第11話 ハニーとかマイラバーとか!

「わかったよ! でも、あくまでも仮、だからな! 今後俺以外の誰かに懐いたら速攻で俺はお世話係をやめるからな! それだけは憶えておいてくれよ!」


 結論から言えばこの決断は完璧に失敗だった。


 と言うか、安易にブチねこベロス(ブチベー)を召喚したのがそもそも間違いだったのだ。


 とにかくブチねこベロスは甘える相手を俺に決めたようで戦闘中でもなんでも本当にやたらめったら甘えてくるのだ。


 それがまず邪魔でしょうがない。


 たまにテンションが上がって俺の顔に飛びついてきて、視界を完全に遮るという敵顔負けの非情な行動に出ることもあったので、冗談じゃなく本当に死にそうになった。


 さらにそれだけじゃなく、なんとブチねこベロスは敵のヘイトをやたらめったら集める習性があって(そんなことあの専属女性アナウンサーのお姉さんは言ってなかっぞ!)、3つの顔で舌を出したり、アッカンベーをしたりして敵をやたらと挑発するのだ! そして攻撃されると例の神速で避けるのだが、何回かに一回3つの顔の意見が割れて左右バラバラに逃げようとしてお互いに引っ張り合って結局そこからほとんど動くことができずに攻撃をモロに受けてしまうのだ。当然そのダメージは召喚者とそのパーティーメンバーに均等に割り振られるので、マジで何回も全滅しそうになった。


 それで、最終的に俺はララン・フロミネン(ラーニャン)にこう言われてしまったのである。


「ちょっとしばらくトリプーは戦闘に参加しないでいいわよ! どうやらブチベーは貴方あなたの役に立ちたくていろんなをしてるみたいだから!」


「はー? 元々こいつを召喚したのはラーニャンだろうが! それなのによくそんなことが言えるな! 何で俺だけ退けもんにされなきゃなんないんだよ!」


「しょうがないでしょう? それしか方法が思い浮かばないんだから! わたくしはみんなのために言っているのよ! みんなの安全を考えてのことなんだから納得してくれないと困るわ!」


「そんなみんなみんな言うなら、まずこいつを召喚する前にみんなに相談しろよ! いつもは即断しすぎなんだよ! 俺たちはチームなんだからたまには相談してくれないとこっちだって困っちゃうよ!」


「あんた? いくらトリプーでもわたくしのことをあんた呼ばわりするなんて許さないわよ! せめてハニーとかマイラバーとか呼びなさいよね!」


「あんたなんて前にも呼んだことあったろ? てか、そんな恥ずかしい呼び方できるか!」


「何が恥ずかしいのかしら? 全くトリプーはお子ちゃまなんだから! まあ、そこがとてもかわいいんだけど!」


「あーっ! そうやって俺の感情を上げたり下げたりするなよな! あっ! ・・・・・・もしかしてこいつがヘイト集めたがるのは、召喚者であるあん・・・・・・ラーニャンの性質を受け継いでるからなんじゃねえのか?」


「なんですって!」


「なんだよ!」


 そんなふうにラランとやり合っていると、同接はいつの間にか、なんと2万から3万に増えていた!





 ノボルさん “夫婦喧嘩最高w”


 湯冷め “トリちゃんも婚約者さんもがんば。”


 ニッキー “トリさん、ここは男がぐっとこらえる時ですよ!”


 たーやん “トリちゃん! しばらく見ないうちに結構言うようになっちゃってw”


 ふふふのふ “微笑ましい痴話喧嘩w w w”

 



 

 で、そんなコメントが流れる中、富羽根とみはねみんと(みんとっち)がこう言ったのだ。


「お二人が取り込み中みたいなので次のバトルはあたしが一人でやっちゃいたいと思います! さっきステータス・オープンしたらレベルもうちょっとで上がるっぽいので、あたしに職業何になってほしいか今から募集します! めっちゃ参考にしますのでドシドシ、コメントくださいね!」


 なにをどさくさに紛れて勝手なことを!

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