5/4 ゲームと教育について
先日、ゲームと教育についてTwitter(X)でつぶやいたら、なんかしらんがバズりました。
(3日で6293RT、5.3万いいね、1万ブックマーク、1443.5万表示)
自分の考えを後に残しておくためにも、ここに読みやすいかたちでまとめておこうと思います。
以下、基本的にTwitterからの転載です(細かい誤字脱字の修正や整形はしています)
■子供への「ゲーム禁止」について
ゲーム禁止について。
昔、中1の生徒の親と面談した時、
「うちの子がゲームばっかりして勉強しない。もうゲーム禁止しようと思うんですけど」
と言われたので、こう答えた。
「彼はゲームがやりたくて勉強サボってるんじゃなく、勉強がしたくなくてサボって、空いた時間でゲームしてるだけです。
だから、ゲーム禁止しても、他のことをやるか、何もしなくなるだけで、勉強時間は増えませんよ。
ここはひとつ、ノルマ制にしたらどうですか?
その日やるべき勉強をまずやる。やりきったらその後はゲームやり放題、というルールにするんです。
ノルマについては、学校と塾の宿題をこなすのは当然として、プラスアルファを設定するなら、「この問題集を1日何ページ」みたいにしてください。
絶対に「1日1時間」とか時間で設定してはいけません。それだとダラダラ時間潰すようになるだけです。
そして肝心なことは、このルールを本人と話し合って合意し、お母様も必ず守ってください。
つまり、やるべきことを済ませているなら、ゲームやることに文句をつけてはいけません。
そうすれば、彼は早くゲームがやりたくて、勉強を効率よくこなすようになりますよ」
で、面談の後、ちょうどその日に子供の方と顔を合わせる機会があったので、
「これこれこういう話をお母さんとしたから、家帰ったらルールについて話し合ってみな。こういう方式のほうが良くない?」
すると生徒は
「最高です! あざます!!」
その後、その子はバリバリ課題をこなすようになり、成績は急上昇した。
元々やる気がないだけで頭は良くて要領もいい子だったから、きっとこの方針でうまくいくと思ったんだ。
俺は母親からも生徒本人からも感謝された。あの提案によって、彼が有意義な中学時代を送れたなら良かったな! と思う。
あとタネ明かしをすると、事前にその子本人と話して、
「うちのお母さんは、宿題が済んだら次はこれ、それが済んだら次はこれ、って延々勉強を追加してくるから、やる気にならない」
って愚痴を聞いていたのだった。
後出し追加は人のやる気を失わせる最も効率的な方法のひとつだな!!
■バズりはじめて怖くなる
なんか、たくさんRTされだして怖いので、念のために補足します。
このツリーにある手法は「絶対うまくいく」類のものじゃないです。
僕はその生徒の性格と素質を知ってて、この方法でならやる気を出せるタイプだと判断したから提案した。
教育の正解は子供一人一人に合わせて千差万別と含みおきください。
どうもこの、少し自分のツイートが広まりだすと、意図せぬ読み方をされるのが恐ろしくて、何重にも予防線を張ってしまう、これが俺の小心なところだな……
こわがりなんすよ……特に教育に関しては、「ネットで見た方法を無批判に我が子に適用する」みたいなのがいちばん恐ろしい行為だから……。
■調子に乗って自作の宣伝をぶらさげる
僕が教育をテーマにして書いた小説がコレです!!
ツイートより面白いと思います!!
「俺の脳ミソを喰って行け」
https://kakuyomu.jp/works/16817330647877161380/episodes/16817330647877184617
(このツイート経由で、3日間で実に8500PV増加!
フォロワー数も急増して111人!
レビュー★は、一気に28人もの方が入れてくれて、★129!
なんと、10年書いてきたメイン長編「勇者の後始末人」を3日で超えてしまった!
なんかちょっと複雑……! でもうれしい! みなさんありがとう!)
