25.「ディスイリュージョン」-6
「それは、一応知っているつもりなのですが」
「いいえ。ベルナ嬢が認知している事実は恐らく、極めて限定的な物かと。ファデラビムの現実と言うのは、規模が違います」
「劇烈に治安が悪い、という認識では不十分と」
「そうですね。例を挙げますと、あちらをご覧ください」
一番近くにいる少女二人の雇われ労働者を掌で指し示し、ベルナに観察するよう促すグレゴリア。
特徴的な二人であった。簡単に言うと、腰以下に脚はなく、上半身の長さの三倍はあるであろう蛇の躯体が付いている。
「あの二人の種族は見て取れますか?」
「えっと。鱗と蛇のような尾からして
「髪が赤い方は
「えっ。違う種族なんですか?非常に似ているように見えますが」
「ええ。女性しか存在しない
「あ、確かに。赤い髪の方は
「
「そんなに?何故ですか?」
普通に和気藹々と協力しながら農作業をしている二人の蛇少女を見て、ベルナは驚愕の声を上げる。
「寝取るからだ。
「ネトっ……?!」
横からなんら躊躇いなくそんなワードを吐き出すロザリアスにベルナは視線を向ける。
「えっと。
「違うんだ。基本的に既婚者の男性『だけ』狙うんだ、
「性質悪いなっ!」
あまりに大きな声を出したせいで、蛇少女達がちらちらとこちらを伺うのが見えて、ベルナは自分の口を両手で塞いた。
「グイドニス様が今思っている疑問は理解している。何故既婚者限定なのか。それは、一定以上の期間、つがいを持つ
「……趣味趣向の問題とは言わないでしょうね?」
「俺が部長を勤める部にも
「滅んでしまえそんな種族っ!」
つい強めのツッコミを入れるベルナであった。
「『童貞が許されるのは四次脱皮までだよネェ。うち、敗北者のフェロモンに触れたくないんだよネェ』とも言っていたな」
「何なんですか、
呼吸を荒くするベルナを宥め、グレゴリアは説明を続ける。
「生物学的に説明すると、
世にも奇妙な種族もあったものだ。
「……要は女性らしい顔と体つきをしていますが、男性の器官を残した
「ええ。
「か弱いと言われがちな
呆れ果てた目で赤髪の蛇少女を見ながら、ベルナは自分が
「ビナー様は激しく乞われて、
「何をしているのですか、《
《
「ベルナ嬢。少しコミカルな切り口から入りましたが、私の言いたい事は、既にあなたが先ほど口にしております」
「私が?」
眉を吊り上げ、疑問に思っていたベルナにグレゴリアは結論を提示した。
「『
「あっ」
流石にベルナも、グレゴリアの言いたい事が分かった。
話の流れの中でさえも、一聞き手でしかないベルナにツッコミとしてそんな言葉を使うぐらいの所業を、種族単位で延々とやられるとどうなるのか。
お互い知恵種族な分、血みどろな戦争をいくつもしてきたに違いない。
もう一度、農作業を協力しながら行っている少女二人に視線を投じると、そのありふれた日常的な風景がいかに奇跡的な物なのかが分かる。
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