第7話 再びの勧誘
ダンジョンの中を進む僕たち。
奥からは続々とモンスターがやってきて、僕たちはそれと戦っていた。
「
魔法を発動すると、カレンさんの体に黄色いオーラが纏わりつき、速度が上がる。
カレンさんの足はただでさえ速い。魔法の効果で更に加速したカレンさんの速度は目にもとまらぬものになって、バッタバッタと現れるモンスターを倒してしまった。
「ふう、ひとまずこれで終わりか」
「あ、回復しますね。ちょっと待って下さい」
敵がいなくなった僕は、カレンさんの体力を回復する。
こまかな擦り傷もあるからそれもちゃんと塞いで……と。よし、これで元通りだ。
我ながらうまく出来たなと思いながら顔を上げると、カレンさんが至近距離で僕のことをじーっと見ていた。ど、どうしたんだろう?
「ウィル殿、やっぱり私と一緒に冒険者をやらないか?」
「え!?」
驚く僕の肩をカレンさんはガシッと両手で掴む。
に、逃げられなくなってしまった。
「やはり君の魔法は素晴らしい! かゆい所に手が届く気配り力も素晴らしい……! 今日ほど戦っていてやりやすいと感じた日はない。ぜひ私と一緒に今後も活動してくれないだろうか!」
「え、いや、あの。買いかぶりですよ。今日だってカレンさんとマーカスさんのお手伝いをしているだけで……」
「そんなことはない! 君は素晴らしい魔法使いだ。私が断言する」
僕が戸惑っていると、マーカスさんも近づいてくる。
「カレンの言う通りだ。まさかウィル坊がここまでやるとは思わなかった。今まで何人もの魔法使いと組んだことがある俺様だが、ウィル坊ほど凄えのは見たことがねえ」
マーカスさんにまで認められてしまった。
凄い冒険者さん二人に言われたんだから少しは喜んでもいい……のかな?
「あ、ありがとうございます。でも僕は今のところ冒険者になる予定はありません。すみません……」
「ああいいんだ、謝らないでくれ。ただ、少しでいいから考えて欲しいんだ」
カレンさんは真剣な目を向けながらそう言った。
僕が冒険者かあ。考えたことなかったや。みんないい人だし、知らないことを知れるのは楽しいと思う。
カレンさんに会う前だったら「絶対にイヤ」と言ってたかもしれないけど、今は「たまにならいいかな」くらいに思えるようになっていた。生粋の引きこもりの僕でも変わるんだなあ。
と、そんなことを考えながら先に進む。
すると洞窟の中が開けた空間になる。そこには小さな遺跡のようなものが立っていた。
「ここで終わり、なのかな?」
遺跡より先に道はなさそうだ。
ここがダンジョンの終着点と見てよさそうだね。
「てことはあの遺跡にお宝があるってこった。サクッと取って帰って宴と洒落込もうじゃねえか」
マーカスさんは足取り軽く遺跡に向かう。
ダンジョンは通常最奥部にお宝があって、それを取るとダンジョンは消えてしまうらしい。いったいなぜそうなるのかはまだ分かっていない。
ダンジョンの仕組みは色んな説があるけど、僕は「ダンジョン生き物説」を推している。ダンジョンはそれ自体が大きな生き物で、奥にお宝を設置することで人間をおびき寄せて食べているという説だ。
突飛な説に聞こえるかもしれないけど、これが本当なら色々な点に納得がいく。今度これもちゃんと検証してみたいな。
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