精神世界

不動のねこ

第1話 精神世界の始まり

皆さんは「精神障害」はご存知でしょうか?

有名どころは発達障害やうつ病、睡眠障害、解離性障害などがあります。今作はそう言った精神障害を患っている人がどう言うのかを読者に分かりやすく物語にしてみました。

これを読んで精神障害について知ってほしいです。

ちなみに著者のこの私も患っています。それではスタート。

目次

第一話 うつ病

第二話 解離性障害(多重人格)

第三話 双極性障害(躁鬱病)

第四話 ADHD・アスペルガー症候群

第五話 パニック障害

第六話 神経性痩症

第七話 不眠症

第八話 社交不安障害(あがり症)

第九話 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

第十話 統合失調症

第十一話 パーソナリティ障害

第十二話 チック症

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第一話 うつ病

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一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている状態のことを言う。

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僕は中学2年生で引きこもりになった。

最初はいじめられていたからだと思っていたが、いじめっ子とは全く関わりがなかったし、友達だっていたからいじめられた原因は分からない。

でもいじめられている時が一番辛かったな……。

そしてある日、学校に行こうとしたら吐き気が止まらなかった.

学校には行きたくないけど親にも迷惑をかけたくないと思い無理して行ったのだが結局耐えられなくなり嘔吐した。その日から不登校になり部屋に閉じ籠った。

親は何も言わずそっとしておいてくれた。それが僕にとって一番ありがたかった。

しかしある時、母さんが部屋に入って来たのだ。僕はその時とても焦りを感じた。

このままじゃダメだと分かっていたものの何も出来なかった。

すると母さんは僕の頭を撫でてこう言った。

――大丈夫だよ。あなたは何があっても私の大切な息子だからね。

この時、僕は初めて涙が出た。嬉しかった。こんな事言われたこと無かったから。

そして僕はまた前を向いて歩き始めた。

――ありがとう。母さん……

ーーーーーーー

第二話 解離性障害(多重人格)

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解離性同一性障害とは、強いストレスやトラウマなどから自分を守ろうとした結果、一人のなかに二つ以上の別人格が入れ替わり現れるようになり、自己同一性(自分はこういう存在であるという感覚)が損なわれてしまう精神疾患です。

ーーーーーーーーーーーーー

私はいつも一人だった。

誰も近寄ろうとせず皆離れていった。

それは何故かというと、私がいつも独り言をブツブツと言っているからである。

これは小学校高学年の頃からずっと言われてきたことだ。

自分ではよく覚えていないのだが、周りから見ると本当に危ない人らしい。まあ自覚はあるんだけれどね。

それにしても最近になって周りの視線が気になるようになってきた。何故なら、自分の意思とは関係なく体が勝手に動くときがあるからだ。

例えば、いきなり誰かに腕を引っ張られてどこかに連れていかれるとか、自分ではない自分がいて、その子が自分の体を使って何かかをしているような感覚に襲われることがある。

まるで漫画に出てくる多重人格みたいだ。

まさかそんな事があるわけがないと思ってたんだけど……。

「あれ?なんだろう……」

突然目の前に黒い渦が現れたかと思うとそこから手が出てきて私を掴んだ。

「うわぁ!なんだこれ!」

必死に抵抗するも虚しくそのまま吸い込まれてしまった。

そして目が覚めると見たことの無い場所に立っていた。

辺りを見渡しているとあることに気が付いた。

――ここはどこだ!?さっきまで家にいたはずなのに……

そう思った瞬間に頭の中に映像が流れ込んできた。

――えっ……なんだよこれ……気持ち悪いよ……助けて……父さん……

そこで意識を失った。

次に目を開けた時には見慣れた天井があった。

――戻ってきたのか? すると母さんが入ってきた。

――あっ、おかえりなさい。どうだった?初めての外出は楽しめたかしら?…………ん?外出?何言ってるんだろうこの人は。確かに外に出たのは久しぶりだけど、そもそも家から出ていないはずだぞ。……もしかして夢遊病みたいなものなのか?でもいつの間に寝たんだろうか。全く記憶が無いぞ。

