第13話 まずは発進
「それじゃ早速始めるわよ!」
如月教官がそう言うと身体をほぐす準備運動をして、教習用で使っているプロテクターとヘルメットを身に付けた。
手始めにバイクの引き起こしだ。
バイクに乗ってる人なら誰しも教習時代に通ってきたことだ。
リナは如月教官の説明を受けた通りにバイクを起こそうとするが全然起き上がる気配がない。
なんと引き起こし用で使ってるCB750は既に不動車となった車体のタンク内に砂を詰めて、さらにはエンジンガードも取り外して転倒させると完全に垂直に倒れてしまう如月教官がリナの為に予め用意しておいたものだった。
「西園寺さん!腕だけで起こそうとしてるわよ!それでは絶対に起こせない!ましてやCB750はナナハンの中でも重量級でわざと砂を詰めてさらに重量が増しているわ!もっと身体をシートにくっつけて身体全体を使って押し上げるイメージよ!」
教習装備も取り付けてある上にタンクには砂がいっぱいに詰まっている。
おそらく250kg以上はあるだろう…
リナは言われた通りに身体をシートにくっつけて、身体全体を使って気合いでバイクを起こそうと試みる。
するとバイクの車体が少しだが上に持ち上がった気がした、リナはこのチャンスを逃すまいと空手の稽古で鍛え抜いた筋力をうまく活かしてなんとかCB750を起こすことに成功する。
「はぁ…はぁ…、やばい!めちゃくちゃ重いですね」
リナは引き起こしをしただけで息が上がってしまった。
本来であれば400ccを使ってやるので、もう少し軽量なのだが流石にいきなりナナハンで引き起こしはキツい。
だが、このくらいの勢いで練習に励まないと一発試験でしか手段のないリナには免許取得は絶望的だ。
「流石、幼少期から空手で鍛え上げられただけあって筋力が凄いわね。引き起こしは合格よ!次は乗車と発進をやるのでお手本を見せるからよく見ていて」
如月教官は、もう1台用意したCB750に手順通りに乗車するとエンジンを始動した。
クラッチレバーを握って、シフトレバーを踏み込んで1速にいれた。
スロットルを少し開けつつ1500~2000回転をキープしてクラッチレバーをゆっくり戻してクラッチを徐々に繋いでいくと走り出していく。
如月教官は、とりあえずギアチェンジはせずに1速のまま軽くコースを周るとリナの前でバイクを停車させてエンジンを切った。
「それじゃ、さっき説明した通りにやってみて」
如月教官に説明された通りに、リナはCB750に跨がるとミラーを調整してエンジンを始動した。
身長165cmのリナは足つきに関しては、全く問題なさそうだ。
被り慣れないヘルメットなので、頭が痒いのか指を突っ込んでいると如月教官が「痒かったらヘルメットを一旦脱いでいいわよ」と言ってくれたので一瞬だけヘルメットを脱いで頭を掻くと再びヘルメットを被った。
気を取り直してエンジンを始動して、クラッチレバーを握って1速に入れて発進しようとクラッチを戻すと…
「あっ…(笑)」
リナは見事にエンストをした(笑)
エンストした際は、ギアをニュートラルにしてクラッチを切り再びセルで再始動するのが正しい手順だが大体の場合はギアは1速のままクラッチだけを切って再始動するのがほとんどだ。
リナはエンジンを再始動すると、再び発進しようとするがまたもやエンスト…
「なんで!?」と不思議そうにしているが、またエンジンを再始動して発進しようとするが3回連続でエンスト(笑)
リナはエンジン回転に対してクラッチレバーをスパッと離して戻してしまっている為、言うまでもなくエンストしてしまう。
リナは極度の機械オンチだった…
「西園寺さんは、クラッチレバーを戻すのが早すぎるわ…もう少しじわりじわり戻していって繋がり始めたらスロットルを開けつつ完全に繋ぐイメージよ」
如月教官に説明されて、言われた通りにやるがやはりエンストしてしまう。
まだ初日とはいえ、こんな調子では先が不安になってくる。
如月教官は内心苦労しそうだと思った(笑)
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