第55話 私達は時代錯誤

雨が強く降る12月の平日。

今日は部活が休みだったが、なんとなく放課後に部室に顔を出したくなって行ってみると部長の聖奈もいた。


「あら?リナちゃんも来たんだ」


「…えぇ、なんとなく来たくなって」


2人は強く降る雨の音を聞きながら部室の窓から外を見ていた。

校内を走る教師や子供の送迎をしている親の車をなんとなく観察していたが、みんなEV車かハイブリッド車でエンジンのみの昔ながらの車は1台もない。

もちろん昔から旧車を愛好してる者もいるが、それは本当に乗り物が好きな人だけ。

昔は四輪、二輪問わずマフラーを変えて排気音を大きくしてエンジン音を楽しむ者もいたが、今ではほぼいなくなった。

リナがバリオスに乗って沼津市街を走っている時に、周りの歩行者からは白い目で見られて「今でもあんなうるさいバイクなんているんだ」などと後ろ指を指されるなんて珍しくない。

現在は、車が入ってくる音と言えばタイヤのロードノイズやモーター音くらいで車というより家電が走ってきたという感じ。

聖奈が大きくため息をつくと、悲しそうに言った。


「…もっと昔に生まれたかったなぁ。エンジン音が街中を走り回ってた排気ガス臭い時代にね」


「…同感です。…でも、完全にエンジン車が滅びた訳じゃないですし、残っているエンジン車を楽しめばいいんですよ」


リナが笑顔で聖奈に言うと「私達って…時代錯誤もいいとこだね(笑)」と言いながら笑い出し、それにつられるようにリナも大笑いした。


確かにこの時代で昔のバイクに乗って排気ガスをまき散らすなんて、まさしく時代錯誤もいいとこだろう。

車やバイクに興味ない人からしたら、うるさくて排ガス臭い乗り物で環境汚染してると思われるだけ。


それでもごく一部のマニアからは旧車は愛されており、リナ達も間違いなくその1人だろう。


好きなことをするのに時代は関係ない。

例えそれが時代遅れになった昔の原動機を搭載した乗り物だとしても、リナ達はこれからも乗り続けるだろう。

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