第33話 顧問
今日の授業が終わったリナ達は、学校の3階にある使わなくなって倉庫と化した教室の前に来ていた。
よく見ると手書きで「自動二輪部」と書かれた表札がある。
「ねぇ!?ここが部室なの!?」
フランが廃れた教室の扉を見て不安そうに言うと「おうよ!とりあえず入れよ」と聖奈の弟でバイク部の健人が扉を開けた。
扉の開きが悪く今にも壊れそうな音を立てている。
中に入ると昔使ってたと思われる教材や文化祭などで使った物がガラクタ化して散乱していた。
「みんな来たわね!早速ミーティング始めるわよ!」
奥の方から聖奈の声が聞こえてきて、そちらの方へ歩いていくと部員分の机と椅子が向かい合わせで既に配置されていた。
机は5つあるうちの4つを向かい合わせに残りの1つを向かい合わせた4つの机に付け足すように配置されており、よく見ると上座の位置になってるのがわかる。
「部員って私達4人ですよね?このもうひとつの机は??」
リナが気になって部長の聖奈に聞くとよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに話し始めた。
「そこは顧問となる先生の席さ、と言ってもまだ顧問の先生がいないんだ…諸君!バイク部の最初の課題は顧問となってくれる先生を探すことだ」
リナ達はそんなこと考えるまでもないのでは?と思った。
なぜならバイク部の顧問に相応しい先生は、あの人しかいないのだから…
小柄な可愛らしいルックスで生徒からも人気のある国語教師…東雲先生。
彼女の走りを間近で見たことのあるリナならわかる、このバイクに必要なものは全て彼女が持っている。
そして東雲先生は伝説の電光石火と呼ばれた元走り屋、走りの面でも知識を教えてもらえるだろう。
「この部の顧問は、東雲先生しかいないでしょう?」
リナが腕を組みながら言うと聖奈も内心それはわかっているようだった。
しかし、問題があった…
「東雲先生が顧問になってくれれば最高なんだが…先生は既に空手部の副顧問として定評があってな、前に赴任していた島田にある高校で静岡県大会で準優勝に導いた人なんだ」
バイクだけでなく空手でも凄い人とはリナにとっては実に興味深いことだった。
実はリナは、幼少期から祖父に空手を教え込まれており中学の時には空手部の顧問に直々に勧誘をされたが当時は入部するつもりがなかったが、顧問があまりにもしつこく勧誘してきたので中3に進級した時に異例の入部をした。
リナは静岡県大会と全国大会、どちらもノーシードで出場して圧倒的な実力を見せつけて優勝をした。
祖父の鍛え方が半端なかったリナにとって、中学生でリナに勝てる者がいなかった。
全国大会を優勝したリナには、強豪校からのスカウトも何校からも来たが全て断った。
高校では空手をやるつもりはなかった、リナが空手で勝ちたい相手は師範である祖父だけだったからだ。
それに高校に入ったらバイクに乗ると決めていたリナは、空手よりバイクだった。
「私、東雲先生の所に行ってきます」
リナはそれだけ言うと足早にバイク部の部室を出ていった。
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