第7.5話 ご飯で痺れよう/スライムの“アレ”を飲もう
…朝が来た。そしてエリスとミレイナは眠そうにしながら、私に話しかけた。「ヒトコ?おはよう!昨日はありがとうね。…本当に」
「い、いやべ、別に!?」
「…本当に昨日と同じ人なのかしら?」
話していたらある事に気がついた。
「あ!私いま初めてちゃんとしたベッドで寝てるかも!…というかまだ一度もご飯食べてない!!」エリスは心底驚きながら、
「あ!?そっか。ご、ごめんなさい!すっかり忘れちゃってたわ!?」その様子をミレイナはコイツらどんな冒険してたんだ?って言いたげな顔で見てから、「…ま。まぁ良いや!…ヒトコ!昨日はありがとうね!まだどこかで会いましょ!…2人は次、どこ行くの?」
「……あ。ゴーレム倒しに行きます。」そういうとミレイナは少し考えてから笑顔で「じゃあね!2人とも短かったけど、貴女達を知れて楽しかったわ!また生まれ変われたら会いましょうね!!」と言って逃げるように帰った。…別に仲間にしないってば。その後、エリスと顔を見合わせて、笑ってから医務室っぽいところを後にした。
***
外に出てみれば、初日でも思い知った活気に満ち溢れた街「カクノシン」の中心だった。「それじゃ!ご飯食べましょう!」と言って、少し先を歩いていった。…もう手、引っ張ってくれないんだ。そう思いながら着いていった。すると「…遅くないかしら?横来ないの?」と言った。
…そうか。これからは並んで歩いて良いんだ!少し成長したからだろうか?…まぁ良いや。別に理由はなんでも良いや。
ギルドの近くを歩いていると店の密集地帯があった。そこで私達は飲食店を見繕い、入っていた。私達が選んだ店は大衆酒場といった感じで、賑やかな雰囲気の店だ。店内に入ると、エリスは早速メニュー表を手に取った。内容は見たことのない食材が目白押しだったが料理の名前は同じだったので大体想像できた。エリスも同じ気持ちだったらしく「…これとこれ何?…というか食べれるの?」写真がなかったため、文章の内容で想像するしかなかった私達は頭を悩ませた。…うーん。卵料理は大好きだから気になるけど、ハーピィの卵なのが気にかかる。そもそもハーピィってあのハーピィだよね?…なんかいかがわしいんですけど。そうじゃない卵はコカトリスだし、何より高い!銀貨4枚って!ほぼほぼ報酬無くなるわ!色々迷った挙句私は値段が安い上に、がっつり食べれそうな「サーペントの唐揚げ定食」を選び、エリスは値段が高い代わりにデザートまでついてる、いかにも女の子向けのパンケーキセットを頼んだ。…そうかその手があったか!。店員さんに注文を済ませてから、食べ物が来るまでの間、私達は世間話をした。…今後のことや、趣味のこと、頼んだ食べ物について、仕事のこと。…こう見ると私達はお互いをあまり知らないな。「…でね!言ってやったのよ!?女神を舐めるなぁ!ってね!…あ、今の私にも言えるか。」私がニヤニヤしながら笑いだすと、エリスは「もー!なんで笑うのよ!!」と言いながら笑い始めた。こうして私達は遠くの席のおじさんが台パンするまで笑い続けた。
***
来た料理の見た目は醜悪そのものだった。てっきりバラしてから唐揚げにしてると思ったが普通に素揚げだった。そのためサーペントの目とこんにちわしてしまった。エリスの料理は至って普通だったので「ん!?美味しいわね!これ!?」とか抜かし出した。私は意を決してかぶりつくと、その瞬間に新世界が訪れた。…空腹は最高のスパイスと言うらしいが今回の件はまさにそれだった。唐揚げと言うには硬すぎる食感、肉汁以外の謎の液体、舌が麻痺するような雑味。どれも美味い食べ物には存在してはいけないものだが、絶食2日、不眠不休、嘔吐2回。そんな万全とは程遠い身体には最高の味に感じられた。「う、美味すぎるよー!」泣きそうな目でサーペントの脚にかぶり付く私をエリスや周りの客が白い目で見ていた。…しかし、すっかり空腹が抜けた頃にサーペントは進化した。肉の苦味が成熟期から完全体に超進化したのだ。
「…ん!?コッ!か、かは!」苦しむ私を見てやっと正気に戻ったかという目をみんな向けていた。
「…はぁだからゲテモノ喰いは損するのよ?…これに懲りたら私見たいに安牌を攻めるのよ?…さぁて♪デザートを…」と言って、スライムゼリーを突こうとした。するとスライムゼリーはスプーンを弾いた。「…とんでもない活きの良さね。ん?まさか生きてる?」そうするとスライムゼリーは下の方に甘い汁を出した。…何これ?すると店員は「お客さん、初めてですか?それスライムの体液っていうか排出液です。甘くて美味しいんですよね♪ちょっとドロッとしてて食感はアレですけど…」…え?つまりコレ、スライムのおしっこ的なやつなの?そう気づくと、
ヒトコは完全に麻痺しながら「…ゲテモノ喰いが何だって?」と言った。こうして私達はいきなり異世界の食事の洗礼を味わった。
「…もう痺れたくない。」
「…ちょっと粒々だった。」
泣きそうになりながらそう呟いた。
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