第41話 どうしてくれんだぁぁぁぁぁぁぁぁ
「うぇ、うぅ、ひぐっ……。あ、あんなに怒ることまいじゃないですか……」
「ハッハッハッ、凄い怒声だったね! ゾクゾクしたよ!!」
私の横を歩きながら、豪快に笑うマツザカ。
「……マツザカさんはなんで元気になってるんですか?」
「そりゃぁ、あんなに怒って貰えるとは思ってなかったからね。 想像以上の罵詈雑言で心が震えたよ!!」
「そうですか……」
あの後、木にぶつかったところをツバキさんに回収された私は、数時間後にギルド所属の冒険者を総動員して、捕獲されたマツザカと一緒に、ギルドのお偉いさん達の前に連れ出され、これでもかと言うほど説教を聞かされた。
しかも、そんな場所でもマツガサは、いつもの調子だったため、更に不況を買い、一時はお偉いさん達がマツガサに手を出し始めるという地獄のような光景が繰り広げられた。
そんな怒号が飛び交うおぞましい空間に長時間放置されていたため、私の精神は既に限界を迎えつつあった。
「はぁ、早く家で休みたい……。 ハルキさん達は先に帰ってるんですっけ?」
「あぁ、ハルキ君は今回の騒動についての謝罪文と始末書の提出、ボブはカウンセリング、ユキ嬢は公務があるからね。先に戻っているはずだよ」
「そうですか……、それなら私も……」
「この馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ」
「ひゃっ?!」
家に帰ろうと、ギルドの入り口に手をかけたタイミングで、後方から甲高い声が聞こえてきた。
そして、声の主は、マツザカに近づくと、
「お前はどれだけ私を追い詰めれば気が済むんだぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ」
と言いながら、腹に綺麗な右ストレートを噛ました。
「イヤンッ」
気色のわるい声と共に、ギルドの壁を突き抜け、外に飛ばされるマツザカ。
「れ、レイカさん?! どうしたんですか?」
「ひ、ヒカリ?! ヒカリぃぃぃぃいいいい」
泣きながら私の胸に飛び込んでくるレイカさん。
「うわっ、ホントにどうしちゃったんですか?」
「うぅ……、これ……」
そう言って、レイカさんが二枚の紙を渡してきた。
「何ですか? コレ?」
一番上にあった紙に目を通すと、「四天王討伐を目的とした精鋭部隊結成について」と書かれていた。
「し、四天王討伐?! そんな重要なクエストの紙、私に見せていいんですか?」
「うん……、そのしたぁ……」
「下ですか?」
言われた通り視線を移すとそこには……、
「えっ、嘘? ま、マツザカさんの名前!? なんで??」
私でも聞いたことがある有名な冒険者の名前に混じって、マツザカの名前が書かれていた。
「……あいつは素行にさえ目を瞑れば、優秀な能力があって、おまけに度胸もある理想の冒険者だ。 精鋭部隊に選出されても何ら、不思議はないだろ」
「まぁ、確かに……。 つまり、レイカさんは、素行不良のマツザカさんが精鋭部隊に選出されてしまったことに憤ってるってことですか?」
「いや、むしろその逆……」
「……逆?」
「後ろの紙……」
「後ろですか?」
ペラっと先ほどの紙をめくると、
「長期休養を頂くため、クエストには同行できません。 皆、頑張ってね♡ マツザカ」
け書かれた、折り目だらけの紙が出てきた。
「……え? はぁあああああああ?」
「ははは、ビックリしたかい?」
「きゃ! ま、マツザカさん、これはどういう……」
いつの間にか、私の真横に血まみれで立っていたマツザカ。
そんなマツザカに疑問を投げかけようとしたところ、
「マツザカぁぁぁぁぁぁぁぁ、お前、お前、お前、どうしてくれんだぁぁぁぁぁぁぁぁ、これのせいで、今、私がどれだけ詰められてるのか、理解してるのかぁぁぁぁぁぁぁぁ」
レイカさんがその間に入り、マツザカに詰め寄った。
レイカさんの言葉に、
「はは、面目ない」
と笑いかけるマツザカ。
その反応を見て、更に激昂するレイカさん。
そんな意味の無いやり取りが数十分続いた結果、なぜマツザカがクエストを辞退したのか、聞けずじまいで終わってしまった。
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引越しなどでドタバタしており、投稿がおくれてしまいました!
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