第66話 ウィリー

時刻は21時を過ぎた頃だった。


リナ、フラン、舞華の3人は各々自分の愛車に乗って首都高速3号渋谷線を走っていた。

ビーコムのインカムを接続した3人はコミュニケーションを取りながら都心環状線の方向へ向かっていた。

新品タイヤと本来のパワーバンド回転域を表示されたタコメーターに付け換えられたリナのバリオスが先頭を走っていた。

普通ならば100km程走って新品タイヤを慣らすのだが、首都高を走るのに全くゴムの表面が剥かれてない新品タイヤでは危ないと舞華が定常円旋回やホイルスピンをさせてあっという間に一皮剝いてリナが安全?に走れる状態にしてくれた。


リナ達は谷町JCTをC1内回りに分岐してその先の浜崎橋JCTを芝浦の方へ分岐し、レインボーブリッジを渡って有明JCTから神奈川方面の湾岸線へと出た。

湾岸線に出ると直線道路がしばらく続くのでエンジン回転を回すにはもってこいのエリアだ。

「リナちゃん!早速回してみなよ!」インカムのスピーカーから舞華の声が聞こえてくる。

リナはスロットルを開けて回転をゆっくりあげていく。

タコメーターの針は14000rpm、15000rpm、16000rpmと上がっていくにつれてバリオスのエキゾーストがより甲高いレーシーな音へと変化していく、そして今まで回せなかった18000rpm以上回した時だった。

パァァァン‼という今までバリオスに乗っていて1度も聞いたことがない凄まじく甲高い音に変化しながら爆発的な加速をしながらバリオスは湾岸線を突っ走っていく。

そして19000rpmを超えた瞬間だった…


「うわあああ!!」


なんとパワーバンドに入ったバリオスは、まるで2ストロークのバイクのようにフロントタイヤを浮かせて凄まじい馬力を絞り出してウィリー状態になっていた。

これにはリナも驚いたのか大声で叫んでいて、その驚きっぷりを後ろで見ていた舞華は笑いながら焦っているリナにインカムを使って言った。


「ハハハ!!、リナちゃん!浮き上がったフロントを道路に抑えつけるイメージで自分の体重をかけるんだ!バリオスは今パワーバンドに入ったぞ!」


リナは高台に位置する湾岸線の強風に吹き飛ばされそうになるのを必死に耐えて舞華に言われた通りに自分の体重をかけてウィリーしているフロントタイヤを道路に接地させた。

そのままリナは20000rpmまで回してギアを4速へと上げてさらに加速していく。


「す、凄い!!凄すぎますよ舞華さん!!自分の知っているバリオスじゃない!まるで別のバイクに乗り換えた気分です!」


超高回転域に入ったバリオスは、舞華の350SSやフランのZX25Rがついていくのが少しツラそうだったが思う存分バリオスを堪能したリナ達はクルマやバイク好きが集まる大黒パーキングへと入っていった。

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