第5話
「林の中を飛べよ。頭上げたら狙撃手に狙い撃ちされるぞ!」
「「了解!」」
7機の編隊が山間部の林の中を縫うように飛んでいく。
「あ…。来る。」
突然言葉が口からこぼれた。
「え?ケイジなんて?」
その時、左側を飛んでいたマコト機の頭部をビームの光が捉えた。
「え……」
轟音と共にマコトの通信が途切れた。
「くそ、誰がやられたぁ?」
「桐谷少尉です。」
ベルリの怒声にキースが返答する。
「総員散開。当たらねぇように細かく起動変えてながら狙撃手狙ぇ!」
ケイジは通信から聞こえてくるベルリの声を聞きながら後ろを振り返った。
「マコトは…」
コックピットを撃ち抜かれてはいなかったはずだ。運が良ければ生きている可能性はある。
「今は後ろに構うな!」
隣からアレクが怒鳴る。
「まずは狙撃手を仕留めることを考えろ!」
「あぁ…分かってる。」
アレクの声に冷静さを取り戻していくことを感じながらケイジは前へ向き直りバックパックのスラスターを全開にした。
「待ってろよクソ野郎。俺が必ずぶっ殺してやる。」
そう言うとライフルの下部から煙幕弾頭を発射し煙幕をはった。
「草薙少尉!何をする気だ!?」
キースからの通信が入る。
「決まってますよッ。敵の狙撃手の息の根を止めてやるんです。」
「何を……。」
そんな会話をしている間にもぐんぐんケイジのアルトは速度を上げ狙撃手が居ると思われるポイントまであと僅かとなっていた。
(接近戦じゃ右手は使えねぇ。一撃で仕留める。)
ビームライフルに換装された右腕を一瞥しながらケイジは左手でビームサーベルを抜き放つ。
「気をつけろ…来るぞ。」
アレクの声と共にモニターが赤く光り、アラートを知らせると同時に煙幕を突き破ってビームが飛んできた。
「やっぱりな!これだけの長距離を狙撃するための奴らだ。多少は兵士の目が頼りなんだろ?」
自分達とは少し違う角度に撃ち込まれたビームの残像を見ながらケイジはそう確信した。
そのまま一気に勢いをつけて直上へ飛び上がり煙幕を抜けそのまま数十m上空までケイジは突き抜けた。
「ここだぁぁぁぁぁぁぁ!」
ケイジの目下にはライフルを投げ捨てるバイロンの新型機の姿がある。
「ッ!?」
ここでケイジにとって予想外の事が起きた。狙撃手の横手の山肌から大剣を構える新たな新型機が飛び出したのだ。
一瞬遅れを取ったケイジは大剣でバックパック右側の羽根を切り裂かれる。
「クソッ。新手か…。」
負けじと機体を反転させビームサーベルで新型機に切りかかる。大剣で受けようとする新型機に対し機体を半回転させるとそのままの勢いで敵の右膝を打ち砕く。
「足元が甘いんじゃねぇのかぁ?」
「クソォォォォォォッ!」
公開通信で敵の断末魔を聴きながら体勢を崩した敵機のコックピットを貫く。
直後後ろから先程の狙撃手が大剣を拾い上げながら襲いかかってきた。
「来いよ…。」
ケイジは背中をがら空きに見せ、敵機が振りかぶると同時に全力で後退し、バックパック側から敵の正面へ体当たりした。
「何ぃぃ!?」
「考えが甘ぇんだよ」
その言葉と共に相手の頭部のメインカメラを潰す。とどめを刺そうとした時何者かの狙撃によりアルトの羽根とスラスターが吹き飛んだ。
「!?」
ケイジが見上げると隣の岡の上に短ライフルを構え、左手にビームサーベルを持った新型機が立ちはだかっていた。
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