第13話 ぼっち少女のピクニック

 真っ暗闇から、明るい光を感じてまぶたを開く。


「うーん、よく寝たあ!」


 色羽いろはは手を上にあげて精一杯をする。今日も腰までのびた白金の髪がとても綺麗だ。


「「おはようございます、色羽いろは(様)」」


「おはよう、ソラ、アメショー」


 そう、昨日はソラをお持ち帰りした。

 屋台で美味しい食べ物を堪能してからはずっと一緒にいた。街の中も少しだけ案内してもらった。

 でも、それでは飽き足らずまだ一緒にいたいとをこねた結果、ソラはお城でお泊まりすることになった。アメショーも同じくらいの見た目だから、お目付け役的に一緒にと言われたようだ。

 広い一つのベッドで三人で寝るなんて、(行ったことないけど)修学旅行みたいでワクワクしたし、現世の話をすると二人はめちゃくちゃ喜んでくれたので嬉しかった。


「アメショー! さまはいらないって」


「でも、わたくしは公爵なので、許してください」


 雑談をしながら、用意をして会議室の扉を開く。


「ソラはアメショーの隣に座るといいわ。わたしが許すから会議に出ても大丈夫よ」


 一般民だからと会議に参加するのを遠慮したが、色羽とアメショーに半ば強引に連れてこられた。


 みんなが定位置に座ると会議が始まる。


「おはようございます。では、本日はメガホン作りでしたか? 予定はどのように?」


 アシェラ女王がフレと色羽の方を見てにっこりする。


「今日も魔の森で魔獣狩りをしましょう! それでまた宴会を!」


「「「「「だめです!」」」」」


 全員に反対された。昨日は仕方なかったが、毎日魔獣を狩って食べてしまうと、日常生活が崩れるらしい。ここはで現世に生まれ変わるための世界なので、毎日ご馳走を食べたら自堕落な住民が増えて困るし、『フレと色羽がいなくなった瞬間、間違いなく暴動が起きるからやめてくれ!』と懇願された。創造神様にも怒られるらしい。


「ちぇっ! では、予定どおり今日はお城の裏山にピクニックに行きますっ!」


 立ち上がり、右手の人差し指を立ててポージング。お決まりのポーズだ。




 ということで、今みんな山登りをしている。理由を聞いても理解できるとは思えなかったので、みんな素直に従った。荷馬車もあるので比較的緩やかな場所を見つけて、徐々に登っていく。

 

 十五分登っては休憩があり、その度に色羽は周囲を確認して茂みの中に入っていく。フレは心配だからと念のため行動を共にする。


 二時間ぐらい登ったところで、ようやく色羽は茂みから笑顔で戻ってきた。


「はい! やっと見つけましたっ! では、魔法が使える方と力に自信がある方はついてきて下さい!」


 声だけかけてすぐに茂みに戻っていく。少し歩いていくと岩が競り出している部分の下のところで、止まった。


「はい、ここです! ここをみんなで掘ってください。黒土から色が変わったら教えてね。あ、班分けをします。こちらは先行十人で。後はわたしについてきて下さい」


 色羽はそこから更に真下に下る。


「では、第二班! ここを横から掘ってください。同じく黒土から色が変わったら教えてね」


 両班ともに十分ぐらいで声が上がる。ちなみに一番活躍したのは、オスカーだった。


「うぉーーっ!」


 大声をあげながら一心不乱に掘ってくれた。


 ソラが苦笑いしている横で土を確認する。手でギュッと握って固まり具合とほぐれ具合を。いい感じでかたまりになっている。


「オッケー! いい粘土です! この土を荷馬車に積めるだけ積んでください!」


 しばらくすると、みんなお腹がすく時間になった。


「一度休憩しましょう! おにぎりを配るのでみんな並んでください」


 アシェラ女王がお昼を用意してくれたようだ。


 おにぎりの中には昨日の串焼きに使用したニードラーのお肉や、ウッドバードの照り焼き、ロックサーペントの燻製が入っていた。そこらかしこからまた歓声が上がった。

 お昼休憩を挟んで粘土の採取は続く。


 ようやくこれでメガホンの材料は揃った。


 粘土を荷馬車いっぱいに積んで街に戻る。作業場所はもちろん物見塔広場ものみのとうひろばだ。

 早速、昨日の炊き出しに使っていた五メートルぐらいの大鍋を三つ用意してもらい、一つでお湯を沸かしていく。


 メインクーン公爵にはわらを集めて小さく刻んで持ってきてもらうようにお願いをした。


 サーバル公爵がわたしにも仕事が欲しいみたいな顔をしていたので、巨大メガホンの屋根付き土台を作ってもらうように頼む。木は魔法の暴発で切っちゃったやつがいっぱいある。一応、昨日の宴会前に皮剥ぎと煮沸しゃふつ消毒、乾燥までをスコティッシュ公爵にしてもらっていた。釘があるかわからなかったので、日本の伝統工法『木組み』の蟻継ぎと万能な河合継ぎを教えた。補助的に緩い場合はせんやダボを使うようにも。栓は木の釘みたいなものだ。


 お湯が沸騰してきたので、砕いた魔獣の牙と骨、卵の殼を茹でる。二時間ぐらい茹でたら取り出し、フレに一番熱い炎の魔法で熱してもらう。念のため、予備の木で火力を確認する。ちなみに一番熱いのは黒色で木は一瞬でちりになった。つぎに青色は墨になったので、青色で熱してもらうことにした。

 熱した後、水をかけると白い粉が出来上がる。これで石灰は完成だ。見ていた人からは歓声があがる。

 粘土と川砂は火であぶることにする。石舞台に各々広げて、赤い炎で焼いていく。赤色の炎の魔法を使えるネコさんは結構いた。オスカーもソラも使えるらしい。ただ、みんな火力は小さいし、持続力はないみたいだった。


 もう一つの鍋はつると根っこと一センチ角で三メートルぐらいに細長く刻んだ木を茹でる。


 茹でている間、色羽は地面の砂に木の棒でなにやら計算をしながら、メガホンの外郭を書いていく。

 メガホンというよりもラッパの先みたいな形のものだ。叫ぶ側から先に行くにしたがって弓形にどんどん大きくなる。

 

「これで下ごしらえも整ったし、今から魔法の取り扱いナンバーワン決定戦を行います!」


 またいきなり右手の人差し指を立ててポージング。お決まりのポーズだ。


「さあ、ゴニャー帝国で魔法の取り扱いがうまいのは誰だー?」


 色羽は盛り上げるため、みんなに聞こえるように辺りを見回しながら叫ぶ。


『そりゃあ、アシェラ女王様だよな』とか『調整者ちょうせいしゃ様も入れたらどうなんだ?』とか『実はスコティッシュ公爵かも?』みたいなざわざわした感じになった。


 さあ、果たして誰なのだろうか?

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