第46話 真実
10月も中旬を過ぎてくると真夏のような残暑もだいぶ和らぎようやく過ごしやすい季節になってきた。
リナ達、バイク部員達は部室の窓にポツポツ音を立てながら強く降る雨を眺めていた。
部長の聖奈が部室を掃き掃除をしていると、部室の物置の上に置かれた1枚の写真を見つけた。
「誰の写真だろ…」と小声で呟きながら写真を手に取ると男性1人に女性4人の5人組が笑顔で楽しそうに写っていた。
前列に3人写っているが、その中の2人は若い頃の東雲先生と舞華だった。
ぶっちゃけ東雲先生は20代なので今でも若いのだが、この写真に写ってる先生はそれよりさらに若い感じでおそらく10代だろう。
前列の左に写ってるのはリナにバイクを譲ってくれた現在自転車屋を営む舞華だが、今と全く変わらず若々しい感じで写っている。
真ん中に東雲先生でその右隣に黒髪で松嶋菜々子似の美人の女性が写っているが、聖奈は誰だろうと思っていると突然後ろから「聖奈さん、何見てるんですか?」とフランがやってきた。
「たぶん東雲先生のかな?写真がここに置いてあってさ」
「うわ!?先生若っ!てか、隣に写ってる舞華さん全然変わってないじゃん(笑)」
フランが不必要に大きな声で盛り上がっているとリナや健人達も気になってこちらにやってきた。
みんなで写真で盛り上がっていると、リナだけが急に真剣な顔で黙って写真を眺めていた。
それを見ていた聖奈がリナに話しかける。
「リナちゃん、そんな顔してどうしたの?」
「……この人です。この東雲先生の隣に写ってる黒髪の女性が幼い頃に迷子になって助けてくれた人です」
リナがそう言うと「え!?こんなことある!?」や「先生の知り合いだったのか」などフランや健人が騒いでいる。
「はぁ…ついにバレちゃったか…」
写真のことに夢中になって他の人が部室に入ってきたことに気づかなかったが、リナ達は聞き覚えのある女性の声がした扉の方に顔を向けると東雲先生が気まずそうな表情で立っていた。
リナは写真を持ったまま東雲先生の方に詰め寄って言った。
「この写真に写ってる女性って先生のお知り合いですよね?この人なんです!私の幼少期の恩人は」
「……ごめんなさい、西園寺さん。実は少し前かららそのことは知っていたの…」
「えっ…そうなんですか?そんなことより先生はこの女性の人と連絡取れるんですよね!?」
東雲先生は曇った顔をして俯いて黙ってしまった。
何だか様子がおかしい、部員達は東雲先生の雰囲気で何かを察したのか誰も喋らなくなった。
東雲先生は覚悟を決めたように顔を上げるとリナに言った。
「…その女性は、奈々未先生はもう亡くなっているの」
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