第77話 新入生いらっしゃい♪

今日の授業が終わって部活の時間になると各部活動の部員達が仮入部やら体験入部やらで行動を開始して、早速1年生の教室の近くで勧誘合戦がスタートした。

リナは昼休みに作っていたプラカード…ではなく!実は密かにフランが作ってくれていたお洒落でカッコ可愛いバイク部らしいイラストのプラカードと去年に転校した久保田姉弟とツーリングした際に撮った思い出の写真を載せた手作り写真集を用意してバイクは危険は伴うが安全に乗れば楽しい乗り物ということを全力でアピールする。

……が!なかなか興味を示してくれる新入生がおらずこれも時代の変化なのかとリナは思った。

「あーあ、ダメだぁ〜…全く1年生の子達興味を示さないよ」とリナがプラカードを持ったまましゃがみ込むと「バイクに興味ある子が今時珍しいんだから気長にやるしかないでしょ」とフランはスマホを操作しながらダルそうに言った。

こんなすぐに挫けてたら1年生なんて誰も来るわけがないと思ってリナは気を取り直して立ち上がると1人の新入生らしき女子生徒に話しかけられた。


「あ、あの?このバイクに乗ってる写真の人達って先輩達ですか?」


声をかけてきたのは身長は160cmあるかないかの女子生徒で体型は標準くらいだが胸の2つの塊がとても豊満で高1になったばかりでけしからん体だとフランはじっくり見ていた(笑)

リナは「うちの部に興味あるの!?」と言うと女子生徒は「楽しそうだとは思います…」となんだかバイクに抵抗があるようだった。

リナは女子生徒から名前を聞くと「窪塚 結(ゆい)」というらしい。

とりあえず考えさせて下さいという結は、リナ達にお辞儀をすると小走りで去っていった。


勧誘を始めて1時間くらい経った頃合いで「今日はそろそろ帰ろう」とフランが言うので、リナも帰宅する準備をしようとした時だった。


「…すみません、この写真を見せて頂いてよろしいですか?」


突然、高校生にしてはクールで落ち着いた声の女子生徒に話しかけられてリナは女子生徒の顔を見るなり思わず見惚れてしまった。

艶のある綺麗な黒髪ロングヘアで身長はリナやフランより少し低い163〜164cmと言ったところだろうか?

スタイルも良く目ヂカラもあってキリッとしたクールビューティーな印象の女子生徒はかなり美人で年齢より大人びて見えた。

てか、誰かに似てるとリナは思った。


「1年生の子だよね?ゆっくり写真見て行ってね」


リナはそう言うと写真集を女子生徒に手渡すと「ありがとうございます」とだけ言って女子生徒はクールな表情のまま写真を見始めた。

そしてリナ、フラン、聖奈、健人の4人で楽しそうにバイクと一緒に写ってる写真を見た女子生徒の表情が少しだけ変わるとこんなことを聞いてきた。


「あの?このバリオスとZX25Rって先輩方の愛車ですか?」


「うん、そうだよ。バリオスは私ので25Rが隣にいる私の友達のバイクだよ」


「……なるほど。つまり先輩達は一発試験で免許を勝ち取った訳ですね?」


女子生徒のこの言葉にリナとフランは思わずお互いに顔を見合わせて驚いた。

バリオスとZX25Rの車種名を認知してるだけで驚きだが、MT車に乗っている…すなわち一発試験に合格していると理解しているということは説明するまでもなくこの子はバイク事情に精通しているということだ。

リナはこの機会を逃すまいと「貴女の名前は?」と聞いた。


「…失礼しました、名乗るのが遅くなりましたね。私の名前は菅原心珠(ここみ)と言います。私も誕生日を迎えたら普通二輪免許を取得するつもりです」


ここから先は言うまでもなくバイクを通して意気投合し、心珠はバイク部に入部してくれることになった。

入部の決め手はやはりリナとフランが普通二輪MT免許を取得していて本格的な250ccバイクに乗っていることだった。

さらに心珠がリナ達により興味を持ったキッカケは、実は2年生に進級する直前の3月にリナは新中型二輪免許(251cc〜650cc)の一発試験に挑戦し、見事に4回目で合格を果たして自動二輪免許を昇格させていた。

残すは18歳以上から取得可能となる大型二輪免許のみとなり着実に夢に近づきつつあった。


それはそうと部を存続するにはあと1人の入部が必要になる…


リナは先程声をかけていた窪塚 結にひそかに期待していた。


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