とりあえず返事をしておこう。

――うん、凄く楽しかったよ。ありがとう。

そう言うと、母さんはとても喜んだ。

――良かったわ〜。それじゃあお昼ご飯にしましょうか。今日は父さんの帰りが遅いから二人だけで食べようね。

――分かった。

その後すぐに昼食を食べ終えると僕はリビングでテレビを見ながら寛いでいた。

――なんか暇だし本でも読もうかな。

ちょうど読みたい本が置いてあったので手に取って読んでみた。

――面白いな。次はこれを読んでみよう。

こうして僕は一日を過ごした。

――あれ?またここに来ちゃった。ここって一体何処なんだろう。

真っ暗で何も見えないし怖いな……早く家に戻らないと……

そう思いながら歩いていると急に強い光が射してきた。眩しい。思わず手で顔を覆うとその光は徐々に小さくなっていった。恐る恐る手をどけるとそこには見たことのない景色が広がっていた。

――綺麗だな。こういう場所に行ってみたい。

しばらく眺めていると後ろから声をかけられた。

――ねえ君、どうしてこんな所にいるの? 振り返ると一人の女の子がいた。

――誰ですか?

――私はユナ。あなたの名前はなんて言うの?

――僕はユウキです。

――へぇー、珍しい名前だね。外国の方なの?

――いえ、違います。日本です。

――そうなんだ。ところで君はどうやってこの場所に来たの?

――それがよく分からないんです。気づいたらここにいました。

――ふむ、なるほど。まあいっか。これからよろしくね。

――はい、こちらこそ。

それからというもの、毎日のように彼女と話をした。彼女は僕と同じで学校に通っていないらしく友達がいないそうだ。だから僕が友達第一号という訳だ。嬉しいなぁ。僕も友達がいなかったし、僕も友達第一号になりたいと思っていたところだ。

しかしある日を境に彼女が姿を見せなくなったのだ。心配になって探し回ったのだが結局見つからなかった。どこに行ってしまったのだろう。また会いたいな。

第三話 双極性障害(躁鬱病)

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双極性障害とは気分が高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」が繰り返される精神疾患です。「躁うつ病」と呼ばれることもあります。

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私には双極性障害と言う障害を持っている。

簡単に言えば気分屋である。

いつもは元気いっぱいで明るい性格なのだけれど、たまに落ち込んだりして周りの人に迷惑をかけてしまうこともある。だからなるべく感情を表に出さないようにしているつもりなんだけど、やっぱり難しいなぁ。

そんな時はいつも一人でいることが多い。

誰かと一緒にいると疲れてしまうからだ。

だからと言って孤独が好きという訳ではない。

寂しさを感じることだってある。

誰かと話せる機会があればいいのだけど、残念なことに今は夏休み中なので学校に行くことは無い。

せっかくの休みなのに勿体無い気がするけど仕方ないよね。

そんなある日のこと、突然インターホンが鳴った。

――誰だろう?宅配便とか頼んだ覚えはないんだけど……

玄関を開けるとそこにいたのはクラスメイトの一人だった。

――あ、あの、こんにちは。その……ちょっとお話がしたいんだけど、今時間大丈夫?

――うん、別に構わないよ。上がって。

彼女を部屋に案内すると、早速本題に入った。

――えっとね、単刀直入に言うと、私と付き合って欲しいの!

――えっ!?つつつ付き合う!?そ、それはつまり恋人として付き合いたいという事でしょうか!?

――そうよ。ダメかしら?

――いやいや全然問題ありません!むしろ大歓迎だよ!!

――良かったわ。じゃあ決まりね。これからよろしくお願いします。

――こちらこそよろしく。こうして僕らは晴れてカップルになった。

――それでさぁ、その時に先生が言った言葉が面白くてさ、笑っちゃったよ。

――へぇー、そんなことがあったんだ。

――あとさ、昨日テレビでやってたドラマが面白かったんだよ。

――どんな内容なの?

