第7話 意外な繋がり

真夏の猛暑の中、クーラーもかけずに閉め切っていた店内に入っていく舞華は極暑のあまり「あっちぃー」と声を出しながらクーラーのリモコンが置いてある場所へ向かうとすぐさまスイッチを入れてクーラー全開にした。

地球温暖化とか昔から騒がれているが、そんなこと気にしてたらこちらが参ってしまう。

暑いものは暑いのだ(笑)


「今、飲み物持ってくるからテキトーに寛いでて」


舞華はそう言うと店の奥の方へ行ってしまった。

リナは、とりあえず店の中にあった店員と客が契約の話をする際に使う業務用の机の椅子に座った。

なんだか、ようやく一息つけた感じがしてもう動きたくなかった。


舞華がやってくるまでの間、店の周りを見渡すとママチャリ、学生用自転車、マウンテンバイク、ロードバイク、原付バイクが並んでいて幅広く取り扱ってる感じだった。

原付バイクは時代の影響なのだろう、電動バイクの現行車でエンジンのバイクは一台もない。


「お待たせー!とりあえずコーラ持ってきたー!アタシはビールだけどね(笑)」


リナは、もうこの時間から酒を飲むのか!?と思ったが都会だと車やバイクがなくても最低限の移動の足は確保できるから問題ないのだろう。

リナは「いただきます」と言うとコーラを飲み始めた、軽い熱中症になった身体にコーラの強炭酸が良い意味で沁みた。


「それでー?今日はアタシに何か用でもあったの?まさか静岡からわざわざチャリを買いに来るとも思えないし…てか、君の名前は??」


舞華に名前を聞かれたので、リナは口に含んだコーラを飲むと名前を教えた。


「西園寺 リナと言います。父から舞華さんのことを聞いてきたんです。実は、私バイクの免許を取ろうと思ってて舞華さんなら教習所にコネのある知り合いがいるのではないかと思いまして…」


リナがそう言うと「え?リナちゃんのお父さんって名前は?」と父の名前を聞いてきたので、西園寺の姓ではわかりにくいと思ったのでリナは父の旧姓で「清水谷 孝太」と名乗った。


「あーー!リナちゃんってコウちゃんの娘さんだったんだー!うんうん、リナちゃんのお父さんのことはよく知ってるよ!家が近所だったし子供の頃はよく遊んだねぇ(笑)…確かコウちゃんは婿さんに入ったから苗字が変わったんだったね」


久々に聞いた名前に舞華は懐かしんでいた。

舞華とリナの父の孝太は、家が近所でよく遊んでいたらしい。

ちなみに孝太がバイクに乗っていたのも少なからず舞華に影響されているみたいで、子供の頃から運転が上手かった舞華が孝太に乗り方を教えたりする時もあったそうだ。

まさか、こんな形で幼馴染の娘が自分に会いに来るとは舞華も思いもしなかっただろう。


「それで…舞華さん?お知り合いの方に教習所の指導員をされてる方とかいますか?」


リナがそう聞くと、舞華は「いるにはいたんだけど、その人はもうやってないんだよなー」と申し訳なさそうに言った。

舞華は、何故教習所に通うのにコネのある人が必要なのか聞いてきたので、リナは現在の運転免許事情について詳しく話した。

流石の舞華もバイクの免許が、昔と変わってるなんて思わなかったらしく衝撃を受けていた。


「えぇ!?今って普通二輪で250ccまでしか無理なの!?しかも、650cc以下を新中型二輪って…車に限らずバイクまで細かくなったんだねぇ…しかも教習車が全国的にEVが導入されてギア車(クラッチ車)に乗れないってことか…」


舞華は10年程前に、高齢で大型バイクに乗るのを辞めた父からKAWASAKIの750SSを受け継いだ際に一発試験で旧普通二輪免許(400cc以下)を限定解除したらしく、現在は大型二輪免許の大自二が記載されている。

リナは舞華の後ろに乗って思ったが、あんなに上手い舞華でも独特な癖を見抜かれて一発で合格出来ず4回目で合格したらしい。


「リナちゃんは、どうしても乗ってみたいバイクでもあるの?」


舞華にそう聞かれて、リナはバイクにハマったきっかけについて話した。

幼少期に道に迷っていたときに助けてくれた女性ライダーのことや、それ以来バイクのことを調べながら小中学生時代を過ごしてきたことを話した。

そして、いざバイクの免許を取れる年齢になったら免許制度が改正されてしまい困っていることを…


「私を当時助けてくれた女性ライダーの人は、カタナに乗ってました、その人のバイクの後ろに乗って寄ったコンビニの駐車場に停まっていたKAWASAKIのZ2に子供ながらに一目惚れしたんです!だから将来的にはZ2に乗りたいんです」


