第38話 人間爆弾ですわ~
「……つ、つまり、ツバキさん達が怒ってるのは、ギルドのお偉いさん達が勢揃いしていた緊急会議で、マツザカさんがふざけまくったから……ってことですか?」
「さっき本人からも話を聞いたし、間違いないわ。 クスクス、やるわよね。 あの犬。 何でも、お偉いさん達の前で、ふんどし一丁になったり、高そうな靴を見て、我慢できずに、片っ端から靴を舐めまくったりしたそうよ?」
私に併走し、クスクスと含み笑いを浮かべながら、そんな説明をするユキさん。
「い、いや?! 笑い事じゃないですよ!! そんなの怒られて当然じゃないですか!! っていうか、それなら、なんでユキさんまで自警団の人達に追われてたんですか!? 今の話、ユキさんに関係ないしゃないですか!」
「私のおもちゃを勝手に追い回して遊んでいた奴らを、一人残らずシバいたからよ。 全く、人の玩具を使うなら事前に許可くらいだして欲しいわ」
「……それって、マツザカさんの後ろにいた自警団に手を出したってことですか?」
「えぇ、そうよ!」
悪びれる様子も無く、頷くユキさん。
そんなユキさんに私は、
「な、何やってるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ」
と激しい突っ込みを入れた。
「……? どこかおかしい所でも?」
「お、おかしい所しかないですよ!! 良いですか? 自警団の人達の業務を妨害するのは犯罪なんですよ?! 最悪、牢屋に入れられちゃいます! 分かってるんですか?!」
「分からないわ! 犯罪なんて、お金を積めばどうとでもなるもの! おほほほ」
「は、はぁ……」
ダメだ、会話が成り立たない。
そう思い、唖然としていると真横から、
「ははは、相変わらず凄いなぁ、ユキ嬢は!」
見知った人物が高速回転しながら、話かけてきた。
「ま、マツザカさん! いつからそこに……、って、キモい! 動きがキモいです!!」
「アアン! あはは、さっきからさぁ! ツバキちゃん達から逃げ回っていたら、たまたま二人がデパートから出てくるのを見つけてねぇ、付いて来たんだ!」
「も、もしかして、ギルドの人達も一緒ですか……?」
「ハッハッハッ、当たり前さ! 後ろを見たまえ!!」
マツザカの声に従い、恐る恐る後ろを向くと、
「待で、ゴラ! 人間モドキが調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
「はぁ……、はぁ……、ま、まて……」
今だ激昂しているツバキさんと、息も絶え絶えで、必死に追従している自警団の方々がいた。
「つ、連れて来ないで下さいよ!! どうするんですか! これ!!」
「ははは、どうしたものかねー」
呑気に笑うマツザカ。
そんなマツザカの声を聞いて、
「私に考えがありますわ~」
とユキさんが手を上げた。
「ゆ、ゆゆゆユキさん! この状況をどうにか出来るなら、何でも良いです! お願いします!!」
「ふふ、了解しました! 犬! 例のモノを!!」
パンパンと手を叩くユキさん。
すると、どこからともなく、黒服が黒い布に包まれた謎の塊を手渡した。
「……ユキさん、それは?」
「これは、私が作成した最新鋭の武器、その名も『人間爆弾』ですわ~」
覆われていた布をめくるユキさん。
そこには……、
「むごー、むごー」
体中に爆竹のようなものを巻かれ、手足を拘束されているハルキがいた。
「……なるほど、この人をギルドの人達ごと吹き飛ばすんですね……。良いアイデアかもしれません」
ユキさんの天才的な発想に関心してしまう私。
そんな私の反応を受け、ユキさんは、
「でしょ、でしょ!! あなたなら良さを分かってくれると思ったわ! それじゃあ行くわよ!!」
そう言って、ハルキ体中に巻かれた爆竹全てに火を付け、後方へと放り投げた。
「むごー、むごー」
「うわ、なんだこれ?!」
全身を拘束されながら、必死に抵抗しているハルキと、完全に不意をつかれ、驚愕している自警団の人達。
そして、数秒後、
ドカーン
凄まじい爆音と共に、激しい閃光が辺り一面に広がった。
「や、やったの……?」
振り向き、足を止める私。
しかし、完全に伸びきっている自警団の人達とは反対に、ツバキさんは人間爆弾を受けても、ピンピンしており、
「まずは一匹っす……」
「え? ちょ、やめ、あひんっ」
とニヤニヤしながら、ハルキの顔面を殴っていた。
「……、やっぱりあんな不良品じゃダメみたいね。 さっさと次に行きましょう」
「……そうですね。 まさか、足止めも出来ないなんて。 がっかりです」
ハルキが使えないと判断した私達は、そんな捨てゼリフを残し、足を進めた。
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