――えーと確か……内容は忘れちゃった。

――おいおい、しっかりしてくれよ。

――ごめんごめん。僕は家に帰た。

ーーはぁ。ため息をつく。

――どうしてこうなったんだろう……

僕は自分の部屋で寝転びながら考えていた。

――最近調子が悪い……

何が原因なのか自分でも分からない……

ただ分かることは一つだけ……私は双極性障害を持っている。

そして私は躁うつ病だ。

――何がいけなかったんだろう……

私は何度同じことをすれば良いのだろうか……

――もう嫌だなぁ……死にたいよぉ……

そう思いながら眠りについた。

第四話 発達障害(ADHD・アスペルガー症候群)

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発達障害とは、産まれた直後から神経の発達が平均より遅れるようになり、小学生の頃までに問題があることに気づかれる。ただし、軽症の場合は、社会に出てから障害に気づかれる場合があります。これが大人の発達障害です。

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僕は勉強ができない。特に数学が苦手だ。

――うわっ、また間違えちゃった。これじゃあまた怒られちゃうな……

そんなことを考えていると担任の先生が入ってきた。

――はい、それじゃあ授業を始めるぞ。

――起立、礼、着席。

――よし、それでは前回の続きから始めるぞ。この式を見てくれ。これはxの二乗とyの三乗を掛け合わせたものだ。つまり答えは1になるわけだな。分かったか?

――はい、分かりました。

――よろしい。それじゃあ次の問題を解いてみろ。

よし、頑張るぞ。

――……

――どうした?早く解け。

――すみません。わかりません。

――なんだと?ふざけるな。ちゃんと授業を聞いていればわかるはずだ。もう一度聞くから今度はしっかりと聞け。わかったな?

――はい、すみませんでした。気をつけます。………………

――この問題をやってみなさい。

――はい、わかりました。

――……

――……できた。これで合っているはず。

――ほう、正解だ。よくやった。だが次からはこんなミスをするんじゃないぞ?いいな?

――はい、ありがとうございます。

―キーンコーンカーンコーン……

チャイムが鳴ると同時に教室のドアが開いた。

――失礼します。2年3組の生徒さんたちはいますでしょうか?

――はい、僕がそうですが何か用ですか?

――いえいえ大したことではありません。少しお話があるだけです。ここでは話しづらいのでどこか静かな場所に移動しましょう。ついてきてください。

言われるままに後について行くとそこは保健室だった。

――ここでなら落ち着いて話ができそうですね。早速本題に入りたいと思います。単刀直入に言います。あなたには発達障害を患っている可能性があります。

――え?そうなんですか?

――はい間違いありません。

そんなまさか。

自分が障害を持っているなんて考えたことも無かった。

でも確かに言われてみると当てはまる点がいくつかあるような気がする。

――まず最初に、あなたは自分の意思とは関係なく、突然怒り出したり、突然泣き出したりする経験をしたことがあるのではないでしょうか?

――あります。

――それは感情のコントロールが上手くできていない証拠です。次に、あなたは人の話を最後まで聞かずに遮ったりすることや、相手の言っていることが理解できなかったりすることはないでしょうか?

――はい、その通りです。

――それがあなたの症状の一つ、ASD(注意欠陥多動性障害)の特徴なのです。

――そんな……今まで普通に生活してきたのに、急に病気だって言われたって信じられないよ……。

――残念ながら事実なので受け入れてもらうしかありません。

――嘘だ!そんなの信じたくない! 僕は必死になって否定したが、先生の言葉によって僕の心は打ち砕かれた。

――それにね、診断書もあるんですよ。ほら、ここに。

先生はカバンの中から一枚の紙を取り出した。

そこには、はっきりと僕の名前が書いてあった。

――そんな……どうして?なんで僕が障害者なんかに……

――仕方がないでしょう?診断の結果なのだから。まぁ安心してください。これからは私がサポートしてあげますから。

――いやだ!放っといてくれ!僕は普通の人間なんだ!

――そんなこと言わずにさぁ、私と一緒に頑張って治していきましょうよ。

――うるさい!僕は一人で大丈夫だから、ほっといてくれ!! 僕は保健室を出て家に帰り、ベッドの上でずっと泣いた。

僕は翌日学校に行くことにした。先生と話し合うために。

――おはよう。気分はどうだい?

――最悪だよ。それより先生は本当に僕の事を分かってくれるのか?

