第4話

「ん、…」

電気が消された兵士寮の一室、布団から肩から上だけを出した状態でゆっくりと重ねていた唇を離し互いに顔を見つめあった。

「よかった…もし帰って来なかったらって思って、ちょっとだけだけど怖かった…」

少し目を潤ませながら凛は消え入りそうな声で囁いた。

「ははっ。凛、俺の成績知ってるだろ?

大丈夫俺は死なないよ。」

目を細めながら囁くように、けれど自信満々にケイジは呟き返した。ゆっくりと首に腕を回してきた凛に応えるようにケイジは腕に力を込め凛を抱きしめた。

「大丈夫だ。凛もみんなも絶対に俺が守るから。」

そう言って少し顔を離し、もう一度しっかりと互いの存在を確かめ合うように唇を重ね合わせた。



「総員戦闘準備!15分後に出るぞ!」

ベルリの怒鳴り声を横で聞きながらアレクとケイジはノーマルスーツに袖を通した。

「2人ともちょっといい?」

背後から2人に声をかけたのは同期の桐谷 マコトだった。

「カイトの仇をとりたいんだ。今回の狙いの新型がそれだと聞いた。」

そう言いながらカイトのドッグタグを握りしめた手を目の前に突き立てた。

「2人は前回の戦闘で先陣を切って何機も撃墜していた。僕もついて行かせてくれないか?」

マコトの話を聞き、一瞬ケイジとアレクは見つめあった後、ケイジが口を開いた。

「何言ってんだ水臭せぇ。大歓迎だよ。

みんなでカイトの仇、取りに行こうぜ。」

「アレクもいいのか?」

不安そうにアレクにマコトが顔を向けた。

「あぁ、もちろんだ。」

「っ…2人とも、ありがとう…」

「おいおいそりゃ、勝った時に言わねぇと縁起悪いぜ?」

軽口を叩きながら互いの期待が格納されているハンガーへ向かい、コックピットへ乗り込んだ。

「草薙少尉。」

「あ、整備長機体の修理、あざっす!」

「はぁ…一応説明するから聞いとけ。失った右腕は高圧縮ビームライフルに換装してある。スラスターは心もとないかもだがフライトユニットの物を移植した。取って付けたようなもんだが出力自体な上がってる。使いこなせよ。」

「ありがとう!大丈夫だしっかり戦果上げてくるから。」

「まったく…お前さんは…」

苦笑いしながら整備長はハンガーをはなれていった。

「さて…行くか。」

どうやらアレクとマコトは先に出ているようだった。

「草薙。」

「あ、クロムト中尉!」

「恐らく今回は前線にも新型が出てくると予想される。期待しているぞ。」

「は、はい!」

キースは人一倍、新兵の能力をしっかり見てそれを活かすことに長けていた。ベルリもそれを理解しているからこそ彼を戦闘力以外でも評価し、隊の副隊長に任命したのである。

「キース クロムト中尉」

「ケイジ 草薙 少尉」

「「出撃する!」」

2機の空戦アルトが同時に宙へ舞い上がった。

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