第11話 勇者は喜び、おっさんを追放したい

「----と言う訳で……」


 いきなり俺の部屋に突撃してきた勇者セラトリア。

 開口一番、彼女は自分の左手の甲を見せながら----


「ドロミオーネ、私の身体に封印してきました」

「えっ、マジでどういう冗談?」



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 あのドロミオーネの戦いから、数日後。

 勇者セラトリアは俺達とは別行動を取っていて、帰って来るなり、そう言ってきたのだ。


 いや、確かに手の甲に【Ⅲ】っていう、あのドロミオーネの額にあったマークはあるけれども。


「実はこのマークこそ、ドロミオーネの本体なのだ」

「……ただのマークじゃん」

「いや、このマークこそが、ドロミオーネの本体そのもの。ヤツは自身の身体を少女や獣などに変える変装変化の達人。心臓に弓矢を刺しても生きていたし、心臓以外に生命を司る器官があると考えて、調査した結果、【ジャッジメント・セラトリア】をぶつけた後にマークが移動してるのを確認しまして」

「放った時は【ガルガンディア・パニッシュ】って技名、じゃなかったか?」


 「そうだったか……?」と、疑問符を浮かべるセラトリア。


 『人智英雄』を受けて放つあの技----セラトリアが唯一技名をつけている技なんだけど、その名前は毎回適当だからな。

 【サンライト・ブレイクアタック】とか、【セランディア・ルールブレイカー】だとか、本当に適当だし……。


 この勇者様が技に名前を付けない理由って、技名にこだわらなすぎて忘れてしまうという、めちゃくちゃ酷い理由だからな。


「まぁ、ともかく【Ⅲ】というこのマークがドロミオーネの本体だと判明した結果、自分の身体に封印するのが一番だという結論に至った訳だ」

「いや、普通は至らんから。その結論に」


 ----まぁ、ともかく勇者様の説明によれば、ドロミオーネの本体のこのマークを自らの身体に封印する事によって、ドロミオーネが持っていた知識の一部を継承したんだそうだ。


 ドロミオーネが使っていた、身体能力を上げて放つ【勇者武術】の知識。

 今代の魔王の能力の1つに、契約能力があるという事実。

 そして魔物1体1体に【死んでも復活する契約】を交わして、復活させているという真相。


「得た知識のおかげで、この近くにある魔物との契約の証とやらをいくつかぶっ壊してきたのだ。いやはや、これのおかげで魔王が対処するまでは、この辺りに魔物は復活しない、つまりは平和が約束されたという訳だ。

 いや、なに、勇者の力さえあれば、このくらいなんてことはないさ!」

「……ほんと、凄いな。勇者様は」


 四天王をその身に封印して、さらには情報を引き出すだなんて、本当に勇者様は流石だ。



「----うむっ、そうだろう。そうだろう。

 しかし、ここから先、もっと強い敵や厄介な四天王が出るだろう」


 キリッ、と真剣な目つきで、勇者セラトリアはそう言うのであった。


「アルテの能力、『人智英雄』。一般の人だろうとも英雄並みの力を得ることが出来るようになるその力は、確かに強力すぎるスキルだ。しかしながら、使用中は集中するために、動けないという欠点がある。

 今まではなんとか守ることが出来たが、それが不可能な時もこれから来ると思う」


 ----そう、勇者に賢者、それから聖女の3人が、俺を追放する理由とは、それなのだ。

 俺が勇者パーティーに選出された理由である『人智英雄』は確かに強力な強化能力ではあるのだが、その分、しっかり集中しなければならないのだ。

 彼女達3人は、いつか『人智英雄』を使っている時に、敵に攻撃されて俺が死ぬんじゃないかと思っているのだ。


 それこそが、俺が追放されようとしている理由なのだ。


「分かったか、アルテ。お前の実力は理解しているが、勇者パーティーで戦うという事はそれなりに危険があるという事を忘れてはならない。

 故にだからこそ、お前は追放されるべきだ。魔王と戦うのは、ナウンとシャルの2人に任せ、私達は2人でのんびりと----」




「アルテ、アルテ! ボク達の赤ちゃん、動いた! 動いたよ!

 ----あっ、セラトリア。おかえり」




 いきなり扉を開けて、嬉しそうに笑いながら、大きくなったお腹を見せつける賢者ナウン。

 その様子を見て何故か俺は、セラトリアから数発殴られたのだが、その様は言うまでもない事だろう。



>>【四天王ドロミオーネを、倒したい】編 《完》

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パーティーメンバー全員から追放を命じられるおっさん、実は全員から「私だけは理解してるから」と言われていた 帝国城摂政 @Teikoku_Jou

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