第14話 ぼっち少女と共同作業
魔法の取り扱いナンバーワン決定戦の予選が行われる。
お題は、誰でも知っている必要があるので馬にした。好きな木を選んで、馬の形に削ってもらう。使う道具や魔法は自由。参加者は自薦他薦問わず、制限時間一時間、完成したら石舞台に並べる。投票形式にて勝敗を決する。
ちなみに初めて知ったけど、人さんは全員魔法が使えないらしい。
予選の結果、票が三つに割れた。一つは立派に
この三つで決選投票を行った結果、二足で叫ぶ馬が一位、駆ける馬が二位となった。
「作ったものは前にでよ!」
アシェラ女王がそう言うと自ら一歩出た。フレも一歩前に出る。アシェラ女王が佇む馬でフレは駆ける馬の製作者らしい。
もう一人一位の製作者が名乗りを上げないので、みんながざわつきだした。
「わたくしめが」
アシェラ女王の後ろから、突然声が聞こえた。
「やはり、そなたであったか」
周囲がさらにざわついた。女王の後ろに立っていたのは全身黒ずくめだったからだ。眼と尻尾と耳だけ出ていて尻尾と耳は黒くて眼はゴールドだ。
「このものは、ザッシュ! わたしの護衛と隠密業務を担っています。ザッシュは公爵ではないけど、わたしの魔法の先生でもあるのです」
なんと、魔の森の時は影魔法を使って、色羽の影から護衛をしてくれていたらしい。フレはザッシュを知っているが、魔の森のときに色羽の影にいたのは気づかなかったみたいだ。
「このものが、魔法の取り扱いナンバーワンです!」
アシェラ女王が声高らかに宣誓すると拍手と歓声があがる。メインクーン公爵も戻ってきて称えている。
「それがまだなんだよね~! 今からフレとザッシュで一位決定戦を行います!」
色羽が高らかに変更を宣誓すると、二人の目の前に二メーター角の木の塊が用意される。
フレはまんまと乗せられたことに気づいたようだ。顔がひきつっている。
「では、地面の砂に書いてあるメガホンを木で作ってください!」
こうして二人は木からメガホンを掘り出す作業をさせられた。
フレは風の魔法と炎の魔法を駆使して火のカッターみたいなものを使い、どんどん削っていく。
ザッシュは、手の平ぐらいの三角石を取り出した。三辺とも鋭利になっている。それに魔法をかけて光った石で木を削りだす。
二人とも外側は円錐の弓なりになった感じになっていていい調子だ。
そこからまず苦戦したのはフレだった。中を削りとるのに、炎と風の魔法だとうまく曲線が削れないらしい。そこで、土の魔法で二十センチぐらいの表面がザラザラの固い球を作り、それで、内側を削りだした。
ザッシュは、外側が終わると、半円型の石を取り出した。また魔法をかけて光らせ、木をえぐっていく。
二時間ほどして二人のメガホンは完成した。
外側は二人とも同じ出来映えだったが、内側の曲線、ツルツル度合いがあきらかに違って、優勝者は文句なくザッシュとなった。
「魔法の取り扱いナンバーワンはザッシュです!」
色羽はニコッとザッシュに笑いかけた。顔は隠れていて表情はわからないが、あきらかに照れているようだった。
「「「「おーーっ!!」」」」
みんなの歓声と拍手がザッシュに向けられると恥ずかしくなったのか、アシェラ女王の影に隠れた。
「では、ここからが皆さんの本番です!」
そう言って、五メートルもの大鍋に粘土、川砂、
「まずはここに入れるだけ入ってダンスをどうぞ! 暖かくなってきたら教えてね。これは土壁の材料でメガホンに使います。もし、脚に違和感が出た人は、レモンとか柑橘類の汁で洗うように。あっ、食べ物だから、ちゃんとごめんなさいしてね」
レモンとか柑橘類があるのかはわからなかったが、念のため注意喚起をした。
鍋には主に人が入って、脚を交互に力を入れて踊る。膝ぐらいまであるので、脚をとられこけているものもいて、周りは笑いに包まれる。
「じゃあ、残りの人は、フレの作ったメガホンを立ててください。大きい方が地面です。その後は、メガホンの表面に長い木と
そう言って色羽が少しだけ実演してみると、みんな手伝いだす。
あっという間にフレの作ったメガホンの外側に骨組みができた。
「次は骨組みを上から抜き取って、練った土をペタペタ貼っていきます。外側も中側からもです。厚みは三センチぐらいです。あっ、中はできるだけツルツルにね! 完成したら第一号だから、外側に手形を残したい人は跡をつけてもいいよ!」
大体の厚みを指で幅を作って教える。右目を閉じてウインクのプレゼントと一緒に。
「完成したら風の魔法で乾かしていきます。ネコさんたちお願いします。ひび割れが出たら補修しながらで大丈夫です」
こうして、土メガホン第一号が完成した。曲線が綺麗なラッパ型で、先端の大きさと長さは二メートルいかないぐらいだ。
ちょうどサーバル公爵も戻ってきた。なかなか苦戦したらしいが、メガホンを置くには立派な屋根付き土台が完成している。早速、メガホンを土台に置いて風の魔法で補助しながら城壁の上まで運んで設置する。
「うんっ! いい感じ!」
「あの……木で作ったやつでよかったのでは?」
メインクーン公爵が疑問を投げ掛ける。アシェラ女王もずっと思っていたみたいな表情だ。
「木は腐るのも早いし、虫もつくでしょ? あと吸音する場合もあるからだめ。でも材料には石灰を入れることができたから、殺菌効果も強度補正もできたの」
「は……はぁ」
二人は少しだけしか意味がわからなかったが、なんとなく納得することにした。
「じゃあ、試してみよう! 飛べる人は川の奥まで行って!」
飛べる人はアシェラ女王ぐらいしかいなかった。フレは斬撃より簡単だといっていたがそうでもなかったみたいだ。聞くと、外に向ける魔法より自分に向ける魔法の方が繊細さが必要らしい。
サーバル公爵が行きたそうにしていたので、アシェラ女王が一緒に飛んで連れていってくれた。
フレは『絶対いやだ!』と頑なに拒んだ。
こちら側から二人は川の手前で蟻みたいに小さく見えている。
「じゃあ、みんな試してみるから、わたしから少し離れて、二人の様子を見ててね!」
色羽のオッドアイがいつも以上に輝き、悪い顔をしているのを、フレとソラだけは気づいた。
「アシェラはやわらかい美乳でサーバルは隠れ巨乳! 触ったら二人とも変な声を出してた!」
……
アシェラ女王が倒れた。
サーバル公爵も倒れた。
ザッシュがアシェラ女王の影から現れて気絶した。
みんなはわけもわからないまま、大歓声を上げた。
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