第44話 まるで誰かさんにそっくり
バイク部としては初となる山梨ツーリングを終えて1週間程経っていたが、高校生のリナ達はすぐに次のツーリングの計画を立てたくて仕方がなかった。
しかし、ツーリングするとなるとそれなりにお金もかかるし資金作りも大事なので部員達はアルバイトをしてツーリングの資金を貯める期間へと入った。
そんな中、リナの親友の中野フランは山梨ツーリングの時にほったらかし温泉で東雲先生と何気なく会話した「エイプに乗ってみない?」という東雲先生の放った一言でエイプに乗ってみる機会を得ていた。
それで今日は日曜日だが、エイプに乗るために東雲先生の自宅へとフランは単身で来ていた。
「せっかくの休みなのに、わざわざ先生の家まで来てもらって申し訳ないわね」
東雲先生が日曜日に呼び出してしまったことを軽く謝罪すると「全然構いませんよ」とフランは笑顔で返事をする。
むしろ、伝説の元走り屋と言われた東雲先生の家のガレージに来れるなんて聖奈や健人達が聞いたら羨ましがるだろう。
東雲先生の家の近くに小型バイクなら広々と乗れる公園の駐車場があるので、そこまでエイプと共に移動することになった。
公園にエイプと共に移動すると、東雲先生がバイクの基本的な乗り方や操作について説明してくれた。
「今からバイクの乗り方について簡単に説明するわね。基本的にMTのバイクはギア操作が必要になるのでクラッチ操作が必要になるの。ギアは1速から始まって2速、3速と速度に応じて変速していくのよ。ちょっとやり方を見せるわね」
東雲先生はそう言うと、左手でクラッチレバーを握ってシフトレバーを左足で下に1回踏み込んでギアを1速に入れると、ゆっくりとクラッチレバーを戻して半クラッチと呼ばれるクラッチが繋がり初めて車体が少しずつ進み始める発進をスムーズに行う為の技術を使ってエイプを発進させた。
公園の駐車場内をくるっと1周するとフランの前でエイプを停車させた。
フランは、東雲先生のエイプに跨るとエンジン音と単気筒の鼓動を感じていた。
両手でハンドルのグリップを握ったフランは、クラッチレバーを握った。
説明された通りにギアを1速に入れるとゆっくりとレバーを戻してクラッチを繋いで走り出した。
「おぉ!?おぉぉ!」
フランは初めて自分で操作して動かすバイクに感動したのか、思わず声を出してしまっていた。
そのまま公園の駐車場を何周も走っていると、ギアチェンもできるようになっていた。
東雲先生の読み通りフランは筋が良かった。
フランは、エイプを停車させるとエンジンを切ってバイクから降りながら言った。
「先生、アタシも免許取りたいです。リナと同じ免許を取ればMTのバイク乗れるんですよね?……先生、乗り方教えてください!」
フランからバイクを教えてほしいと言われた東雲先生は、少し間をあけたあとに真面目な顔で言った。
「本気?一発試験は相当大変よ?それでも挑戦するなら私も本気で教えるわ」
「やります、教えてください!」
大変だとわかっているのに迷わずにぶつかっていこうとしてる感じがまるで東京で自転車屋を営業している例の2スト乗りのあの人に似ていると東雲先生は思った。
これは教え甲斐がありそうだ。
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