第12話 ぼっち少女とはじめてのご飯
服は汚れていたからと黄色のドレスを用意してくれていた。型っ苦しいので断るとクローゼット部屋に連れていかれて、自由に選んで良いと言われたので浴衣を探したけどさすがになかった。なので、淡いブルーのボタンブラウスとグリーンのスカートに決めた。グリーンのスカートは、膝くらいの長さで少しふわっとしていて、白い紐で腰を調整できるのでそれをリボン結びにする。
お城から外を見ると空が暗くなっていた。あの世にも夜はあるらしい。あとからフレに聞いたら、現世に生まれ変わるための世界なので、できるだけ現世に似て創られているんだよ、と教えてくれた。
今はお城の休憩室みたいな所でくつろいでいる。サーバル公爵は、白のシャツワンピに黒のハーフパンツだ。金髪と黒の斑点模様が余計に映える。アシェラ女王は、薄い水色のロングワンピース。服はラフになったのに気品さは変わらない。
三人で談笑していると、ノック音が聞こえてドアが開く。
「さあ、三人のご令嬢様。そろそろ
そこには白金の髪で真っ赤な瞳と暖かな緑の瞳の青年が黒シャツ、グレーパンツの姿で立っていた。
「フレっ! 着替えたんだね! 似合ってるよ、少しは休めた?」
すぐに立ち上がり、さっと近づいて話しかける。
「あぁ、少しはゆっくり休めたよ。色羽も似合ってるね! とても可愛いよ!」
四人揃って、
今は広場の端と物見塔の周りに夜店のような屋台が並んでいる。屋台はおそらく五十以上あるだろう。湯気や煙が出ていい匂いが色々な所からしている。
歩きながらフレがせっかくだからと倒した魔獣と代表的な料理を教えてくれる。
まずはニードラー。
ニードラーはネズミ族系の魔獣。
串焼きや、野菜炒め、肉団子に使われることが多い。
次にウッドバード。
こちらは鳥族系。魔の森では木に擬態している魔獣。
唐揚げ、照り焼き、焼き鳥が好まれる。
ロックサーペントは蛇族系の魔獣。
シチューなどの煮込み料理、鍋、燻製によく使われている。
「今回の成果はこんなもんかな。たしかネコ族はニードラーの味が一番だっけ?」
「ウッドバードも柔らかくて好きですわよ」
アシェラ女王が涎を垂らしそうな勢いだったが、住民の手前、気品さはなんとかキープしている。
「わたしは、どの肉というより、シチューと唐揚げが好きです!」
サーバル公爵は既に涎を垂らしていた。一見男勝りに見える感じの顔が完全に崩れている。
「食べる前に一仕事してからね」
石舞台まで進むと、メインクーン公爵、アメショー公爵、スコティッシュ公爵が待っていた。
メインクーン公爵は黒いパンツに茶色のシャツがはち切れそうだ。アメショー公爵はピンクのヒラヒラドレスを着ていて可愛い。最初会ったときは十八歳ぐらいだと思ったけど、色羽より背も小さいし、可愛い服を着ているから、今は余計に幼く見える。スコティッシュ公爵はロングコートみたいなのを着てる。相変わらず優しいおじいさんみたいな感じ。
みんなで、舞台にあがると、その前に大勢が集まってきた。ネコさんは前の方にいて、後ろの方には人がいっぱいだ。
「皆のもの、よく集まってくれた」
アシェラ女王がまず声をかける。
「今日は久しぶりに
そう言うと、みんなが一斉にその場で
「ありがとうございます!」
『ありがとうございます!』
メインクーン公爵が大きな声でお礼を述べると、その後みんなの声が続く。まるで声をそろえて発声練習でもしているみたいだ。
「では、色羽様よりお言葉を頂戴する!」
そんな話は聞いてなかったので、びっくりしておどおどした。魔の森に行ったのは木と
「……やあやあ、……みなさん、ごきげんよう? 麗しく? ま、まあ、今日はいっぱい食べて第一回大声選手権頑張ってね。人さん? は、お手伝いよろしくねっ!」
「ありがたきお言葉」
『ありがたきお言葉』
また発声練習だ。
「では、早速だが、宴会をはじめよう! 今日は存分に食べて飲んで鋭気を養うがよい! 我々も楽しむから、気を使わなくて良いぞ」
「「「「「おーっ!」」」」」
今度は、一斉に大声が響き渡った。こっちの方が声に気持ちがのっていて気持ちいいな、と思った。
「うんまあーっ! これ、うんまあ!」
色羽は串焼きと焼き鳥を食べていた。現世で食べているのより、なんか肉のコクが深い。
ニードラーの串焼きは塩味なのに、噛めば噛むほど肉の甘味が増していく。飲み込みたくないぐらいに。でも、噛んでいるとどんどん溶けてなくなっていく。
ウッドバードの焼き鳥は、甘辛たれの味が最初口いっぱいに広がってその後に独特の味がある。木の香りというか、いろんなスパイスで漬け込まれたみたいな感じの味だ。噛む度に鼻に爽快感も抜けていく。
「どうだい? お気に召したかい?」
フレが色羽の口の周りに付いたたれを優しく拭きながらニコッと覗き込んだ。
「ほら、これもうまいぜ! 燻製の串焼きだ! 一本どうぞ」
フレと逆の方から色羽の目の前に串が差し出された。
「ありがとう!」
「あ~っ、これもうんまあ! ベーコンよりあっさりしているのにチーズみたいな感じの深みがあるね!」
「おにいちゃあん、ダメだって~っ!」
おにいちゃん? あれ? 確かに聞いたことのない声だったと色羽は燻製串をくれた人を見た。そこにはライオンみたいな明るい茶色髪のネコ族と、同じ髪色でおかっぱカチューシャのネコ族がいた。おかっぱの方は見た目は同じ歳ぐらいだ。
「どうだ、色羽様、美味しいだろ? あ、先に初めましてだな。おれはオスカー。で、こっちが妹のソラだ!」
「初めましてより、美味しいのありがとう!」
あいさつよりお礼を優先した。だって美味しかったから。
「おにいちゃんが、無礼をすいません」
ソラがオスカーの頭を押さえて頭を下げさせ、自分も同じようにする。
「いやいや、今日は気にしなくていいんだよ。アシェラ女王も言っていただろう?」
フレがまた色羽の口を拭きながら、優しい瞳でソラに説明する。
「ソラっ! わたしとお友達になって!」
色羽は急に叫んで手をとった。初めて同じ年齢ぐらいの
フレとオスカーはもちろん、ぽかんとしていた。
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