第10話 ぼっち少女の運搬術
その間、フレは新たな魔獣が来ないようにお姫様抱っこして周囲を警戒する。だが、まあ大丈夫だろう、フレの後ろだったところ以外、一キロ四方の木々は倒されて原っぱのように視界が広がっているのだ。フレから見えているだけでも、十数体の魔獣が真っ二つになっている。
「あ~あ……派手にやっちゃったよね。あの世にあんまり干渉はしたくないんだけどなぁ……」
フレはそう
自分がフレにお姫様抱っこしてもらっていることを理解して周囲を見回す。もう特に恥ずかしいとは思わなかった。
「うわぁ、なんかすごい光景になってるね! フレっ! わたしを守るためとはいえさすがにやりすぎだよ~っ!」
「はぁ……何を言ってるんだよ。これ色羽の魔法のせいだよ! そりゃ空を飛ぶのと、斬撃とは風を扱うという点では同じだけど、空を飛ぶ方がよっぽど簡単なんだけど……」
フレは、色羽の集中力の深さと切り替えのスピードが尋常ではないことを理解した。魔法は基本的には集中力と想像力でコントロールできる。集中力の深さが操る力の大きさとなるのだ。
おそらく先ほどの魔法は、風を感じてその風に集中しすぎたせいだろう。しかも普通は徐々に集中力が増していくのに、色羽は、一気に深いところまでいった結果。あとは飛ぶという経験が少ないため、想像力も足りなかったのかもしれない。
「……え? ……これ、わたしがやったの? ほんとに? ……あっちゃ~っ!」
色羽はフレに抱かれたまま、自分の頭をわしゃわしゃしている。
「当分魔法は禁止だね! やっぱりちゃんと訓練しないと危険だよ!」
フレが色羽を見ると、眼に涙をためて身体をプルプル震わしていた。
「……お~い!」
遠くから呼ぶ声が聞こえたので、二人してそちらへ振り返る。メインクーン公爵とサーバル公爵が追い付いたようだ。
しばらく待って、無事合流することができた。一行は約束通り、荷馬車を数台率いて来てくれている。もちろんここに来るまでに色羽がくるくるまとめた
「どうしたの? 何かあった?」
色羽は心配してメインクーン公爵を下から見上げた。公爵の身長は二メートルぐらいあるので見上げるのは当然なのだが、下を向き気味でもあったからだ。
「ちょ、調整者様! こ……この有り様は一体何があったのでしょうか?」
メインクーン公爵は顔色が悪いまま、フレの方に身体を向けて疑問に対しての回答を求める。
「……え? ……えっと、ニードラーに襲われて……ちょ、ちょっと、色羽に魔法を教えようと思ったら、ちょっと加減を間違っちゃったみたいで……こんな感じになっちゃった。エヘヘ」
「エヘヘじゃないですよっ! こ、これを色羽様が……」
メインクーン公爵の汗が止まらなくなった。ここにいるみんなには『絶対に色羽には逆らってはいけない!』という恐怖が心に刻まれた。
「公爵っ! お願いがあるの! 遠くを見ながら進みたいから、肩に乗せて欲しいなあ!」
こんなタイミングで色羽が言ったもんだから、メインクーン公爵は玩具のように首を何回も上下にふっている。色羽としても魔法の件でフレに怒られたから、お姫様抱っこから逃げるのにちょうどいいタイミングだったのだ。
『か、可哀想すぎる…… だけど、自分じゃなくて良かった!』とサーバル公爵を筆頭にみんなそう思って眼を合わせた。
だが、その気持ちもみんな一瞬で吹き飛んだ。ニードラーもそうだが魔獣が十数体倒されているのがわかったからだ。歓喜の雄叫びが鳴り響く。理由は簡単なことだった。魔獣は倒すのは大変だけど、とても美味しいらしい。
「ふん、ふ、ふ、ふ、ふ~ん」
色羽は心に誓った目標を一つクリアしたのと、みんなが喜んでくれたのとで、ご機嫌にメインクーン公爵に肩車してもらっている。肩車というか右肩に乗せてもらって腕で支えてもらってる感じだ。
「さあ、あの木までもう少し、頑張って行きましょう!」
しばらく歩いてやっと巨木の前に着いたが、ここからは怒られた仕返しのようにフレがこき使われた。
「わたしは魔法禁止だから、フレが切って! 二メートル角は絶対だよ!」
「これは荷車では運べないから、飛ばして! 左手に炎出して上に掲げて、まずは空気を暖めて上昇気流を作り出して! その後右手を空にかざして街の方にむけて四十五度ぐらいで! そしたらずっと風の魔法出しながら手をくるくる回して!」
次第に街の方に向けて竜巻が発生して、どんどん大きくなっていく。
「メインクーン公爵! 大きくてかさばりそうなものは、竜巻の中に放り投げて! あと重いけど、この木の塊も! うん、魔獣の死体も全部!」
色羽が指示をしていると、サーバル公爵は気が狂った。わたしも竜巻で移動したいと言い出したのだ。どうやら自分が活躍できてないという不甲斐なさから出た言葉だったようだ。先に移動して木や、魔獣の肉を整理しておきたいらしい。ようは活躍したいのだ。
色羽が止める時間もないままにサーバル公爵は竜巻の中に身を投げたした。
「あ~~~~れ~~~~!」
魔の森にサーバル公爵の
はたして、サーバル公爵は無事に生きているのだろうか……
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