第7話 いるのかいらないのか、プロット7~セットアップ

 ようこそ第7回目へ

 10分運動がこなせるようになった作者です。


 前回はオープニング・イメージとテーマの提示について書きました。

 今回は「セットアップ」についてです。


1・オープニング・イメージ(1)


2・テーマの提示(5)


3・セットアップ(5)


 の割合なのですが、セットアップは一言で言うと伏線です。


 オープニング・イメージでインパクトのある出だし、世界観。

 テーマの提示は「俺の小説はこういう世界で、こういうことを目的に始めるんだぜ!」

 という読者へのアピール。


「セットアップ」では


・登場人物が出揃う、もしくは今後、重要になる人を仄めかす。

・主人公に「欠けているもの」を主張する。


 この欠けているものがラストに補われているか?

 欠けているものを埋めていくのが小説の過程になるわけです。


 カリオストロの城なら、カーチェイスで爆盛り上がりして、観客を惹きつける。

 ルパンと次元とクラリスと敵が出揃う。

(*五右衛門はお約束なので例外ですが、冒頭、カジノからお金を盗んで逃げるとき、フィアットのなかに五右衛門いますよ。後部席に頭と斬鉄刀の棒がうっすら映っています 笑)


 欠けているものは「クラリス」


 敵に奪われたヒロインを取り返しに行く。

 これが小説を貫く伏線回収のテーマであり続ける。

 ルパンはどんな困難に遭おうとクラリスを取り返すために奮闘する。

 で、最後どうなりました?

 ちゃんと悪役の伯爵から取り返して自由にしますよね。

 伏線回収完了です。


 サマーウォーズなら、おばあちゃんに紹介。婚約者になってくれと頼まれる。

 なつきちゃんの設定する条件って、主人公にはないものばかりですよね。

 婚約者とするに欠けているものの羅列ばかりです。

 でも本当に重要なのは?


 なつきちゃんを含めた親類縁者からの「信頼」


 これが「欠けている」ものです。

 主人公は信頼を得るためにこれからを生きていく。

 最後は言わずもがな、信頼を得て身内扱いになっています。おばあちゃんも笑っている。


 進撃の巨人なら、避難する船の中で「自分が弱いから泣くしかないのか」と思い至る。


 欠けているものは「巨人と戦う力がない」


 そして決意する。


「巨人を一匹残らず駆逐する」


 物語はずっと「巨人と戦う力を行使して、巨人を駆逐する」


 というエレンの意思によって進んでいきます。ライナーやベルトルトが巨人だったことに傷ついても戦うことを諦めることはしない。

 泣きながらも「この裏切りもんがあぁぁ!」って戦う。

 ハンネスさんが言ってるじゃないですか。


「勝ってるところは、ついぞ見たことないが、負けるところも見たことはない」って。


【欠けているものがあるから、それをどう補って成長していくか?】


 読者はそれが読みたいんです。

 だから、物語に都合良く主人公を動かしちゃ駄目。


 言い換えれば、常に作者は困り続けなければならないのです。

 いうことを聞かない主人公がどうすれば納得してくれるのか、その答えをひたすら探し続ける。


 オープニング・イメージとテーマの提示と、セットアップは嵐の前の静けさで、(条件提示)ここから大嵐がやってくるぞ! になるのです。

 伏線って難しいことではなく、


【欠けているものが、最後にちゃんと満たせているか?】


 ができているかどうかです。


 あなたの小説の主人公は、欠けている課題を与えられて、それを最後にクリアしていますか?


 都合良く動かしていたら、やたら物わかりがよくて、困るけれども周囲が簡単に協力してくれる物語になっているでしょう。


 エレンが物分かりよくて、

「うん、じゃあみんなと一緒にこうしよう。ひとりでは無茶しないよ」

 ってキャラだったら、魅力ないでしょ。


「ひとりでも挑むし、戦うし、勝手に突っ走る」から周囲も困ったり悲しんだりする。


 忘れてはいけないことは、


1・人の信頼は一朝一夕では得られない。だから主人公は困る。


2・なにを言ったかではなく、「なにを成したか?」であること。

 それがキャラの成長。


 プレゼンしたら、実行して契約を結ぶまでがワンセンテンス。

 口だけで契約取れない営業の人を信じて協力する? って聞かれたら、たいていの人はNOと答えるでしょう。


 主人公は長い時間をかけて、理解者を得て、信頼を勝ち取っていくのです。

 他のキャラと読者の。


「この子に協力したい、助けたい、上手くいって欲しい」


 読者にそう思わせるのが作者のお仕事。

 なら「おまえはできてんのか?」という質問もあると思うので、自作で紹介していきます。



【大奥男色御伽草子 高藤あかねの胸算用~男色本で大奥の財政を立て直します】


・オープニング・イメージ


 女中部屋で軍記物を読みながら、男同士の絆に妄想を抱いている。

 いつか妄想を小説にするために出世して一人部屋を手に入れると誓う。


・テーマの提示


 大奥の実権を握る登場人物を出して、「金欠の大奥をどうする?」と会議。


・セットアップ


 男色小説が思わぬ形で外へ流出。誰が書いたのか犯人捜しが行われる。

 どうするの?

 欠けているものは「小説の作者だとバレていけないこと」


 ラストは?

 小説の作者だと名乗っているし、相棒もいるし、小説も書き続けられるし、金策も解決している。



【黄泉がえりの姫と青い将軍~青鬼の側室は蘇った娘】


・オープニング・イメージ


 葬式の途中で生き返ってしまう。


・テーマの提示


 生き返ったことで不吉な娘だと忌み嫌われたが、辛い時期を支えてくれた乳母を幸せにしたい一心で大奥入りを決意する。


・セットアップ


 将軍とはどんな人か? と不安。

 先輩、側室たち勢揃いで冷ややかな目で見られる。

 欠けているものは「居場所と上様の愛情」


ラストは?

 他の側室とも信頼関係を築き、大奥が帰る場所となって上様もそばにいて、乳母も幸せになっている。


 です。

 自作でこれらが短文で、ポンと書けるか試してみてください。

 書けなかったら、さぁ、前半からやり直そうぜ。

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