第11話 ぼっち少女の小休止
竜巻で運搬を終えたあと、さすがのフレも疲れたようで、魔の森で少し休憩することを
帰りはメインクーン公爵とみんなには荷馬車で戻るように頼んだ。荷馬車は空っぽだから、帰りの川で砂を積めるだけ積んで戻ってほしいと依頼しておく。聞くと川は膝ぐらいの深さらしいので簡単だろう。
そして二人は飛んで街に戻る。もちろんフレの魔法で色羽は運んでもらう。
サーバル公爵は無事に生きていた。竜巻で飛ばされてかなり目が回って、それでも地面付近でなんとか風の魔法を使って着地したらしい。
いや、本人は着地したと言い張っている。……でも、サーバル公爵は……砂まみれだった。なんか、腕もおさえているようだが、それも気のせいらしい。
まあ、本人が大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろう。フレはサーバル公爵の無事を確認して、少し休むと言って街に消えた。
サーバル公爵は竜巻に乗ったものは全部、城壁の五百メートル手前ぐらいに落ちたと教えてくれた。
計算通りだったのでうれしくなり、歓喜の舞を踊る。両腕を九十度に曲げて固定、その手を上下させながら、スキップでサーバル公爵の周りをグルグルと。サーバル公爵はどうしていいかわからず、苦笑いしている。
しばらく踊ってから周りを見てふと気づく。
「あれ? で、結局竜巻で運んだ木とか魔獣は? どこにいったの?」
「あ、それなら、落下の衝撃音にビックリした住民が城壁の外へ出てきていたので、手の空いている住民を集めて、全て場内に搬入させました!」
堂々と説明してくれたが、『わたしが頑張ったから褒めて! お願いっ、褒めて!』というオーラが身体中から発せられていた。さすがに色羽も察したので、丁寧に対応することにする。
「サーバル公爵、指揮いただきありがとうございます。それほどお汚れになっているのも自ら手伝いもしてくれたのでしょ? あとからゆっくりわたしとお風呂に入りましょう!」
丁寧に対応しながら、目標があったことを思い出したので、色羽は上手く言葉をつなげることに成功する。お風呂ってあの世にもあるかわからなかったが、とりあえず言ってみた。
「ありがたきお言葉。まことに恐れ入ります」
サーバル公爵は、そう言って頭を下げたが、右手で小さくガッツポーズをしているのを色羽は見逃さなかった。
その様子を見て、後ろを向いてからしてやったりでニヤリと悪い顔をする。
そんな駆け引きをしていると、アシェラ女王の声が聞こえた。城壁近くからこちらを呼んでいる。
「本当にすごいですわね! 今日は街のみんなで炊き出し宴会をしましょう!
みんなが喜んでくれているなら、色羽もうれしい。昨日までの人生では味わえなかった感情だ。
「あ、魔獣の牙と骨は残しておいてください。違うことに使う重要なものなので。あと、お風呂はこの世界にありますか?」
悪い小悪魔は自分の目標に貪欲だ。
「骨と牙の件、かしこまりましたわ。解体屋にすぐに申し伝えます。お風呂は城内にありますよ。あっ、色羽様も、お汚れですわね、サーバル公爵なんて砂まみれじゃないですか、さぞかし凄い戦闘だったのでしょう! では、ご一緒についてきてください」
サーバル公爵は苦笑いしているが、自分から魔の森のことは説明しなかった。
そうして、アシェラ女王に連れられて城内のお風呂に案内してもらう。
「わぁ、めちゃくちゃ広いですね~!」
二十人ぐらいはゆうに入れる広さの大浴場だった。聞くと従業員が主に使うらしい。ただ、時間をずらしてアシェラ女王も使用するそうだ。打たせ湯もある。
「ここは魔法石で維持されてるのでいつでも使えますわよ」
「……魔法石? あの……魔法石とはどんなものなの?」
色羽は早速ワンピースを脱ぎながら、アシェラ女王に質問する。
「魔法石は、特殊な鉱石であるセービングストーンに、魔法を覚えさせて貯蓄することができる石ですわ! 例えばここでは、水を作る魔法石、水を温める火の魔法石、水を綺麗にする魔法石が主に使われてますわね。魔法を使える人間が魔法石を手に持って集中力が続く限り魔法を貯蓄しますのよ」
「そんな凄い石もあるんだね! じゃあ、音を大きくする魔法もあったりする? あとセービングストーンも!」
色羽の思考が加速していく。
「セービングストーンは少しならまだありますわよ。音を大きくする魔法はよくわかりませんが、調整者様にお聞きすればわかるかと思います」
自分の準備はできて、サーバル公爵が脱ぐのを待っているが、鎧から外しているので時間がかかっている。
「ちょ! ちょっと色羽様! ……な、何を?」
「いや、遅いから手伝ってあげようかなあと思って!」
そう言いながら、サーバル公爵のズボンを一気におろした。金髪でボーイッシュな髪がなびき、黒の斑点模様の耳が赤くなる。尻尾もピクッピクッと動いている。
「さあ、入りましょう!」
赤い顔のままを、手を引いて打たせ湯で寄り添い、汚れを取って湯船にダイブした。
「あ~、気持ちいい~!」
「ちょ、ちょっと!色羽様っ!」
「ん?」
「ん? じゃなくて、気持ちいいって!」
「うんっ! サーバル公爵の胸気持ちいいね~!」
色羽は湯船でサーバル公爵の巨乳を堪能した。やはり隠れ巨乳だったので、これでもう一つの目標もクリアだ。
『あらあら』と言いながらアシェラ女王も入ってきた。
「今日のお礼だね~!」
色羽は二人の胸と尻尾をモミモミして極楽、極楽~と鼻歌混じりだった。二人ともここはあの世だからとは突っ込めないし、お礼だと言われると何一つ抵抗もできなかった。
年の離れたお姉ちゃんができたみたいでそれがとても嬉しかった。
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