第3章 バイク乗り天敵の冬到来!バイク部の今後の活動内容は?
第53話 12月
季節はすっかり真冬の12月。
一部のバイク乗りは冬眠期間に入るが、冬もバイクに乗りたい!冬こそ至高!と思っている一部の変態ライダーもいる。
しかし、近年ではライダー用の防寒装備も充実しており電熱グローブや電熱ベストもラインナップが豊富にある。
さらに、2年くらい前に暖房が付いたフルフェイスヘルメットが某大手メーカーから発売され爆発的ヒットをして以来、他のヘルメットメーカーからも販売されるようになった。
そのセットで冬でも完全に走行風を通さないジャケットなど、2030年代になって大幅にライダー用品も進化している。
とはいえ、冬という自然の寒気を凌ぐというのは大変なことで体感温度が氷点下の中でバイクを長時間運転していたら流石に身体は冷えてくる。
今日は12月中旬にしては珍しく昼間で0度という寒さでバイク部の部員達は、土曜日の休日に冬の活動について話し合っていた。
「えー、冬のバイク部の活動なんですが…ツーリングもいいですけど、春に向けての資金貯めも大事だと思うのですが…どうでしょう?」
部長の聖奈が部員達に問いかける。
静岡はわりと冬でも暖かいとはいえ、それはあくまで他県と比べて冬でも暖かいというだけでバイクに乗れば普通に寒い。
ツーリングするということは普通にお金もかかるし、春になって暖かくなれば本格的にツーリングする機会も増えてくる。
それならば今は充電期間としてバイトに徹するのも手だ。
「俺も姉貴の案に賛成かな、ぶっちゃけ冬って苦手だし寒い思いして中途半端なツーリングするくらいなら冬は金貯めて春に備えたいかな」
聖奈の弟の健人も姉の提案に賛成の模様。
これに対してリナは2人とは考えが違っていた。
「私は、冬でもバイクをどんどん乗りたいです!静岡は雪も滅多に積雪しないし、時間帯さえ気をつければ凍結もしないから冬のバイクを楽しまないと損だと思うんです」
やはりこうして話し合うと面白いもので、いろいろな考えの人がいる。
しかし、このままでは案が一向に纏まる気配がないので顧問の東雲先生がこう言った。
「これは部活動です。冬だから完全にバイクに乗らないというのはおかしな話ですよね?…そこで先生から課題を出します」
東雲先生は部室に置いてあるホワイトボードに黙々と書き始めた。
ホワイトボードに一通り書き終えた東雲先生は、右手でバンッ!とホワイトボードを叩いて部員達に続けて言った。
「冬休みに入るまでにスラロームを5秒台、一本橋を20秒以上で通過できるようになりなさい。来年の4月に箱根の椿ラインを合法的に貸し切って静岡、山梨、神奈川の高校の数少ないバイク部員達が集まって公道レースがあるのです。私達はそれに出ます」
部員達は部室中に響き渡るような大声で驚いた。
まさか東雲先生がそんなことを考えていたなんて…
部長の聖奈は、椿ラインの高校生によるレースについて以前から知っていたが何故急にうちの部も出ることになったのか聞いてみた。
「先生?どうして急にレースに参加する気になったんですか?確かに椿ラインの合法レースは認知してましたけど…私達はそこまでの技量はないですよ?」
「あなた達に昔の先生の話をしたでしょう?それで先生は元走り屋として忘れていた何かを思い出したのよ。とっくに現役を退いたとはいえ…根っからのストリートレーサーの血は抗えないってことかしらね」
秋頃に東雲先生が部室に忘れた走り屋時代の10代の頃の写真に写っていた幼少期のリナの恩人で東雲先生の師で伝説の走り屋・佐倉奈々未や走り屋時代の話をしたことで、東雲先生の内に隠していた昔の情熱が目覚めてしまったのだろう。
それはそうと健人がフランが最近、部活を休む頻度が多いことを疑問に思って先生に聞いてみた。
「そういえば先生?、最近フランのやつ部活休み多いですけどどうしたんですか?」
東雲先生はもう喋ってもいいだろうと思ったのかこの場にいる部員達に話した。
「おそらく西園寺さんは個人的に連絡きてると思うけれど、中野さんは普通二輪免許の取得に向けて現在舞華さんと特訓してるわ」
健人は「えっ…マジっすか!」とそんなこと初めて聞いたと隣で聞いていた聖奈も驚いていた。
驚く姉弟に東雲先生は続けてこう言った。
「久保田姉弟は冬にバイクは乗り気じゃない感じだったわね?、それはあなた達の自由だけど、来年のレースが関わってくるとそうも言ってられないわよ?」
東雲先生の言葉の本当の意味を、この時の久保田姉弟はまだ知らなかった。
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