【仮】戦え!!ボクらの煩悩wars ~風葬の地、京都編~
ヨシムら マヒと
第1話\嘘がつける日の謎…。
中国語では、「遇人節」日本語に訳すと「四月馬鹿」。イギリスでは、嘘をつけるのは午前中までの期間。色々呼び名こそあるが、そもそもエイプリルフールの起源は、無いのである――。
―【四月一日】―
珍しく沢山の花雲が、下校時に空いっぱいに良く見えていたのを覚えている。少女の家は、ポツンと二軒の内の一軒家。ここの子供部屋でこの物語は、始まった。突然、ガラスの格子扉が横にいきなり「すっ」と開く。そして、ある大人の手が突如、その少女の顔に向けて奇妙に伸び出して来た。その少女は、「びくっ」とした。何故ならそれは、ババ抜きみたいにその大人は、少女にだけ何冊かをマジック見たいにトランプ風に並べて、見せてきたのだ。まさか、並べた内の一つだけ、その少女に向けて一つ上に飛び出ている。その意味は、あたかもジョーカー札であるかの様に騙そうとその少女は見てとれた。その少女と兄妹や親戚の子供たちは、不思議そうに皆でその本を眺める。そして、そんな飛び出た一つを小さな五本指で「ぱっ」とその少女は、取った。その本の名は、何と
『ト術(ぼくじゅつ)~』。
そんな中、向かいの大広間ではその少女の父親が、お昼前に、親戚達に攻め立てられている。それは、たまにしか帰って来ない父親の滞在中に母親が突如、親戚の大人達を集めて謀反を起こす事である。しかも、その原因が父親の二号店目「for YOU」って屋号のスナックだとはその時、誰も知る由もなかった。 皆がざわざわし出したのを見て、読んでいた『ト術―』の本を、直ぐ閉じる。
「あれっ、まっいいか――。 でも……」
その少女は、直ぐに新品の赤いランドセルにその本をしまい込む。その時、担いだ赤いピカピカのランドセルは、その少女には重たく感じ、そのランドセルが軽く感じるまで長い時間が掛かる事になる訳だが……。でも、今日は、エイプリルフール――。
「冗談 冗談」ってその少女は、自分に言い聞かせていた。ふと、実家の庭を見ると梅の花に止まっていたいつも仲の良い二羽のメジロがお互い違う方向に飛んでいく。その二羽の行く末を見ていた少女の名前は、主人公の杏の南で「アンナ」。まだ、七歳の小学生一年生だ。一つ上の姉は、蓮の花と書いて「レンカ」。二つ下の弟は、志すの季節と書いて、「シキ」である。「人」と言う字は、我々がそれに属し、最も高等な動物の一類。知能が高く、言語を有し、社会生活を営む。『ト術(ぼくじゅつ)~』に書いてあったが、これから父親と杏南たちは、属さなくなったのだ。若くして寿司屋の大将となり二十五歳で寿司屋を開店して二店舗目にスナックを出すとは…。しかも、その外観は、電気装飾で目がチカチカして、その名もスナック「for YOU」。送迎車用の新車のバンは、もっとチカチカチカしていた。その離婚の理由とは、借金があるのにまた、借金をして二店舗目を出したからだと。母親は、父親に言い放った。でも、何を納得したのか父親は、その離婚届けに渋々と判子を押す。判子を押して後悔した父親は、2号店目のスナック送迎用の車に杏南たちをそのまま押し込み、どこかへ走り出す。何も知らされていない杏南たちは、分けも解らず個人タクシーや自転車、歩行者に何度も見返えされ、何故か後ろ指を指される。
そして、スピード狂の父親は、さながらF1ドライバーのサイド・バイ・サイドを繰り返すから、F1を知らない人でも新車のバンと並ぶと向こうでクスクス、違う所でもクスクスを代わりに繰り返えされる。どうやら、運転している父親でも無さそうだが――。遂に、誰かが指さして何かを叫ぶ。
「○・○・○――」
新車のバンの側面は、反対にプリントされていたので「for YOU」が逆になる。その名のとおり未確認飛行物体とは正体が確認されていない飛行物体。一九四七年にアメリカの実業家ケネス・アーノルドがワシントン州レーニア山近くを飛行する円形状物体を目撃したのが始まり、「YOU for」その物だ。まるで、それを乗りこなす父親を知性を持った地球外生命として、ゆび指していたのだ。杏南は、何だか急に恥ずかしさと寂しさが入り交じり、空を見上げると一面霧がかった雲が桂小橋と杏南たちを覆った。その覆った先に見えたのは、日本最古の回遊式庭園として知られ、庭園と建物が一体となっていた桂離宮とそれは言う。急な出来事で杏南は、身体があちらこちらにむず痒さが広がり、右手には、本当にその庭と建物が見えた。
