7/28 「劇場版 モノノ怪 唐傘」感想



 TV版から実に17年の時を経て、ついに公開された新作「劇場版モノノ怪」!

 観てまいりました。


 とにかく、めっちゃくちゃ良かった!! 面白かった!!

 以下に感想を述べますので、ネタバレ回避して映画本編をご覧になりたい方はご注意ください!!



■構成について


 もともとのTV版「モノノ怪」が、30分番組2~3回で1つのストーリーが完結する構成だったことを思えば、90分の劇場版というのはほぼTV版と同じ尺。情念渦巻くヒトの世に、おぞましいあやかしが湧き出でて、その正体を主人公が暴いて斬る! という基本構成もそのままで、TV版と同じ感覚で見ることができました。


 江戸時代風の日本(どう考えても史実と辻褄が合わないのでたぶん異世界なんだけど)を舞台にしていながら、登場人物はみな現代風の価値観を持ち、それゆえに現代に通じる苦悩と情念を抱えている。

 パッと見では違和感を覚えるかもしれないこのスタイルを、圧倒的な映像美で強引に「納得」させる!! という、すさまじいまでの力技が心地よい。


 もともとTV版からこういう作風だったと思いますが、劇場版になって映像の凄味がさらに増していて、見ているこっちとしては「うわあ。なんか、うわあ」と、ひたすら翻弄されつづける90分でした。



■映像について


 いやもう……何をか言わんや。


 TV版の時点で、ちょっとびっくりするくらいの凄い映像だったんですが、劇場版ではこれがもう、極まってるというか……

 最初から最後まで全部かっこよかったです。それしか表現しようがない!!


 ともすれば「かわいい感じ」に描かれがちな唐傘オバケを、あんな恐ろしい怪異に仕立て上げたのも、お見事としか言いようがない。

 まさに圧巻でありました。



■ストーリーについて


 大奥の新人として入ってきた女性ふたり。

 ひとりは利発で仕事ができ、もうひとりは典型的な「ちゃんとできない」タイプ。

 前者は上から認められてトントン拍子に出世していくけど、後者はどんどん追い詰められて、あっというまにクビ寸前。


 面白いのは、このふたりのギャップを残酷なまでに描き、胸に「もやっ」と来るものを生じさせていながら、安直な嫉妬や怨憎の話には決して持ち込まない所だと思います。


 そうなんだよ。「あの子はできるのに私は」みたいな単純な嫉妬って、ありふれてるし、見てても別に面白くないんですよね。

 それよりも、『自分と相手を比べて敗北感を味わわされながら、一方で人間としては好きだし信頼もしてる。仲間意識もあるし、ひょっとしたら同性愛の感情さえあるかもしれない。だけどそういう情だけに流されちゃいられないでしょ、私たちは仕事やってるんだから!』……という、何層にも何層にも積み重なった情念を慎重に提示していくことで、ヒトの持つエゴを見事に描出している。


 それは大奥の嫌味な上司たちも同じ。

 そこにいるのは、全員が「仕事のために自分の大切なものを棄てざるを得なかった」女たち。

 社会システムの中で役目に邁進しながら、「有能な新人」の猛追に焦り、妬心に駆られ、生き残りのために神経をすり減らしている。


 誰ひとりとして明確な悪役が存在しない。そこにいるのは、「社会」というおそろしく巨大なモノの贄として人生を食いつぶされていく小さな人間ばかり。


 誰もが犠牲者……という言い方は、それはそれで安直だけど、「みんなが一生懸命生きてるこの世界こそが地獄だよね!」とでも言うような世界観は、なんとも胸に迫るものがありました。


 だからこそ、その中で生まれた謎の怪異「唐傘」を、ばっさりと斬って捨てるハイパー薬売りさんの「赦せ」の一言が、切ない。

(結局、あの唐傘って正体なんだったんだ? 単に北川殿が化けたわけではなさそう……女たちが「棄てた」モノの怨念なのかな? 唐傘といえば付喪神だし)



■そして


 物語完結後……画面に表示されたのは……


「第二章 火鼠へ続く」


 うっそおおおおおおおおお!? まじかよおおおおおおおおおお!!!!!! 劇場版でシリーズ化してくれるの!? うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!


 と思って、見終わった後にTwitterをチェックしてみたら……俺が映画見てる間に、まさに公式から「劇場版三部作」の告知が出てました! なんてタイムリーな!! すげえよ!! 来年3月の第二章、絶対観に行くよ!! やったぜ!!!

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