそういうのは)すると彼女は意外なことにあっさりと答えた。

「ありますよ。…なんならあげましょうか?」「え?」「ほ、本当!?くれる?ねぇねぇ!!」

クーラは目を輝かせていた。


***

私達は作業場に向かった。そこには大きな機械が置かれていた。そしてその中には一本の腕が入っていた。

「これって……まさか……」「そう。これが私の父が作った義手。……これをあなたにあげるわ。左手用しかないけど…」

私は驚いていた。「……そんな!こんな凄い物貰えないですよ!」「……いいの。これはもう要らないから。…というかもらって!」

え?そんな大事な形見をそんな感じで渡すかな?気になった私が質問してみるとバレたかと言った風で

「実はこの腕……欠陥品でね。……時々勝手に動き出すの。……それだけじゃない。その度に激痛が走るのよ。」……え?なにそれ。怖いんだけど……。「……それに……父が亡くなってからは誰もこの腕を使ってくれないし……」

それはそうだろ。「だから貰ってあげて?」この人怖いよ…。向こうも無理を言っているのがわかっているみたいで「2人分を無料にするから!」と言っていた。クーラは「ま!良いんじゃない!」なんて気楽な事を言う。それからずっとぼぅーと聞いていたら恐ろしい事を聞いてしまった。(…お父さんが痛みでショック死?この腕のせいじゃないよね?)不安は残るが既に私の左にそれは取り付けられてしまった。

どうやら身体に走っている魔力回路と接続しているみたいで、動きに違和感は無かった。後からアレクさんは「お前はしばらく左腕から魔法は使えないね。」なんて言っていたが、元々使えないから気にしないことにした。


***

クーラと義手の話をしながら下山をしていていた時、私は話しながらも心ここに在らずだった。(…エリス。)…彼女は私が助けなきゃ。

それが私の目標だから。(だけど今のままじゃ絶対に勝てないしな~。)……何か考えないと。

そう思っていると、突然クーラが話しかけてきた。「…なんか来てるよ?」見上げると不思議な鳥がいた。そして手紙を置いていった。

「…伝書バト?」「…何それ?」「…いや。気にしないで。」中を開けてみると、ミレイナからの手紙だった。

「ヒトコ。この手紙を送ったのは理由があるの。実はね。隣国との争いが激化して我がドラン王国が戦火に晒されそうになっているの。

…加勢しろとは言わないわ…でも、綺麗な姿のドランを見て欲しいの…貴女の噂は聞いているわ。私にも協力できる事があるかもしれないでしょ?だから会いたいわ…」(…ミレイナの国がそんな事になっていたなんて)「で?どうすんの?…着いてってあげようか?」

「…お願い。アレクさんも!」驚いて木からアレクさんが落ちてきた。「…はいはい。わかったよ。」私がドランで何をするかはわからない。

でも行かなくてはいけないと思った。友達が苦しんでいるなら助けたい。…でもそれだけじゃなかった。私はドランの相手国を知ってしまったから。(…そこに行けば敵を知れるかもしれない。)

国名 エトール王国

信仰 “アネモネ”

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