――もちろんだよ。僕は君の味方だ。

――……そうか。それなら良かった。ところで話は変わるけど、昨日言ってた事なんだけど、あれって本当なのかな?昨日はショックで取り乱してしまったけれど、やっぱり不安で……

――うん。心配しないで。私は絶対に君を見捨てたりしないよ。約束しよう。

――そっか。ありがとう。そうだよね。

先生が僕を見捨てるわけないもんね。……先生を信じよう。

――はい、よくできました。偉いぞ〜。

――えへへ、もっと褒めてくれても構わないんだよ?

――よしよし、いい子だねぇ。

――ふふん♪

そして今日から学校では支援員の先生が着くようになった。

第五話 パニック障害

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突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作(パニック発作)を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をパニック障害という。

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「……」

朝、目が覚めると体が怠かった。頭が痛い。

――風邪引いたかな……

体温計を脇に挟んで測ると37.6°Cと表示された。

――うわっ、結構高いな……

でも熱があるからと言って休むわけにもいかない。

なぜなら今日の体育の授業はマラソンだからだ。

しかも男女合同で行われるため男子生徒も女子生徒も同時に走らなければならない。

つまりこの授業を欠席すると、クラス全員の前で恥をかくことになるのだ。

――それだけは避けないと……

俺は重い体を起こして準備を始めた。

着替えを済ませて外に出てみると既にほとんどの生徒が集合していた。

その中には勿論あの人もいる。

――あ、おーい!こっちに来て一緒に並ぼうよ! 彼女は俺を見つけるなり元気よく手を振ってきた。

――いや、遠慮しておくよ。それよりも無理して体調崩さないように気をつけてね。

――ありがとう!気をつけるよ!

――それじゃあまた後で。

そう言うと彼女は列の中に紛れていった。

――……

――……

――……

――……

――……―キーンコーンカーンコーン……

チャイムが鳴ると同時に教師がやってきた。

――はい、皆さん集まりましたか?これから体力測定を始めます。まずは50m走です。出席番号順に並んでください。

俺はスタートラインに立つと同時に大きく深呼吸した。

――位置について、用意……ドンッ! 合図と共に一斉に走り出す。

しかし俺は途中で立ち止まってしまった。

足が動かない。まるで鉛のように重たい。

それでもなんとか一歩ずつ前に進んでいくとゴールが見えてきた。

だがその時だった。突然目の前が真っ暗になり、激しい頭痛に襲われた。

――うぅ……ぐぁぁぁぁぁぁ……

頭を押さえながらその場に倒れ込む。周りの人が何か言っているような気がするが上手く聞き取れない。

そのまま意識を失ってしまった。

――ん……ここは……? 目を覚まして辺りを見回す。どうやらどこかの病室のようだ。

起き上がって窓の外を見ると空はオレンジ色に染まっていた。

時計を確認すると午後6時を指していた。

――いつの間に寝ちゃったんだろう……

それにしてもさっきの夢は何だったのだろうか。

誰かに追いかけられている夢を見たような気がするのだが、あまり思い出せない。

それに、なぜだかとても懐かしく感じた。

――まぁ、いっか。

今はとにかく早く帰らないと。

母さんが心配するだろうし。

――ガラガラッ ドアを開ける音がしたので振り返ってみるとそこには一人の女性が立っていた。

――あら、目が覚めたみたいね。気分はどうかしら?……

――まぁ、いっか。

その女性は養護教諭の山吹先生だ。

いつも優しい笑顔を浮かべている美人な先生だ。

そんな先生が今、僕を睨みつけながら近づいてくる。

――えっと……これはどういう状況ですか? 僕は恐る恐る尋ねた。

――決まってるじゃない。あなたを保健室に連れ戻すために捕まえに来たんですよ。

――いや、でも僕はもう大丈夫なので……

――ダメよ。まだ熱もあることだし、大人しくベッドで休んでなさい。

――でも……

――でも、ではありません。さぁ、行きましょうか。

――はい……

こうして僕は強制的にベッドに戻された。

――さて、そろそろいいかしらね……

私は彼の額に手を当てた。

――うん、大分下がったわね。これなら明日は学校に行けそうね。

私は安堵のため息をついた。

――……あれ、なんで?どうして涙が溢れてくるんだ?おかしいな……

私は慌てて彼に背を向けた。

――……ふふっ、全く世話の焼ける子ね……

それからしばらくして彼は眠りについた。

第六話 神経性痩症

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拒食症とは、太ることに対して過剰な恐れを感じることから過度の食事制限を行い、極度のレベルにまで体重減少をきたすようになった状態を指します。神経性やせ症は10歳代で発症することが多く、90%以上が女性と報告されている。

原因には様々な要因があると考えられている。

・幼少期に十分な愛情を受けられなかった。

・虐待を受けていた。

・学校でいじめられていた。

などがあげられる。

治療法は薬物療法がメインとなり、カウンセリングを行うこともある。

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私は神経性痩症を持っています。

「拒食」と言うよりは、「食べたくないだけ」「食べるの怖いから」と言った方が正しいかもしれません。

食欲はあるのですが、いざ食べ物を前にすると吐き気に襲われてしまい食べられないんです。

周りからは痩せすぎだとよく言われていますが、自分としてはもっと肉付きの良い体になりたい。

「女の子らしい体つきになって欲しい」と思う一方で、今の自分が嫌いで仕方ありません。

いつかは克服していきたいと思ってはいるものの、なかなか一歩を踏み出せなくて困ってます。

この病気に罹っている人はきっとたくさん居ると思います。

一人でも多くの人にこのエッセイを読んでもらいたいです。

――うぅ……気持ち悪い……

俺はトイレの中で一人苦しんでいた。

――はぁ……はぁ……はぁ……

――うぅ……おぇ……

――おげぇ……

胃の中のものを吐き出すと少し楽になったような気がした。

――はぁ……はぁ……はぁ……

――ガチャッ

――!? 突然ドアが開いたので驚いて振り向くとそこには山吹先生がいた。

――あら、やっぱりここに居たのね。

――あ、いや……これは……

――あぁ、いいのよ。気にしないで。

――え?

――私も昔はよくあったのよ。

――そうなんですか?

――ええ。だからあなたの辛さもよく分かるのよ。

――……

――ねぇ、あなたはどうしたいのかしら?

――俺は……変わりたい……このままじゃいけないって思ってる……

――それならまずは行動しないとね。

――でも俺……何したら良いのかわかんないし……それにもし失敗なんかしちゃったら……

――大丈夫。私がついてるわ。

――でも……

――でもじゃない!

――うぅ……わかりました……やってみます……

――うん!その意気だよ!

――はい! こうして俺は少しずつだけど変わっていくことができた。

第七話 不眠症

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夜寝つきが悪い、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分眠った感じがしないなどの症状が続き、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れや日本においては約5人に1人が、このような不眠の症状で悩んでいるとされています。の体調不良が起こる状態を指します。

ーーーーー

私は最近あまり眠ることができていませんでした。そのため授業中もぼぉっとしてしまい、教師に注意されることが増えてきていました。

そんな時、私は担任の教師に相談しました。

するとその日、私は学校帰りに病院へ行くように勧められました。

その日からしばらく通院することになり、睡眠薬を処方してもらい服用するようになりました。

しかし、一向に良くなる気配はなく、むしろ悪化しているような気さえします。

そこで私は思い切って医師に直接尋ねてみることにしてみました。

すると医師は意外な答えを口にしたのです。

「それは不眠症ですね」

―――――

不眠症について詳しく調べてみたところ、 【原因】

ストレス、生活習慣、アルコール、薬物などが挙げられています。中でも最も深刻なものは、脳の疾患によるものです。

【症状】入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡感の欠如、夜間の幻覚や妄想、不安、不潔恐怖、罪悪感などが見られます。

【治療方法】

ストレスや環境の改善、睡眠導入剤の使用などが行われます。

ーーーーーー 私は不眠症に悩まされるようになりました。

なんとか改善しようと試みたものの、全く効果は無く、逆に悪化していく一方でした。

そしてある日、私はついに限界を迎えてしまい、ある行動をとってしまいました。

――これで最後だ。

そう自分に言い聞かせながら、いつものように睡眠薬を飲んだ後、ベッドに横になり目を瞑りました。

――これでダメだったらもう終わりにしよう。

そう決意して眠りにつきました。

第八話 社交不安障害(あがり症)

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社交不安障害とは、他者から注目されるかもしれない社交場面に関する顕著で強烈な恐怖、または不安があるためにその状況を避ける(あるいは強い苦痛を感じながらも無理に耐える)のが特徴です。

ーーーーー

私は人と話すことが苦手です。

その為、他人と関わることを避けてしまいがちで、気づいた時には孤立していました。

友達と呼べる人は一人もおらず、孤独でした。

そんなある日、クラスメイトの一人が私に話しかけてくれました。

――ねぇ、今度の休みに一緒に遊ばない?

――え、あ、うん……いいよ……

それが私にとって生まれて初めての友達との会話となりました。

それからというもの毎日その娘と一緒に過ごすようになりました。

最初は緊張していたものの、次第に慣れていき楽しく遊ぶことができるようになっていました。

――また明日ね。

――うん。バイバーイ!

――バタンッ…………

次の日の朝、彼女は学校に来ませんでした。

不思議に思った私は彼女の家を訪ねてみることにしました。するとそこには、変わり果てた姿となった彼女が居たのです。

――なに……これ……

そこには変わり果てた姿で倒れている彼女の姿がありました。

――嘘……でしょ……? 恐る恐る彼女に近づき触れてみると冷たくなっていました。

――なんで……どうして……?

その時、私の頭の中にとある考えが浮かび上がりました。

――もしかしたら私のせいでこうなったんじゃ……?

――私が彼女と仲良くしなければ……こんな事にはならなかったのでは……?

――私が……殺した……?

――私が……彼女を……?

――私のせいで……? 私は自分がしてしまった事の大きさに押し潰されそうになると同時に激しい後悔に襲われました。

これがきっかけで私は社交不安障害(あがり症)になったのです。

あがり症になってからというもの、人前で上手く喋れなくなりました。

――どうしよう……このままじゃ……社会に出られない……

私は悩み続けました。

しかし、いくら考えても良い案は出てきません。

――どうすれば……どうしたら……

――そうだ!小説を書けば良いんじゃないか!

――それなら誰にもバレないし、きっとうまく書けるはず! こうして私は小説家を目指すことになりました。

第九話 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

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心的外傷後ストレス障害(PTSD) は、突然の不幸な出来事によって命の安全が脅かされたり、天災、事故、犯罪、虐待などによって強い精神的衝撃を受けることが原因で、心身に支障をきたし、社会生活にも影響を及ぼす様々なストレス障害を引き起こす精神的な後遺症、疾患のことです。

心の傷は、心的外傷またはトラウマと呼ばれます。トラウマには事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷があります。

ーーーーー

私は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を持っています。

この病気を知ったきっかけはネットで偶然見かけたことでした。

そのサイトの内容は、「PTSDとは」と言う記事でした。

私はその内容を見て驚きました。なぜなら自分の症状と同じものだったからです。

私はすぐさま病院へ駆け込みました。

そして診断の結果、PTSDと診断されました。

医師からは、

「辛い経験を忘れることはできません。しかし、あなたは乗り越えることができる。だから頑張ってください」と言われました。

「はい」と答えたものの、私はこれから先ずっと生きていく上でこの病と付き合っていかなければなりませんでした。

私は今まで以上に勉強に力を入れました。

大学に合格し、一人暮らしを始め、そして就職しました。

仕事は順調でしたが、上司のパワハラに耐えられず退職しました。

その後「お前は無能だ!」や「クズ野郎が!」など罵声を浴びせられながら仕事をしてきました。

そんな日々が続いたある日、私は会社を辞めました。

私はそれから引きこもりになりました。

毎日毎日部屋の中で過ごしています。

「いつまで経っても私は変われない……」

そう思いながら毎日を過ごしています。

第十話 統合失調症

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統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。

陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。陰性症状は、意欲の低下、感情表現が少なくなるなどがあります。

周囲から見ると、独り言を言っている、実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える、話がまとまらず支離滅裂になる、人と関わらず一人でいることが多いなどのサインとして表れます。

ーーーーーーーーーーーーー

僕は統合失調症を患っています。

この病気を患った原因は、幼少期に受けた虐待によるものです。

毎日のように暴力を振るわれ、時には煙草を押し付けられたりもしました。

僕にとってはそれが当たり前でした。

小学校に上がってからもそれは続きました。

学校でも虐められ、家に帰れば殴られ蹴られる毎日が続きました。

それが日常であり、それが普通だったのです。

そんなある日、いつも通り暴行を受けていると、父が母に向かって言い放ちました。

――もう限界だ。離婚する。

その言葉を聞いた母は、泣き崩れていました。

父はそのまま家を出ていきました。

――これでやっと解放される。

――あぁ……自由ってなんて素晴らしいんだろう……

――あの頃は、父に逆らう事ができなかったけど、今は違う。

――もうあの男はいない。

――自由に生きることができる。

――そうだ……旅に出よう……! こうして僕は旅に出ることに決めました。

――まずどこに行こうか……?

――そうだ!北海道に行ってみよう!

――そうと決まれば早速準備をしなくてはこうして僕は、北海道へ行くための準備に取り掛かりました。

第十一話 パーソナリティ障害

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パーソナリティ障害は、大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんだり、周囲が困ったりする場合に診断されます。認知(ものの捉え方や考え方)、感情のコントロール、対人関係といった種々の精神機能の偏りから生じるものです。※「性格が悪いこと」を意味するものではありません。「自己愛性パーソナリティ障害」「強迫性パーソナリティ障害」などに分けられており、症状としては、他者への配慮に欠ける言動をしたり、衝動的に行動することがあり、また、自分の価値感や信念が正しいと思い込んでしまうこともあります。

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私がパーソナリティ障害と診断されたのは高校生のときです。

「自分はみんなとどこか違っているのではないか?」と感じていた私にとって、この病名は衝撃的でした。

当時の私は、「なぜ自分だけがこんな目に遭わなければならないのか」と考えました。

そして、周りにいる人達全員に対して憎しみを抱きました。

しかし、周りの人は皆良い人で、憎むべき対象は自分自身しかいないことに気づきました。

その後、私は自分がいかに醜いかを自覚し始めました。

「どうしようもない人間なんだ」と思うようになりました。

それから私は自分を責め続けました。

「どうして私はこうなんだろう?どうすれば治せるのだろうか?どうしたら普通の人に近づけるのかな」

そんなことを毎日考えるようになっていました。

そして私は、ある答えを見つけました。

「私は他の人よりも劣っていて、欠陥品で、失敗作で、迷惑をかけるだけの邪魔者なのだ」と。

私はそう思うことで、自分を納得させることができました。

「だから私は悪くない」と自分に言い聞かせることができました。

しかし、私はそれでも不安でした。

なぜなら私は「失敗」してしまったからです。

だから私は「成功」しなければならない。

「成功」して、私は「幸せ」でなければならない。

私は、必死になって努力しました。

そして大学に合格し、一人暮らしを始めました。

私はそこで初めて「自由」を知りました。

「自由」とは、「何をしても許される場所」だと知りました。

「自由」とは、「何もかも自分で決められること」だと思いました。

私はその時、はじめて笑う事ができました。

――あぁ……これが私の求めていたものだったのだ……

――これを知ってしまったらもう戻れないなぁ……

――でも大丈夫。もう慣れたから。

――これからもずっとここに居ればいいんだ。

――そうすればもう傷つかなくて済むんだ……

第十二話 境界型人格障害

ーーーーー

「境界型人格障害とは、精神障害の分類におけるひとつのタイプである。衝動性や自己主張が抑えられず、非行や犯罪行為、反社会的な行動に出てしまうのが特徴。

『分裂病質』『妄想性』などに分類されることがある。

妄想の内容の多くは、現実ではありえないような事柄であったり、意味のないものが多い。

しかし、中には現実的な内容や、他者に対して危害を加える妄想なども含まれることもある。

妄想の内容は、基本的に一貫性がなく、突発的に起こることが多い。

また、突然怒り出したり、感情的になったり、急に泣き出したりするのも特徴のひとつである。

一般的に、妄想がある程度で収まっている間は、社会に適応できる可能性が高く、周囲も寛容な目で見守る場合が多い。

しかし、妄想がひどくなると、職場などでトラブルを起こしてしまい、周囲から孤立してしまう場合もある。

そのため、周囲の理解を得にくい。

ーーーーーーーーーーー

僕は境界型人格障害です。

この病気を発症したのは、高校2年生の秋頃です。

きっかけは些細な事でした。

いつも通り学校に登校すると、クラスメイト数人が僕の机の周りを囲んでいたのです。

そして、彼らは僕に言いました。

――お前さ、ウザいんだよ。

――空気読めねぇ奴ってマジで何考えてるか分かんないからキモいわ。

――つーか、存在自体がムカつくんだけど。

――正直言って迷惑なんだよね。

――もう学校来んなって感じ?

――ほら、早く謝れって。

――今なら許してやるから。

――おい、聞いてるのか?

――なんとか言えって。

――聞こえてんだろ?

――おい!何とか言えって!

――シカトすんじゃねえぞ!

――あぁ?なんか言えっつてんだろうが!

――殺すぞ!

――いい加減にしとけよ!テメェ!

――無視すんな!

――聞いとんかワレ!

――なめとんか!ゴラァ!

――ぶっ殺したろか!

――死ね!

――死ね! 僕は彼らの言葉を聞いて、衝撃を受けました。

僕は今まで、人から嫌われないように生きてきたつもりでした。

でも、彼らにとって僕は邪魔者でしかなかったのです。

僕は彼らに何も言い返すことができませんでした。

「ごめんなさい」とも、「許してください」とも言う事ができません。

なぜならば、僕は「無価値」だから。

「僕は死んだ方がいいのかもしれない。」

そう思い始めていました。

その後、担任の先生によってその場は収められました。

しかし、それからというもの、僕は学校でいじめに遭うようになりました。

暴力を振るわれることも度々ありました。

毎日のように罵声を浴びせられ、時には殴られたりもしました。

「なんでこんなことに……」

そう思ったこともあります。

だけど、僕にはどうすることもできなかった。

ある日のこと、僕は駅のホームで電車が来るのを待っていました。

その時ふと線路の方を見ると、数人の高校生たちが線路の上でふざけている姿が見えました。

「危ない!」と思って「やめてください!」と叫ぼうとした瞬間、先頭の車両が凄まじい勢いで突っ込んできました。

「ドンッ!!」という音と共に、目の前が真っ暗になり、全身に強い痛みを感じながら、僕は意識を失いました。

目が覚めると、そこは病院の一室でした。

身体中が痛くて動くこともできないし、喋ることさえもできません。

ただただ苦しむだけでした。

そんな時、1人の看護師さんがやって来てこう言いました。

「あなたは死にかけたんですよ」

「まだ助かる見込みはあります。だから諦めちゃダメですよ」

「頑張って生きて下さい」

その一言を聞き、僕は生きる気力を取り戻せました。

「絶対に生き延びてやる。」

僕は決意を固め、リハビリに励みました。

最初は歩くことすらままなりませんでしたが、段々と歩けるようになっていき、少しずつ回復していきました。

しかし、僕の心の傷が完全に癒えることはありません。

今でも時々思い出します。あの時のことを……。

「大丈夫ですか?」と声を掛けてくれる人がいますが、僕は何も答えずにそっと立ち去ります。

「大丈夫じゃないよ」なんて言えないから……。

本当は誰かに助けてもらいたいけど、僕のせいで周りを巻き込みたくないから。

「本当に困った時は頼ってください」と言われても、結局みんな離れていくだけなのです。

「お前にできることは何一つない。さっさと消え失せろ。

と言ってくる人もいれば、

「何があったんですか?話だけでも聞かせてくれませんか?」と言う人だっている。

でも、僕のことを信じてくれた人は誰一人としていませんでした。

両親でさえ、僕を見捨てたのです。

あんなに優しかった両親が、どうしてこんなにも変わってしまったのか。

それは、きっと、僕が生まれたせいなのかもしれません。

[あとがき]

こんにちは。

作者の久我琥珀です。

今作から作成する作品の「精神世界」の第一巻を読んでくださりありがとうございます。精神障害について書かせていただきました。

精神障害を持つ方々が、どのように生きているかを少しでも分かっていただけたら幸いです。

また、この小説を通して、精神障害に対する偏見や差別が少しで無くなれば良いと思います。

これからも応援よろしくお願い致します。

それではまた次の作品でお会いしましょう。

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精神世界 不動のねこ @KUGAKOHAKU0

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