隣町は、次の日が入学式。梅の香りに誘われるように入場する杏南は、嫌々歩き。あたかも小さな宇宙人になって上級生に手を引っ張られる。あのスナック「for YOU」のせいで杏南たちと母親が離れ離れになってしまったのだ。あの新車のバンさえなかったら母親とも分かれずに済んだのに「for YOU」。
あなたの為って、その馬鹿馬鹿しい店名に毎日腹が立っていた。入場行進で杏南に上級生の六年生は、手を繋ぎながら「どうしたの? 」って聞いてきたので「UF0に連れ去られたの――」って杏南は、苦虫を噛みながらタメ息を吹かす。
「はぁ――っ」
『エイプリルフールは、もう終わったよ――』
「うん。知ってる」
『今日は、何の日か知ってる?』
「入学式」
『違うよ――』
「じゃ、宇宙人馬鹿の日」※踊って見せる。
『それ、何かのモノマネ?』
今日は、『人魚姫』で知られるデンマークの童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンが生まれた日だよ。それにちなんで、この日は『国際子ども本の日』とされ、国際児童図書評議会加盟の日本は、さまざまなイベントがあるんだ――って言われる始末。
「国際子ども本の日」。四月二日は杏南が生きている限り、知りたくもなかったが忘れもしない。
話を戻そう。当時は、演歌歌手絶世期時代。どこもかしこも演歌が流れ、ポップソング等は、まだ先の先だ。転校初日の挨拶で黒板に名前を書かれた杏南は、名前を見られて全員に笑われた。「アハハハっ」って事は、一つ上の姉も漏れ無く笑われているに違いない。そんな日は、決まって学校終わりに姉弟三人で毎日ある所に集まる。そこは、山里離れた京都芸大近くの神社に母親と再会できます様にと毎日祈っていた。
――ジャラジャラジャラ――
――パン――パン!
杏南たちは、転校して心が晴れる事は一度も無かったが、決まって父親の寿司屋近くの水路に隠れて店名「すし嘉」のマッチをくすねては、姉の蓮歌がやっていた「苦虫燃やし」をして一緒に遊んでいた。ある日、杏南たちは、水路から苦虫を追っかけて藤の花が咲いていた広い田んぼの一角まで来ていた。すると、燃えカスが少しずつ大きな炎に変わる。杏南より背の低い姉は、怖くなって杏南の後につく。そして、徐々に田んぼが燃えて行った。焦った杏南たちは、近くに古池があることも知らずに父親の店に水を汲みに行くが、パニックなので瓶ビールの小瓶グラスを幾つも持って、何回も往復し息が上がる。
―ジャ―ジャ―
「早く――っ、早く――」
「お姉ちゃん――。 見てよ…、あっ」
「火事だ――」
「どうしたんや!」
たまたま、個人タクシーの運転主が偶然駆けつけてくれた。「ポイ捨てで、燃えてる」と姉の蓮歌が杏南の後ろから、気転をきかせてくれた。すると、その運転手はネクタイを鉢巻き代わりにして、さながら火消しの「め組」だ。
「よし!」
「お願いします――」
「わかった!!」
と言いながら運転手さんは、背広もひっくり返し消そうとして、煽れば煽れるほど、燃える。また、消そうと、煽る。結局、田んぼは全焼。そして、燃えカスの田んぼを皆で、呆然と見ていた――。
「全部燃えちまったな」
「そうですね」
「ふ――っ。 そう言えば最近――」
「UFO見たいな車、見たことあるか――?」※タバコを吹かす、タクシー運転手
「いゃ―
― それは、未確認です――」
例え話で子供には、罪が無いと言うが、小学生二年生と小学生一年の少女たちは、別の意味で無邪気に遊んでいた。そして、父親からは、近くに置いてあった『ト術~』の本で頭をポンポンと優しく叩かれただけだった。二つ下の志季は、その現場に居なかったので、杏南たちが学校に行っている間は、読み書き出来るように『ト術~』を杏南は、保育園に行かせて貰えなかった志季に渡してあげた。
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