第17話 ぼっち少女の対抗手段
みんなの緊張感が高まる。
特に仮任命されたオスカーとソラは心臓を
「ソラ! 気楽にね! お兄ちゃんと喧嘩したときに叫ぶぐらいの気持ちでいいからね!」
ソラの手を握って気持ちを落ち着かせる。
アシェラ女王に続いて公爵たち、フレ、色羽が順に城壁を上がる。オスカー、ソラはその後に続き、上がり次第、土メガホンの前に立つ。
「まあ、こちらは攻められるわけじゃないし、これだけの距離があるから安心して! じゃあ最終調整に入ります! 人さんたち! メガホンの角度を調整するから手伝ってください!」
ネズミさんたちの隊列を観察する。
馬さんが縦十横十でそれが十組ぐらい川沿いに横に並ぶ。騎馬隊だ。その後ろに同じくらいの人数の歩兵隊。ネズミさんたちはその後ろに千人ぐらいいそう。普通の
アシェラ女王と試験したときより、ネズミさんたちは少し遠いので、メガホンの角度を少し上に上げる。
あのときは、おもいっきり叫ばなくても聞こえたから、多少距離が離れても問題ないだろう。
「では、第一射撃用意っ!」
アシェラ女王が合図を送るとオスカーとソラがメガホンに手をかけ、口をメガホンの先に近づける。
昨日、アシェラ女王から『号令をどうしたらよいのか?』とお風呂で相談されたので提案しておいたやつだ。
「打てーっ!」
「ニャーーーっ!」「ミャーーーっ!」
前方のネズミさんの様子を見る。
少し遠いので成果がわかりづらい。
「ちょっと行って見てきていい?」
色羽は戦いよりも自分の計算が合っていたのか答え合わせしたくてしかたがない。
「「「「だめ!」」」」
みんなにストップをかけられた。
でも、あきらめきれないので、ぶっつけだが想像していた魔法を試してみる。
まず、ネックレスを首に着ける。昨日ソラとアメショーに頼んで作ってもらったやつだ。ネックレスは魔法石をはめ込めるようになっている。風二つ、炎、水の魔法石をはめ込む。
そうして、魔法石の補助を受けて、風の魔法と炎の魔法を自分を包むように円形に下から放出する。
その外側に、水の魔法で冷やした風の魔法を下から上に放出する。
「うーん。……やっぱりうまくいかない」
今度は逆を試してみる。
まず、水の魔法で冷やした風を自分を包むように円形に下から上に放出。その外側に炎の魔法で熱した風の魔法を放出する。
「お! これならいけそう!」
「みんな! わたしのこと見える?」
色羽はみんなに向かって声をかけた。だが、みんなは各々違う方向を見てる。
「やったあ! 成功したみたい!」
魔法を解除すると、みんなが驚いて固まっている。色羽は歓喜の舞を踊る。両腕を九十度に曲げて固定、その手を上下させながら、スキップでぐるぐる回る。
「今のはどうやったのです?」
アシェラ女王が驚いた顔をしたまま尋ねる。
「今のは暑い熱と冷たい熱を自分の周りに魔法で作ったの。そしたら、光の屈折率が変わって、わたしは見えなくなれるの。
「そうか、温度差を利用して、屈折させたのか!」
白金で綺麗な髪にオッドアイの美青年だけは理解できたようだ。
フレは、現世で白猫の姿をしているときに、色羽が本の知識や感想、自分の考えを話すのを聞いている。そのときに確か見えるものを見えなくする方法みたいなことを言っていたのを思い出したのだ。
「でも、そもそも魔法には集中力と想像力がいるのに一気に四つの魔法を使えるなんて規格外すぎるよ」
「そう? 今だって眼で見ながら、口で会話して、手と脚を動かしてる! ほら、四つ! で、ネズミさんからは見えないなら行ってきてもいいよね?」
右手の人差し指を立ててポージング。お決まりのポーズだ。
みんなは止めることができなかった。フレは頭を抱えている。
フレと思念伝達を切らないこと、ザッシュを影に潜ますこと、を条件に許可が降りた。思念伝達はお互いが受け入れている間はテレパシーみたいに会話できる魔法でフレが得意なやつだ。
「わかった!」
そう言うと、いきなり城壁から飛び降りる。そのまま少し飛んで着地する。
さっきの魔法を少し修正する。下から上にじゃなくて、ペンダントから上下に暑い風と冷たい風を放出する。
「よし! 安定した! じゃあ、いってきます!」
手をふったが、もう誰も色羽が見えていなかった。
飛ぶ魔法はまだ上手くないから、超低空飛行にする。地面に落ちそうな瞬間に脚で地面を蹴って再飛行。百メートルに一回ぐらい脚が着くので、十歩で一キロはいける。
あっという間に川の前までこれた。影は上手く隠せてないから、少し離れたところからネズミさん軍の様子を見る。
まず第一印象は、人は痩せていて、ネズミさんたちの眼は血走っている。
で、遠くから見ても変化が見えなかった理由……。
効果は絶大だったようで、ねずみさんたちの横列一キロぐらいの中心百メートルぐらいの範囲で立ったまま、騎上のまま、気絶しているネズミさんが二十人ぐらいいた。ネコさんの声に気付いたものはざわざわしている。人は特に変化はない。
ここで、フレと思念伝達する。
『フレ、聞こえる?』
『うん、大丈夫だよ』
『効果はあった! 二十人ぐらい気絶している。でも中心だけなの。だから、土メガホンを外側に一センチずらしてもう一度叫んで!』
『了解!』
二分ぐらいした後、中心から両サイドの二十人ぐらいが気絶した。
『オッケー! それをずっと繰り返して!』
二分置きに外側のネズミさんたちがどんどん気絶していく。
あと二回で一番端までいけると思ったとき、後ろから大きなネズミさんが二人、前に出てきた。
「何をしている! 早く進軍をさせよ!」
一人は腰に剣を据え、もう一人は斧を背中に背負っている。剣のネズミさんはツリ目、逆立った濃い茶髪だ。斧のネズミさんはグレーの髪をしている。
「いや、……猫の声が聞こえて、……急に気絶するものが現れたのです!」
中ぐらいで焦げ茶色の髪をしたネズミさんが慌てて説明している。
「なっにーっ! 人は大丈夫なのか?」
「はい、特に……変化はございません」
「なら、先に進軍させよ! 気絶者は後ろに回せ!」
『フ、フレ……。聞こえる?』
『うん、そっちの様子は?』
『う~ん、……人さんを先に進軍させそう。こっちでなんとかするねっ!』
『なんとかするって?』
『ちょっと考える。また連絡するね』
『ちょ……ちょっと!』
う~ん、上流にダムがあれば
「ザッシュいる?」
色羽は小声でザッシュを呼ぶ。返事はないが、聞こえているようだ、影が揺れた。
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