第5話 いざ、東京へ
「リナ、忘れ物はないか?」
早朝5時にリナは父の車で沼津駅まで送ってもらった。
5時台の東海道本線熱海行に乗って東京へと向かう。
ちなみに我が家の車はEV車ではなくガソリンと電気のハイブリッド車だ。
「大丈夫、パパありがとね」
リナはそう言うと駅の改札の方へ歩いて行った。
自動券売機でTOICAを3000円分チャージすると、続けて東京までの切符を購入した。
普段、電車を利用しない人はなぜ電子マネーにチャージしたのにわざわざ切符を購入したのだろう?と思っただろう。
沼津はJR東海エリアになるので、沼津駅の改札でTOICAエリア情報を交通系ICカードに記録してしまうとJR東日本エリアのSUICA圏内の駅で下車するとなると管轄外と認識されてしまい改札を出ることが出来なくなってしまうのだ。
エリア跨ぎ又はエリアジャンプと呼ばれているのもので、万が一交通系ICカードでエリア跨ぎをしてしまったら基本的には駅員に言って精算してもらう仕組みになっている。
リナも以前にこのことを知らずにエリア跨ぎをしてしまって散々な思いをしたことがある(笑)
リナは改札を通ると熱海行の鈍行列車が来るのを待った。
この電車を待っている時間がなんとも長く感じると思う人も多いのではないだろうか?
1分は60秒だが電車が来るまであと10分あるので時間に余裕があるとなんだか長く感じてしまう。
まぁ、電車がギリギリでバタバタするよりはいいのだが…
リナはホームの椅子に座ってスマホでSNSのタイムラインを流し見している間に熱海行の鈍行列車がやってきた。
電車内は、まだ早朝ということもありガラガラだったので余裕で座ることができた。
まぁ、熱海まではたったの3駅程度なのだが…
電車のドアが閉まるとゆっくりと走り出した。
次は三島に停まるが、三島から東海道新幹線のこだま号が通っているがリナはわりと鈍行列車に揺られながら出掛けるのが好きだ。
あっという間に熱海に到着すると、品川行の東海道線に乗り換えた。
朝が早かったのと鈍行列車の心地良い速度が相まって、急に睡魔に襲われた。
「終点まで寝ようかな…」
リナはそう呟くと、ウトウトしながらそのまま眠り落ちた。
リナが眠っている間に、電車は藤沢駅まで来ていた。
するとリナが乗っている車両から怒鳴り声が聞こえてきてリナは目を覚ます。
「おい!ババア!ふざけんなよ!!!!」
突然、金髪の短髪をセットして日サロで焼いた感じの黒い肌にサングラスをかけた容易に想像できそうなDQNらしきチンピラの男性が高齢女性にリナのちょうど斜め右前で因縁をつけていた。
どうやら高齢女性が車両を移動しようと電車内を歩いている時に、電車がタイミング悪く揺れたのだろうか転んでしまい手に持っていたペットボトルのお茶のキャップが緩かったらしく、転んだ際にペットボトルのお茶がDQN男性の白スキニーにかかってしまい激怒してるようだった。
「これからデートがあるのにどうしてくれんだ!!クソがぁ!!!!」
DQN男性が高齢女性に罵声を浴びせると「す、すみません…」と震えた声で謝罪する高齢女性が恐怖で今にも泣き出しそうになっているが、周りの乗客達は見て見ぬふりだった。
このままでは高齢女性に危害が及びそうだったので、リナは席から立ち上がってDQN男性に詰め寄った。
「あのぉ、そんな大きな声を出されると迷惑なんですけど?それにわざとじゃないのにお茶がかかったくらいで何をそんなに怒鳴ってるんですか?」
リナの発言に周りの乗客達の顔色が一気に青ざめたのがわかった。
DQN男性は「あぁ!?」と言いながら立ち上がるとリナに因縁をつけてきた。
「なんだとこのクソガキがぁ!!関係ねーやつはすっこんでろや!女だからって容赦しねーぞ、ゴラァ!!」
DQN男性は怒鳴りつけてきたが、リナは一切顔色を変えなかった。
それどころかリナは、自分の頬を人差し指で私のことを殴ってみろとちょんちょんと挑発するとDQN男性はナメられたことに完全に怒りが爆発したようで「オカルト顔にしてやらああ!!」とリナの頬に殴りかかってきたが、リナはDQN男性のパンチをギリギリでかわすとカウンターでDQN男性のみぞおちに強烈な一発を食らわせてやった。
「ごふっ!……」と痛みと呼吸がしづらくなった苦しさで男性は腹を抑えながら膝から崩れた。
祖父に幼少期から空手で鍛えられてきたリナの一発は重く、相当なダメージだったのかDQN男性は未だに苦しそうで「うっ!」と突然口を手で抑えると胃の中の物がリバースしてきたのか口の中で溢れ出そうになっている。
「まだやる気ですか?」
リナは低めの声でDQN男性に言うと、リバースしてきたものをなんとか飲み込んだ男性は「す、すまん…俺が悪かった…」と謝罪した。
こんなことをしてるうちに電車は藤沢駅から次の大船駅へ到着するとDQN男性は逃げるように電車から降りて行った。
「おばあさん、大丈夫ですか?お怪我は?」
電車内で腰が抜けて立てずにいた高齢女性の身体を支えて立たせてあげたリナの手を両手で掴んだ高齢女性は、何度もお礼を言ってきた。
「ありがとう…ありがとう、お嬢ちゃん可愛らしいのに強いのねぇ。ほんと助かったわ…」
リナは、こんなに感謝されて少し照れくさかった。
先程まで見て見ぬふりしていた乗客達も「カッコ良かったよー」と拍手を送っている。
高齢女性は平塚に住んでいるらしく、今日は横浜に住んでいる息子夫婦の家に遊びに行くらしい。
高校3年生の孫がいるみたいで、既に卒業後の就職先が決まっているらしい。
今日は、そのお祝いも兼ねているんだとか?
道中の話し相手ができたおかげで、暇になることがなくあっという間に横浜駅まで着いた。
「それじゃあ、リナちゃん。東京では気をつけるんだよ」
高齢女性は自分の孫と歳が近いこともあって、リナのことをまるで本当の孫を心配するような感じで別れ際にそう言うと「ありがとうございます」とリナは笑顔で手を振った。
横浜駅を過ぎれば最初の目的地の品川駅まであと2駅で、約20分といったところだろう。
外の景色がだいぶ都会になってビルが増えてきたのを楽しんでいるうちに品川駅に到着した。
久しぶりの東京、リナは次の目的地である渋谷方面へと向かった。
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