第16話 ぼっち少女と第一回大声選手権
土メガホンの検証でアシェラ女王とサーバル公爵が倒れた後、すぐにフレが助けに飛んだ。
近くに着いて様子を見ると、二人は顔を真っ赤にして気を失っていた。ザッシュは意識を取り戻していたようだが、錯乱状態になっていたそうだ。
アシェラ女王とサーバル公爵は街に戻ると色羽を怒るかと思いきやそうではなかった。
「……無事……成功です……わね」
二人は顔を赤くしたままそう言うと、みんなの歓声が街中に広がる。そんな中、色羽に何やら小声で耳打ちしている。
「くれぐれもご内密に……お願いいたします……色羽様」
よっぽど恥ずかしかったようだ。ザッシュはというと記憶を消し去ることにしたらしい。
その夜も、みんなでお風呂に入った。
色羽は、内緒にする代わりに交換条件を取り付けて、アシェラとサーバルの胸に顔をうずめて堪能している。アメショーとソラは苦笑いでその姿を傍観していた。
母とお風呂を一緒に入った記憶もほとんどないし、お風呂でこんなに楽しく過ごしたこともなかったので甘えれるだけ甘えることにした。
翌日は、みんなで力を合わせて土メガホンを量産した。その結果、第六号まで完成させたとオスカーが自慢気に報告していた。
色羽は、別行動でザッシュに頼んで、魔法のコツを教えてもらう。アシェラ女王にお願いすると快諾してくれて、前に頼んであった魔法石になる前のセービングストーンも六つもらえた。
ザッシュには朝から晩までみっちり訓練をされた。
その甲斐あってか翼を具現化して少し飛ぶことができた。もう少し慣れればすぐに自由に飛べるようになるらしい。
炎の魔法は黒い色から白い色まで出せるようになった。こちらは比較的すぐにできた。やはり炎を想像する方が簡単だった。
でも白い炎をフレに見せて自慢したら、腰を抜かしていた。白い炎は創造神様のみがお使いになれるはずなのにと言われた。でも使えちゃったから仕方ないと色羽はニコッと笑う。
その他の魔法はまだ上手くコツがつかめない。
訓練は厳しくてめちゃくちゃお腹がすいた。だから、石灰を作るために牙と骨、卵の殻を煮た残り汁に野菜をいっぱい入れ、コメを投入し、最後に卵もいれてクッパもどきを作ってみた。
その結果、また街中が歓喜に沸いた。ニードラー、ウッドバード、ロックサーペントの骨から絶品の出汁ができていたからだ。
長蛇の列ができて、アシェラもおかわりをしている。ソラとオスカーは泣きながら食べていた。
その姿を見てたらまた色羽もうれしくなった。
魔法については、色羽なりに色々考えることができた。威力は集中力の深さ。発動は想像力。ならば、自分の想像できるものは魔法にできるのではないだろうか?
あとは、この世での自分。フレはこの世のものを誰も殺したり消滅したりすることはできないと言った。でも、魔獣は殺せた。ということは、フレの言う誰もには魔獣は入っていなかったということ。ネズミ族の聖獣にまで影響を与えている洗浄が充分でない個体は、おそらくあの世での異物だろう。もしかしたら、誰もには入らないのだろうか。
もう一つ、殺せないとは聞いたが、殺されないとは聞いていない。多分色羽は
そんな充実した一日を過ごして、第一回大声選手権の朝を迎えた。
相変わらず、色羽はソラとアメショーと同じベッドで寝ている。
でも、昨日は夜中起きてしまってなんだか寂しくなったので、メインクーン公爵の部屋に行った。公爵はまだ起きていて、抱っこしてくれたし、肩に乗せてもくれた。さらに尻尾をモフモフもさせてくれた。目標を達成して満足し、ベッドに戻った。
朝の用意をして
今日は、色羽は見学だけで審査員は行わない。みんなに判断してもらうためだ。
その代わりセービングストーンを手にして、ずっと魔力を込める。魔法石になると色が変わるので、わかりやすい。炎、水、風、雷を想像して力を込めると、赤、水色、緑、黄色の魔法石ができた。炎と風は二つずつ作ることにした。
大会開始後、そこかしこで『ニャー!』とか『ミャー!』とか各々の威嚇の声が聞こえる。たまに歓声が上がったり、笑いが起こったり。とりあえず、最終決定は夕方みたいなのでそれまでは気楽にしていようと思って、この後のことを考えてみる。ネズミさんたちとも仲良くなりたいな。
考えごとをしているうちにすぐに夕方になったが、決勝戦が始まる前に城壁の見張りの人さんが焦って階段から降りてきているのが見えた。ほとんど転げ落ちるぐらいの勢いだ。
「敵襲ー! 敵が軍隊を率いて川の向こうまで来ています! 数はわかりませんが、めちゃくちゃ多いです!」
色羽は予想より少し早かったことに驚きを見せる。食糧が予想より足りていないのだろうか? それとも何か他の要因があるのか……
とりあえず大声選手権の決勝は中止し、各種配備にあたるようにアシェラ女王から命令が下る。
「オスカー、選手権で残っているものを、土メガホン隊として、配備につかせよ!」
今は西の城壁の上に巨大土メガホンが二個、南の城壁に二個配備されている。
みんなの緊張感が高まる。
とりあえず、大声選手権の有力者がメガホンの配備につく。
西側はオスカーと妹のソラだった。
そのとき、ばっと風が吹いて、腰まである白金が舞う。アシェラ女王の綺麗な茶髪も舞う。みんなの緊張感が高まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます