第2話


 「へぇ、じゃあ此処は異世界なんですかー」

 「そうだとも青年」

 「で、トトラックさんはエルフで魔術師と」

 「分かり身が早―い、ゆうしゅーう」


 あれから1時間が経った。

 トトラックは適当に現在の状況を男に説明した。


 「じゃあ、本題をおさらいしようか?」

 「はあ、じゃあお願いします」


 把握してくれたのなら次の段階。

 ここで、おさらいと言う名の説明に入る。

 トトラックは指を一本立てた。


 「まず、一つ。私は最近1ヶ月前から《ワイン》を作りたいのです」

 「――ほう」


 一つ目。速球に本題に入る。

 これ以上の説明は不要、トトラックは2本目の指を立てる。


 「最終目的は私が造ったワインで更に《酢》を作りたいと言う事です」

 「――ほう」


 2つ目、此方は最終目的。

 やはりめんど……さっさと話を終わらせて、トトラックは3本目の指を立てた。


 「でも、なかなかワイン作りから上手くいかないのです」

 「――ほう」


 3つ目、今現在彼女が困っていることを口にする。

 トトラックは4本目の指を立てた。


 「ですので、文明が発達している世界の住人を呼びました、手伝って欲しいからです」

 「――ほう」


 4つ目、今目の間の男にやって貰いたい事、その一を言う。

 トトラックは最後の指を立てた。


 「で、手伝いと同時に、私の作ったワインの毒見役をしやがれ」

 「――ほう、断る」


 5つ目。男は容赦もなく断った。

 その言葉にトトラックは頬を膨らます。

 反対に男は険しい顔を浮かべて腕を組む。


 「なぜ」

 「最後の一文が可笑しい」

 「最後とは?」

 「わざわざ毒見役を引き受ける馬鹿が何処にいる?」


 ――なんて実にもっともな答えなのだろう。

 トトラックは僅かに俯き悩む。だがそれも僅かな事。

 彼女は勢いよく顔を上げた。


 「だったら、ホットワインにするから」

 「そういう問題じゃない。――素人の作ったワインなんか飲めるかー!!!……ってことだ」


 ――やはり死極まっとうな答えである。

 だが、トトラックは腕を組んで訝しげな表情を一つ。


 「何言ってんの?あのね。そんなの、私も怖いよ!」

 「……は?」

 「怖いから呼んだに決まっているじゃん」


 この無気力顔エルフ。自己中の極みを覚えたのではないか。

 男、名をマコト。彼は心から呆れかえり。大きくため息を付くのであった。

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