第3話

エンジンの轟音と共に、ケイジのアルトが格納庫に降り立った。

「これで全員か。」

「そうみたいですね、未帰還3機ですか…」

「そう暗い顔すんな。総撃墜数29機、とんでもねぇ大戦果じゃねぇか。帰って来れなかったやつのためにも今は前向いて戦うしかねぇんだよ。」

「ッ…。はい。」

ベルリとキースが話終わるとほぼ同時にケイジがコックピットから降りてきた。

「ケイジ~お疲れ様!」

そう言って一人の少女がケイジに飛びついた。

「おう凛。ただいま。」

凛の頭を撫でながらケイジは応えた。

「なぁおふたりさん。せめて公共の場以外でイチャついてくれないかな?」

微かに怒気を含んだ声でアレクが話しかける。

振り返るとベルリやキースもなんとも言えない面持ちでこちらを眺めていた。

「も~そんなにカッカしないでよアレク。

そっちもユメちゃんが待ってるよ。」

そう言って凛はオペレータールームの方へ軽く視線を促した。

「はぁ…。」

煮え切らない表情をしながらも少しだけ嬉しそうにアレクは踵を返し、自動ハッチの向こうへ消えた。

「二階堂少尉、せめて場をわきまえて欲しいものだな。」

ベルリが頭をかきながら呟いた。

そこ言葉に対し悪びれもせずただ

「は~い。以後気をつけまーす。」

とだけ凛は元気よく返した。そんな中

(お前絶対気をつける気ないだろ!!!)

とケイジは心の中で叫んでいたのだった。


出撃から数時間が経った頃、司令室ではベルリにキース、そして基地司令の敷島が1つの画像を睨んでいた。

「これは先程の戦闘で4番機に乗っていたグラハムが撮影したものです。」

そこに映し出されていたのは明らかにポルタノヴァと形状も装備も違うバイロンのエグザマクスだった。

「これは、大型のライフル…か。」

敷島が顎から手を離しながら口を開いた。

ポルタノヴァのような綺麗な人型ではなく大きく改良され何重にも装甲が貼られた脚部、それに比べて不釣り合いなほど細身で軽装甲な腕部、背中から生える大型の索敵用と思われるアンテナそのどれもが今までに感じたことの無い恐怖感を彼らに与えた。

敷島が顎から手を離しながら口を開いた。

「敷島さん、司令部では何も観測できなかったのかい?」

「いいや。こちらからは何も報告は上がっていないよキース大尉」

「つまりカイトをやった攻撃はこちらの索敵範囲外からの狙撃ということになる。」

そうなれば20キロ以上離れた位置から山間部での動いている小隊の中から一機を撃ち抜いたことになる。

「こいつはぁとんでもねぇ奴と出くわしちまったかもしれねぇなぁ。」

苦虫を噛み潰したような表情でベルリは唸った。


「整備長!」

「おぉーアレク少尉。今回の出撃お疲れ様でした。」

「よしてください。階級より年齢の方が大事ですよ。」

「おい若造、そりゃ喧嘩売ってんのか?……っぶ、ははははははははは」

2人でひとしきり笑ったあとアレクが機体の状況を聞いた。

「あぁまぁお前さんの期待は特段酷い箇所は無かったよ。隊長達は撃墜数も多い分多少は被弾箇所も増えてるが…なんだあの草薙のアルトは初戦から右腕切断とバックパックスラスター破損ってどー言う戦い方してんだアイツは。」

「は、はははは…」

(い…言えない…整備のおっさん共に任しときゃいいとか叫びながら先陣切って接近戦してたなんて、口が裂けても………)

そう心の中でアレクは1人ケイジを糾弾していた。


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