第4話 成長したのね
私は生きるためには仕事をしないといけないと思った。だって異世界ものだったらギルドとかに行くし。まぁそういうなりきり的な部分は抜きにして本音を言うととにかくお金が欲しかった。
「…はぁ、私の英世×3は銅貨何枚だろう…て、いうか銅貨なのかぁ~ゴールドとかじゃないのかぁ…」空腹は勿論、眠気も凄かった。
「…事情を説明したらご飯は食べられたのかなぁ⋯」あの奴隷事件の後、私は寝床を探して彷徨っていた。
すると、カクノシンの外れにある小さな路地裏に人が沢山集まっていた。
私は興味本位で覗いてみた。そこには、薄汚れた服の人達が沢山いた。そして、その真ん中には一人の少女がいた。
その子は、皆に食べ物を配ってあげていた。そして少女は私にも「食べる?」と言ってパンを渡してくれた。
「あ、ありがとう。で、でも君は大丈夫なの?」
「うん!お昼食べたし!」明らかに痩せた彼女を見た私は食べ物をもらう気になれなかった。でも、こういう時に意固地になって折れてくれなさそうなタイプに見えたので、頭を使って解決する事にした。「…ふぅ、サボタージュ!」小さくそう言うと、またあの寒気がし出して、それから猛スピードで後方の影に走りてそこで思い切り吐瀉物をぶちまけた。うめく様な私の声を聞いた少女はヤバいものでも見た様な顔をして
「え、え。どうしたの…?」と聞いてきた。あえてサボタージュを解除しなかった私は死にそうな声で続けて吐こうとする衝動に耐えながら、
「み、見ての通り…うっ…うぷ…し、死ぬほど体調わ…悪いから…は…吐いちゃう」と言った。ドン引きの彼女は、手にあったパンを頬張りながら私を見ていた。(…や、やった。パンを食べさせられた。…もっと楽な方法があった気がするけど)
彼女はパンを食べながら私の意図に気づいたらしく、「もしかして、パンを譲ってくれたの?」と聞いてくれた。私は意図を理解してくれたのが嬉しかったけど、同意しちゃうと結局あの子は分けようとするだろうから聞こえなかったふりとアリバイの様に吐きそうなふりをしてから「…ど、どうしてあなた達はこんな路地にいるの?」と聞いた。だけど彼女の顔を見て後悔した。彼女はゆっくりと湧き上がる気持ちを抑え込む様にしながら「……実は、最近私達が暮らしててた村が魔物に襲われて…それでね、お父さんもお母さんも友達もいなくなって、行く当てもなくなったの…生き残った皆んながね…村を取り戻してもらおうってカクノシンに依頼を出そうとしたんだけど…お金が無くって無理なんだって」と震えた声で答えた。私はどう答えれば良いかわからず「そっか。」としか言えなかった。そのあと、彼女は私をサンドバッグに見立てた様に一方的に言葉を食らわせ続けた。それによるとカクノシンに抗議の意思を示すため残った村民で滞在し続けているようだった。
子供を巻き込んでこういうことをするのは、私としてはどうなんだろうと思うけどそんな意見は青臭い未成年の主張だと流されるだろうか。
そう思って聞いていたら少女は突然、「…もう帰れないのかなぁ。」と涙目でこちらに言ってきた。その切実な眼に私は胸を痛めた。
そしてそこからはもどかしさとの戦いになった。…言え。言うんだ。タダノヒトコ。転生者とは弱気を助けて、なんぼだろ!?
しかし、そんな小さな正義感とは反対に…そう。そうだよ。私はただのヒトコ。転生者と言えども怖いは怖い。悪いかよ!?だけど最後に私は
「む、村は何処?わ、わた、私が退治するよっ?」とカッコ悪いことを言った。すると少女は「え!?おねぇちゃんはゴーレムたおせるの!?」
と言ってきた。私は立候補するのに夢中で肝心の敵について聞いてなかった。「…え?ゴーレムってあのゴーレム?」そう言うと少女は
「うん!多分あれ!この前村の近くの畑が荒らされたんだよ!」と教えてくれた。
(……私の馬鹿。最後まで聞いてから言えば良かったぁぁ)それから、少女に背を向けてから、小さく「サボタージュ、涙解除。」と言って
少女に笑顔を向けてから「じゃ!任せておいて!」と言って、彼女から見えない所で横になって絶望に沈んでいった。
そういう訳で私はカクノシンに向かったけれど心臓バクバクだし、店にもいける気がしないから、既にどうやって少女に謝ろうかとしか考えていなかった。そんな後ろ向きな気持ちをサボタージュしてから門へ向かっていた。…そう。私はメンタルは弱いが、立ち直りは早い!この立ち直りを利用すれば上手くやってけそうだなぁ!!…と楽観的に向かっていたら、後ろから手を置かれた。びっくりした私は裏拳を叩き込む時みたいに振り向いた。するとシエルさんがいた。彼女は少し微笑見かける様にして。
「わ、私だよぉ!ほら!シエルです!忘れちゃったの!?」と言ってくれた。その瞬間、昨日の出来事を一気に思い出して勢いのまま、
宿のこととか、奴隷商人に捕まりかけたとか、また会えて嬉しいとか!なんでも思ったことを道の真ん中で言いまくった。
すると彼女は驚くでもなく、感心した様な顔で「…成長したのね。」と言ってきた。…ん?成長?別に変わってないと思うけど
それにシエルさんってそんなこと言えるほど私のこと知ってるのかな?…やっぱりこの人エリスか?なんて疑いの眼を眼を向けてたら、気まずくなったのか、ずっと彼女は微笑み続けた。
……こいつ絶対女神の野郎だ!!いたたまれなくなって助けに来てたのか!!ちくしょ〜!騙された!…いや、待てよ?コイツあれで結構強かったよね。オークなんて、スマホ攻撃を抜きにしても楽勝だったみたいだし…ん?いやオークとゴーレムって同列なのか?…まぁ大体同じか?
そこまで考えた私は微笑む“シエルさん”に微笑み返して話し始めた。
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