■引用やリプライへの反応を追記
この一連のツイートが多くの方に読まれ、その中に、いくつも気になる引用がありました。
明確な誤読もあります。念のために、以下にそれらへの回答を追記しておきます。
(1)「『ゲームやりたくない』なら、ゲームを報酬にできるわけない」
僕は『ゲームやりたくない』とは言ってません。
「ゲームやりたくて勉強サボってるわけじゃない」です。
ゲームは、やりたいんですよ。
ここで問題にしてるのは「勉強しない理由」です。
ゲームが理由でサボるのではなく、勉強が嫌でサボってる、と指摘したのです。
さらにこれは、この子の場合はそうだった、という個別具体的な実例の話です。
中には「とにかくゲームが好きすぎて熱中するあまり他のことを何もしなくなる」タイプの子もいます。そんな子には、この対処法では効果が薄いかもしれません。
何度も繰り返しますが、教育は常にケースバイケースなのです。
(2)「この親が最悪」
いいえ。
むしろ、この親御さんは極めて好意的で理解が早く、しかも我が子との約束をきちんと守る誠実さのある方でした。
その方の目的はひとえに「我が子に勉強させること」で、子の成績に危機感を持っていたのです。
それはそうでしょう。中1の教科書レベルでつまづけば、その後にどんな人生が待っているか……幸不幸の基準は人それぞれとはいえ、我が子の将来を不安に思う母心は否定されるべきものではありません。
ただ、他の方法を知らなかったために強権的な禁止案を思いついただけなのです。そんな時に適切な選択肢を提示することこそ、教育業界の責務と思います。
(3)「この方法ではうまくいかないんじゃないの?/いかなかった」
はい。
前にも注をつけましたが、あくまでこれは一つの手法です。生徒の性格・能力をかんがみて、上手くいくと見積もれたから提案したことです。
人によっては上手くいかないでしょう。
肝心なのは子供をよく見ること。子供の声に耳を傾けること。そして、よりよいやりかたを不断に模索すること。目的、課題、評価を明確にすること。
万人に通用する完璧な正解は、教育については存在しません……少なくとも、今はまだ。
(4)「もともと賢かったからでしょ。バカはどうすりゃいいの?」「要領が悪いタイプは?」
これは、とても難しい問題です。
僕は生徒の評価を、「頭の良さ」「要領の良さ」「やる気」などに分類して捉えています。
このうち「頭の良さ」にも、記憶力、理解力、表現力、応用力、論理的思考力……など様々な要素が含まれます。
また、それがある科目では発揮されるのに、別の科目では全然ダメ、という偏りがあることもしばしばです。
なので、それらを総合してざっくりと「勉強すればちゃんと頭に入る」力のことを「頭の良さ」と呼んでいるとお含みおきください。
・タイプ1「頭は良いし要領も良いが、やる気がない」
このツリーで紹介した事例がこれです。今回述べた手法が有効な一手になるかと思います。
このタイプは、「勉強しなきゃヤバい」と自覚がある子も多いので、適切な課題設定をして、成功報酬を与えれば、それだけで改善したりします。
・タイプ2「やる気はあるし要領も良いが、頭だけ良くない」
このタイプは危険なことが多いです。
要領の良さを発揮して、目の前の課題をザザーッとこなすだけで終わってしまい、翌日には何も覚えてない、ということが多い。
対処は、とにかく論理的思考力を養成すること。
具体的には、
「文意を読み取り、誤読・読み飛ばし・勝手な解釈をしない」
「対応の選択肢を列挙する」
「選択肢をひとつひとつ試す」
という思考の流れを、まずゆっくり正確に、やがては素早く、やれるように訓練することです。
これは大半の保護者には難しい指導だと思います。よい先生に出会えるといいのですが……。
・タイプ3「やる気はある、頭も良い。だが要領が悪い」
見ていてかわいそうになるタイプです。
こういう子はたいてい素晴らしくマジメなので、学校から出された宿題を、長い長い時間をかけて深夜まで取り組んでいたりします。
なのに成績は上がらない。
こういう子には、適切に要約できる教師の指導が有効です。
教科書から話を膨らませるというより、逆に情報をあえて絞って、大事なところだけ優先的に学ばせる。
そうしてその分野の幹の部分を把握してから、ゆっくりと枝葉へ学習を進めていく。
