第10話 これはやっぱりかわいいのか?

「召喚獣 ブチねこベロス召喚!」


 ララン・フロミネン(ラーニャン)がそう叫ぶと、ボンッと銀色の煙が出て、それが消えると、小さな牛柄うしがらの猫の体に銀色のつのを生やした黒と白、茶色と白、灰色と白のぶち猫の頭が付いた、かわいいような怖いような妙ちくりんなのが現れた。


 そして、


「「「ニャニャニャニャニャー!」」」


 と大きな鳴き声を上げながら、なぜか召喚者であるラランではなく俺の方に向かってものすごい速さで突進してきたのである。


 まさに神速!


 一瞬で俺のところまでやって来て、3つの頭は我先にとその銀色の角で俺の心臓をつらぬこうとしてきたのだった。


 死んだと思ったね、正直。


 だが、その銀色の角はスポンジみたいに柔らかかったので俺の心臓を貫くことはできなかったみたいだった。


 黒と白、茶色と白、灰色と白の頭は俺の胸にゴロンゴロンと喉を鳴らしながら我先にと競うようにほおりしてくる。


 すると、召喚者であるラランが俺にこんなこと言ってきたのだ。


「さすがはトリプー! 他人ひとが召喚した召喚獣に懐かれるとは! ・・・・・・じゃあ、のことはトリプーがお世話してくれるわよね?」


 もちろん俺はすぐに大声で抗議した。


「何でだよ! ラ・・・・・・ラーニャンの召喚獣だろ? 何で俺が面倒見なきゃいけないんだよ!」


 そしたら、富羽根とみはねみんとがこう言ってきたのである。


「確かにラーニャンさんの召喚獣ですけど、鳥満腹さんにめちゃくちゃ懐いてますし、お世話してあげたらいいんじゃないですか? 小動物に懐かれる男の人ってカッコいいと思いますよ!」


 もちろん俺はこれにも即反発した。


「これが小動物か? 化け物だろう? どう見ても! はっきり言ってちょっと怖いし!」


 だが、富羽根みんとはこう言ってくるのだった。


「何言ってるんですか! めちゃくちゃかわいいじゃないですか! 化け物なんて言ったらかわいそうですよ! せっかく懐かれてるんだから仲良くしてあげてくださいよ!」


 かわいいのか?


 これ?


 顔が3つもあるし、角生えてるし、普通に怖いと思うけど!


 俺がそう思いながら、黒と白、茶色と白、灰色と白の顔をまじまじと見ていると、うるうるした瞳でこちらを見返してくるので何か知らないけどだんだんかわいく思えてきて、いかん、いかんと俺は頭を左右に振った。


 そしたら、なんと黒と白、茶色と白、灰色と白のぶち猫たちも俺の真似をして頭を左右に振ったのである。


 かわいいのか?


 これはやっぱりかわいいのか?


 俺がそう自問自答していると、ラランが満を持したかん満載まんさいでこう言ってきたのである。


「トリプー! 今かわいいって思ったでしょう? ・・・・・・じゃあ、いいわよね? トリプーがブチベーのお世話をするっていうことで!」


 俺はもちろん即反発しようと思っていたのだが、ちらりと同接数を見ると、さっきまで5千人くらいだったのにいつの間にか2万人を超えていたので、別に同接数が命ってわけではないが、何かうれしくなってしまって、こう言ってしまったのだ。


「わかったよ! でも、あくまでも仮、だからな! 今後俺以外の誰かに懐いたら速攻で俺はお世話係をやめるからな! それだけは憶えておいてくれよ!」

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