地球を守るために命懸けて戦ってます

第8話

「あばよ。」

ベルリがそう口にしながら武装を失ったポルタノヴァのコックピット目掛けて左手のビームサーベルを突き立てた。しかし、ビームサーベルが機体にぶつかる直前スラスターを全開にし後方へ最高速で回避したアストンの機体を捉えることは無かった。

「ここまでかｯ………。」

そう言いながらアストンは全速力で二人の索敵範囲から離脱していった。

「隊長、追いますか？」

「いやいい。あの速度じゃ追いつけたとしてもかなり部隊から離される。それよりもさきにお前は撤退し機体と自分の体の治療をしろ！」

ベルリの言葉の通り、キースのアルト空戦仕様は片腕、片翼が破損し彼自身も切りつけられた衝撃に頭と手首に手傷を負っていた。

「しかし…。」

「今回の作戦は失敗だ。分断された上にこの具合じゃ…。俺は草薙少尉達の援護に回った後皆に撤退を促す。先に基地で待ってろ、クロムト中尉！」

「ぐっ…―了解…。お気をつけて。」

そう言うとキースは転身し、出撃してきた方角へと撤退した。

一触即発の空気の中、2機の睨み合いを先に破ったのはギイの方だった。無駄な動きは一切なく機体の目前にまで迫り、ビームサーベルを切り上げる。ケイジは間一髪でそれをビームサーベルで受け流すと右腕のビームライフルを発射する。ギイは右肩の装甲をビームで焼かれながらも勢いを殺さずそのままケイジ機へ体当たりした。

「ぐっ…………ｯ。」

ケイジは吹き飛ばされながらもスラスターで体勢を整え、ビームサーベルを脇に構え直しギイに向かって突進しながらの突きを放った。

「動きが単調だなぁ！」

ギイは高らかにそう叫びながら地面を抉るように踏み込み斜め後ろに跳び、ビームサーベルでケイジのビームサーベルを跳ねあげる。が、そのままのケイジの勢いを殺しきれず左の二の腕と肩をビームが焼く。

(ﾁｯ……ここに来て出力の差か…。)

連邦側はシエルノヴァが新規に開発された機体だと考えていたが実はそうでは無い。シエルノヴァはポルタノヴァと同時期に開発された極地戦様機。出力や機動性なら僅かながらアルト空中戦仕様の方が上回っている。

「舐めるなぁぁぁぁ！」

ギイは目前にまで迫ったケイジ機目掛けて大振りの横凪を祓う。ビームサーベルがアルトの装甲を襲う1歩手前でケイジはギイのシエルノヴァを蹴り距離をとる。

しかし―――――

「言っただろう。動きが単調だと。」

そのままギイは踏み込みを続けアルトの左腕を肩から跳ね飛ばした。

(ここまでの大きな動きで撹乱している間にゴルファは離脱できた―だがっ。)

彼の中の何かが彼に囁いていた。このパイロットをここで始末しておかなければいずれとてつもない脅威になりうる と。

(ｯ……。近接武器が…。)

ケイジは右腕のビームライフルを数発撃ちギイとの距離を大きく取りながら次の動きを考える。

「奴にはもう近接武器もメインスラスターも無い…。やれるぞ…ｯ！」

意志を固めるとギイはライフルを乱射する。ケイジがそれを避けている隙に機体を高々と飛びあがらせ、ケイジ機の頭上からビームサーベルを大きく振り下ろした。