つまり、本人の要領の悪さをアウトソーシングで補う形。
問題は、どこが大事で、どこは削ってもよいか、という判断が非常に繊細で難しいということです。
その教科に詳しい教師・講師でなければできないことだろうと思います。これもまた、よい導き手をお探しになるのが一番だと思います。
以上、3要素のうち1つが欠けている子について見てきましたが、2つ以上欠けている場合は、より話が難しくなります。
ここから先は本当に分類できない、完全に個人個人に合わせてできることからやっていくしかない領域に入るかと思います。
(5)「興味を持たせて自発的に勉強するよう教育しないとダメ。ノルマとか鼻で笑う。中学になったらもう手遅れだ」
どうぞ、ご自分のお子さんに、その素晴らしい教育をなさってください。
自ら興味を持ち勉強していけたなら、もちろんそれが最良ですから。
ですが、もしご自分に十分な分別と想像力があるとお考えなら、ぜひ、子供の性格能力が千差万別である現実にも目を向けてみてください。
どんなに例を示しても、筋道立てて説いても、どうしても勉強に興味を持てない子はたくさんいる。
興味はあるけれど、なまけ心に勝つことはできない子もいる。
そんな子にも入試は平等に迫ってくるし、成績によって将来の選択肢も左右されてしまう。
その現実の中で「手遅れ」になってしまう子はごまんといる。
ですが、手遅れなら手遅れで、そのことは認めてしまい、そこからどうするか? 何を変えるか? それを子供は自分の人生の問題として考えねばならないし、大人はそれを支え、助けてやらねばならない。
教育とは、そうした戦いの連鎖です。
谷に落ちたら、そこから歩き始めるしかない……それが人生です。
*
以上! これでまとめを終わります。
上のツイートのなかでも繰り返し言っていますが、教育に絶対の正解はありません。
なぜなら、人間という生き物は、素質も、性格も、興味関心の対象も、育ってきた環境も、出会ってきた教師の質も、あまりにも人それぞれ違いすぎているからです。
僕の職場での苦悩から生まれたノウハウのひとつが、これを読んでいる皆さんの実際の子育て・教育に、少しでも役立てばうれしい……と思いますが、「この方法がいいんだ!」と思い込むことは、絶対に避けていただきたいと思います。
僕自身、これまでに仕事で数千人の生徒と関わってきて、うまく軌道に乗せられたこともあれば、どうしてもうまくかなかったこともある。そのたびに考え、調べ、いろんな方法を試してきました。
世の親御さんの大半は、ご自分のお子さんの将来を心配しておられるでしょう。そのご苦労は想像するにあまりある。
そこで、ひとつだけ、「これは絶対に有効だ!」と思う手法を紹介します。(……なんか言うことがいきなり矛盾してますが)
それは……
子供に、信頼されてください!
この仕事を長く続けてきて、ひしひしと感じるのは、「子供は、信頼していない大人の言うことなんか、絶対に聞かない」ということです。
同じことを教えていても、信頼を得ていない状態でする授業は、ちっとも効果がない。信頼を得なければ、課した宿題だってマジメにやらない。どんなアドバイスも意味をなしてくれない。
だから僕は、新しい生徒に対するときは、必ず最初に、信頼してもらう努力をします。
「この先生は理不尽に怒ったりしない」
「この先生は約束を守る」
「この先生は、ちゃんと子供の意見を聞いてくれる」
「この先生は、僕の味方だ!」
そう思ってもらうことが、どんな指導にも先駆けて大切。
……まあ、こんなことは、実際に子育てをがんばっている親御さん方には「釈迦に説法」てなものかもしれませんが……
意外に多いんですよ。生徒と面談したり雑談してると、「ウチの親はすぐ約束をやぶる」とか「機嫌しだいで急に怒りだす」とか、つらそうに愚痴ってくる生徒が……
そうなってしまえば、もう泥沼です。親からの善意のアドバイスも、子供から見れば単なる干渉、邪魔くさいだけ……という、最悪の状態になってしまうことでしょう。
大人同士の関係でも同じですけどね。
信頼は大事!
以上で僕の考えの開陳を終わります。どうか、みなさんの子育て・教育が、うまく運んでいきますように!
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