リナが真面目な顔をしてそう言うと「いい趣味してるねぇ」と舞華はリナを応援してくれるようだった。

しかし、どうあがいても免許を取らないことには始まらない…

舞華は腕を組んで「うーん…」と考えると、こんなことを聞いてきた。


「ねぇ?リナちゃんって静岡の沼津なんだよね?もしかして沼津高等学校?」


舞華に通ってる高校名を聞かれたリナは「はい、そうです」と答えると、舞華は今年から赴任された若い女性の教師はいないか?と聞かれた。


「あーいますよ!東雲先生といって生徒からも人気の人です!」


リナがそう言うと、驚きの言葉が返ってきた。


「実は、アタシの甥の奥さんなんだ(笑)つまり…義理の姪になるのか」


リナは思わず「ええーー!!」と大きな声を出してしまった。

まさか、東雲先生が舞華とそういう関係だったとは…世間は狭すぎるとリナは思った。

じゃあ、リナが以前に東雲先生がライダースジャケットを着ている所を見たことがあったが…舞華がバイク乗りということは可能性がゼロではなくなったと思ったので舞華に聞いてきた。


「もしかして、東雲先生もバイク乗りだったりします?」


すると、舞華はスマホの写真フォルダからひと昔前の東雲先生のバイクに跨っている姿の写真を見せてもらった。

エイプ100に跨がる10代の時の東雲先生の貴重な一枚だった。

舞華が言うには、東雲先生も独身時代は相当なバイクテクニックを持っていたらしくエイプで膝擦りしながらコーナーを曲がるほどだったらしい。

今は、全くそんな感じの欠片も感じられないが…


「月曜日、学校に行ったら東雲先生に教習所について聞いてごらん?確か…アタシの記憶が正しければあの子の従姉妹の友人で教習指導員をしてる人がいたはずだよ」


舞華からさらに有力そうなことを聞けて、まだ神はリナを見捨ててはいなかった。

残念ながら舞華の知り合いは、指導員を既に辞めてしまっている感じなのでこれ以上は聞くのは無理だろうと思った。


ところで忘れていたが、リナは気になってることがもうひとつあった。

それは舞華の若々しい見た目の秘密だ(笑)


「話、変わるんですけど…ひとついいですか?どうして舞華さんってそんな若々しいんですか??(笑)うちのパパと同い年なんですよね?見た目を気にして若作りする人は普通にいますけど、舞華さんの場合は目元にシワもないし肌質が根本的に若いですよね」


リナの父・孝太が今年58歳になるので、同い年の舞華も58歳ということだが…

どう見ても舞華は20代前半、下手したら10代後半でも通りそうな見た目だ。

肌もハリがあって艶々していて、肌のケアを金をかけて本格的にやったとしてもここまで若さを保つのは絶対不可能だ。

舞華はコップに注がれたコーラを飲み干すと、トンっと音をたてながら空のコップを置いてこう言った。


「アタシ…遅老症なんだよねぇ、10年くらい前に病院で検査したときに判明してね」


舞華から驚きの言葉が出てきて「えっ…ち、ちろう?」とリナはどう返していいのかわからなくなった。

ウェルナー症候群の一種「早老症」という老化が一般の人より早い病気の事例はあるが、その逆の老化が一般の人より遅い病気は、ほとんど事例がない。

いつまでも若く見られるというのは、とても羨ましいことだが舞華の「遅老症」はちょっと特殊なものだった。

よく、SFなので遅老症で何百年と生きている人を題材にしたものや不老不死など沢山その手の作品は存在するが実際に舞華のように遅老症が現実になったような人は世界的に見ても稀らしく、担当した医師も大変驚いていたそうだ。


「前例がないからどうすることもできないし、アタシの場合58年間生きてきても特に身体に害はなかったから、このまま生きていくことになった訳よ。まぁ、遅老って言うだけあって老化が遅すぎてもう還暦間近になったというのに20歳そこらの見た目だし体力の衰えも感じないからアタシ的には最高なんだけどね(笑)」


舞華は特に気にしてる様子はなく、笑い話できるくらいの余裕があるようだ。

リナな「う、羨ましいぃぃ」と半分妬んでいるが(笑)


医者の調べによると10年前に体内を調べた際に心臓の動きが、当時48歳にしては若い人と変わらないらしいが…前例がない為に遅老症の人の平均寿命がおおよそでしか予想できなかったらしく、舞華の寿命は推定だが軽く100歳を超えて200歳近くまで生きるかもしれないと医者に言われたそうだ。

舞華的には、別にそこまでは生きたくないらしいが(笑)


「じゃあ、舞華さんの病気って本当に極めて稀な例なんですね…周りが歳を取って先に亡くなっちゃったとしても舞華さんだけは若いままってことか…」


リナは若いのは羨ましいが寿命が長すぎて自分だけ生き残ってても…それってどうなんだろうと思った。


「まぁ…どうあがいても仕方ないし、アタシはこの病気と付き合っていくよ。……よし、アタシの若い秘密は全て話したしこれで終了!…せっかくだし今日は、アタシの家に泊まっていきなよー」


どうやら舞華は、ここから少し離れたところに家があるらしく泊まらせてくれるようだ。

リナは本日の宿は、安く済ませるのにネットカフェと考えていたのでお言葉に甘えさせてもらうことにした。


今日はなんだか疲れた…


ただ、舞華がどんな家に住んでいるのか気になっていたから舞華の家で一晩過ごすのは楽しみだった。




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