第62話 首都圏の渋滞
舞華が運転する積載車は、東名高速道路の左車線を荷台に積んであるリナ達のバイクを配慮してゆっくり走っていた。
舞華が営む自転車屋に行こうと思ったタイミングで中井PAで偶然にもばったりと舞華に会って、一緒に舞華の自転車屋まで行くことになった。
運転する舞華の隣にフランが乗り、助手席側にリナが乗っている。
3人は中井PAを出発したばかりの時は、会話が弾んでいたが喋り疲れたのかすっかり会話も無くなり舞華のトラックのロードノイズとディーゼルエンジン特有の音が心地良い感じに聞こえてくるだけ。
リナは東名高速道路の海老名JCT付近の渋滞で速度が落ちてきたので周囲の車を見た。
周囲を走っている車の中を見ると、渋滞にダルそうにしてる運転手や助手席の彼女と楽しげに会話をしてる彼氏、家族連れのファミリカーでは子供が車のカーナビで子供向けのアニメを観ている。
フランは渋滞があまり好きじゃないのか「この辺ってニュースでよく混んでますよね」と舞華と話している。
昔も今も東名高速道路の首都圏エリアの渋滞は、もう当たり前と言った感じで慣れたドライバーは時間をズラしたりと時間調整をするのが基本。
トラックから車の流れを見ていたリナが、バリオスのことで舞華に聞きたかったことを思い出して聞いてみた。
「舞華さん?あのバリオスの最高出力って何なんですか?」
舞華は、前の車が進み出すとシフトレバーを2速に入れてゆっくりとトラックを発進させながら返事をした。
「確か…18000rpm辺りからパワーバンドに入って19500rpmのピークパワーで73psだったかな?」
リナとフランは「やばっ!!」と2人同時に声を出した。
あのバリオスは低回転域のトルクを完全に捨てて高回転一点張りにすることで、250cc4ストロークのエンジンの出力を限界まで引き出されているらしい。
純正のバリオスで40ps程なので、それを考えるとかなりめちゃくちゃな魔改造っぷり。
逆に高回転にステ振りしてしまった影響で、低回転域のトルクの無さときたら人によってはストレスになるだけと言った感じで、お世辞にも乗りやすいバイクとは言えない。
舞華は続けてこう言った。
「いよいよバリオスは本当のパワーを発揮するときが来たってことだね。萌歌ちゃんから聞いたよ?椿ラインの大会出るんでしょ?じゃあ、尚更バリオスを目覚めさせないとね」
舞華はそれだけ言うと渋滞が抜けて流れが良くなった東名高速をひたすら世田谷に向かって走る。
リナは、バリオスの本当のパワーを引き出される歓びと同時に自分に乗りこなせるか不安もあった。
「私に乗りこなせますかね?」
リナは不安そうに舞華に聞くと、舞華は「大丈夫、大丈夫」と軽い感じで返事をした。
そして少し間をあけた後に真面目な顔で舞華がリナに言った。
「ただ…今度からは死ぬ気で乗らないと、リナちゃん死ぬと思っていた方がいいよ」
その言葉にリナの額から冷や汗が流れ落ちた。
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