第7話 30秒以内にお答えください!

「弱点なんか知りたくないわ! このつるぎで真っ二つにするまでよ!」


 ララン・フロミネンはそう言って、富羽根とみはねみんとのアドバイスを途中でさえぎった。


 そして、その全長2メートルはありそうなどぎついピンク色のショッキングカメーレオという名の魔物に自分の背丈ほどもあるグレートソードを軽々と上段に構えながら向かって行ったのだった。


 それを、「150センチ半ばくらいのそのスリムな体のどこにそんな力が?」と思いながら背後から見守っていると、ララン・フロミネンはすぐ近くまで近づいたところでダンジョンの天井ギリギリまでジャンプし、上段に構えていたグレイトソードをそのショッキングカメーレオのどぎついピンク色の体に向かって思いっきり振り下ろしたのである。


 すると、深夜のテレフォンショッピングの番組でよく見る包丁でトマトか何かを切る時の映像みたいにスパッとそのショッキングカメーレオのどぎついピンク色の体はきれいに真っ二つになり、


「グワァアアアアア――――ッ!」


 と断末魔の叫びが聞こえたかと思うと、その2つに別れた体は緑色の光を放ちながら粉々になり、次の瞬間にはドロップアイテムに変わっていた。


 ここで説明しておくと、魔物を打ち倒すとその体は青、緑、紫、赤の光を放つのだが、その色によってその後どうなるかはそれぞれ違ってくるのだ。

 

 まず青の光を放った場合は、10回に1回くらいの割合でその体は粉々になり、ドロップアイテムに変化する。


 次に緑の光を、放った場合は、2回に1回くらいの割合でその体は粉々になり、ドロップアイテムに変化する。


 そして、紫の光を放った場合はほとんど例外なくその体は粉々になり、レアドロップアイテムに変化する。


 だから緑の光を放った時点で、ある程度経験を積んだ探索者たち(とその熱心なフォロワー)は、「これは激アツ展開だな!」と気づくことができるわけだ。


 だが、反対に打ち倒した後に赤い光を放った場合は最悪ということになってしまう。

 

 その光はリベンジの赤とも呼ばれていて、その色の光を放つと例外なく魔物は復活し、さらにひどい場合はクラスを1つもしくは2つ上げてパワーアップしてしまうこともあるのだ。


 であるから、今回は激アツ展開の成功例であるはずなのだが、ララン・フロミネンは準レアドロップアイテムの俊敏性と魅力を上げることのできる春風はるかぜのペンダントを片手で拾い上げると、こう残念そうに言ったのである。


「ああ、せっかく最新の魔物でダンジョンめしを作ってトリプーの胃袋を速攻で掴もうと思っていたのに残念だわ!」


 




 ノボルさん “準レアドロップアイテム出たのに残念って婚約者さん発想独特すぎw”


 湯冷め “ペンダント結構レアなのに!”


 ニッキー “婚約者さん無事てよかった!”


 たーやん “準レアドロップゲット! って喜ばんのかいw”


 ふふふのふ “金の宝箱・・・・・・”





 高速で流れてくる配信コメントを目で追いながら、ちらりと同接の数をチェックしてみるとなんと2万を超えていた。


 

 それでその数字に俺が驚いていると、ダンジョンのどこかからこんな声が聞こえてきた。



「あなたは今回の戦闘で初めてレベルアップしたのでこれから職業を選択することができます。最初に選択できる超初級職業は、超初級剣士、超初級槍使い、超初級斧使い、超初級武術家、超初級盾役、超初級ヒーラー、超初級魔術師の7つです。しかし今回あなたは準レアドロップアイテムを手に入れたので隠れ職業、超初級魔法剣士を含めた8つの職業から選択することができます。どれにしますか? 30秒以内にお答えください」

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