第4話 父にダメ元で…

父が仕事から帰宅し、家族四人で晩飯を食べ終えて一段落したタイミングでリナは父に教習所にコネのある知り合いはいないか聞いてみた。


「ねぇ、パパ?知り合いに教習所にコネのある人っていたりする?私、バイクの免許を取りたいんだ」


リナが父に聞くと「えっ、バイクの免許!?」と急すぎる話に驚いていた。

リナの父も若い頃にバイクに乗っていたらしく、年齢を重ねるにつれて腰痛が酷くなりバイクに乗るのを辞めたのだという。

父は教習所なら地元でいいのでは?と言ってきたが、今の免許制度をわかっていない父は法改正があったことを知らないようだ…

リナは現状を父に説明すると、時代が変化したことを父は改めて考えさせられた。

特に父が驚いていたのは、原付二種の小型が廃止されて普通二輪が51~250ccとなり従来までは400ccまで乗れたのがNGになってしまったことだ。

父は、あまり意識して免許証を確認したことがなかったが改正後の免許証がどうなったのか確認してみた。


「ん!?なんだこの『中自二は排気量0.400ℓ以下に限る』って条件は…」


当然、父は法改正される遥か前に普通二輪免許を取得してるので既得権で上記の免許になっている。


「パパは普通二輪が400ccまで乗れた法律の時に取得したから既得権が認められるんだよ、つまり今まで通り400ccまでは乗れるってこと」


リナが説明すると「ほぉー」と理解したのかしてないのか怪しい感じだったが、リナの父が普通自動車の免許を取得したときは車両総重量が8t未満の車両を運転可能だった為、車の免許は『中型車は8tに限る』と条件書きされている。

つまり、昔は免許が今ほど細かくなく緩かったのだ。

若者からしたらずるい…と思うだろう。


父は、リナにバイクに関するコネのある人はいないか聞かれたことを思い出し、頭を掻きながら「うーん」と考えたあとに何かを思い出したこう言った。


「あっ、そういえば俺の地元の東京の幼馴染に女だけどバイク好きの子がいたわ。10年くらい前までは静岡にいたらしいけど、今は実家近くで自転車屋をやってるって地元にたまたま帰った時に会って言ってたなー」


父が言うには、その幼馴染の父が相当なバイク好きでプロ並のライディングテクニックを持ったイケイケの元走り屋らしく、その影響もあってか娘である幼馴染も中学あたりから無免許でバイクに乗るようになり峠などを走り込んでいたらしく、中学の頃から既に膝を擦りながらコーナーを曲がっていたそうだ。

2ストロークのバイクを好んで乗っていた親子で、自分の手足の一部感覚で操るほどのテクニックだったらしいので実力は本物だろう。

これは教習所のことを聞いてみたらその人の知り合いでコネのある人がいるかもしれないとリナは考えた。

幸いにも明日は土曜日で学校は休み、父は婿入り婚なので地元から沼津に来た形だが実家が東京の世田谷なので関東寄りの沼津からなら最悪各駅列車でも東京を日帰りできる。


「パパ!その自転車屋さんの店名と住所を教えて!明日、早速東京に行ってくる!」


娘の行動力と決断の早さに父は「おぉ…マジかよ、本気なんだな(笑)」と圧倒されていたが、父は住所と店名をスマホのメモ帳に書くとその画面をスクリーンショットしてリナのスマホに送ってくれた。


「ほんと、その突発的な行動力は誰に似たんだか(笑)」


母はため息つきながらも「明日は気をつけて行くのよ」と言ってくれた。

なんだかんだ娘を応援してくれてるようだ。


明日の朝は早い、リナは早めに就寝することにした。

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