第16話 真夜中の攻防
「ここでいいかな……」
僕がやって来たのは帝都にある広場だった。
ここは普段市民の憩いの場として使われている所で、昼は子どもが遊んだりして賑わっている。
ただ今は夜。
僕以外に人はいなくてとても静かだ。
これならいけそうだね。
「この棒でいいかな」
近くに落ちてた手頃な棒で地面にある模様を描いていく。
ちなみに視線はまだ首の後ろに感じている。無事この広場までおびき寄せることが出来たみたいだ。
「これで……よしと」
地面に模様……魔法陣を描いた僕は、満足して頷く。
棒で地面に描いただけだから、ちゃんとした魔法陣より効果は薄くなっちゃうと思うけど、無いよりマシだ。
僕は地面にしゃがみ込んで、魔法陣に手を押し当てる。
そして魔力を流し込むと魔法陣が青い光を放ち始める。よし、これなら……
「結界魔法『
魔法を発動すると、僕のいる広場がドーム状の結界で包まれる。
この結界はかなりの硬度を持つ上に、中で起きていることが外から全く感知できなくなる。外にいる人からは僕の姿は見えず、普通の広場しか映らないんだ。
これなら中で何が起きても外からは分からない。
「……さあ、出てきてください。僕を倒さないとこの結界は解けませんよ」
暗闇に目を向けて言い放つ。
すると広場にある木の陰から、一人の人物が現れる。
黒いマントに身を包んだ、小柄の人物だ。
フードを被り、仮面もつけているので男性か女性かすらも分からない。体格から子どものようにも見えるけど、油断は禁物だ。
子どもでも強い魔法使いはたくさんいる。現に目の前の人の体から放たれる魔力はかなり高い。純粋な魔力量で言ったらエマよりも上だと思う。
「……貴方は何者ですか? なんで僕のことをつけていたのですか?」
そう尋ねると、仮面の人はゆっくり腕を上げて僕のことを指差す。
「それはこっちの台詞だ。お前こそ何者だ」
「……どういうことですか? 僕はただの一般人ですよ」
本当は皇子だけどそのことは黙ってていいだろう。
少なくとも教え手として活動している『ウィル』はただの一市民だ。こんな怪しい人に狙われる理由はないはずだけど。
「しらばっくれるか。だったら……」
仮面の人物は懐より小さな木の杖を取り出す。
実用性に特化した、飾りのない杖。その使い込まれ方から仮面の人物の高い技量が窺える。
「化けの皮を剥がすまでだ!
いくつもの氷の針が空中に生まれ、僕めがけて降り注ぐ。
その一つ一つは僕よりずっと大きい。あんなものが当たったら体に大きな穴が空いてしまう。
「わわっ!」
僕は
すると仮面の人物は更に魔法を発動させる。
「
地面に生まれた氷塊の形が変わり、大きなゴーレムが誕生する。
そのゴーレムは巨体に見合わない速さで僕に接近してくると、その大きな拳を僕に叩きつけてくる。
「ひいっ」
とっさに僕は『
するとゴーレムの拳は僕のバリアにガン! と大きな音を立てて激突する。これくらいならなんとか防ぎきれるかな……?
「ゴーレムよ! そのバリアを壊すのだ!」
仮面の人物が命令をすると、ゴーレムは何度も何度もバリアを殴りつけてくる。
ぶつかる度にガン! と音が鳴るので耳が痛い。それに拳は毎回目の前まで迫ってくるので心臓にも悪い。
いくらでも受け止められる気はするけど、この状態がずっと続くのは避けたい。だったら……
「――――黒魔法、黒星」
手の平に黒い球体を出現させる。
それは五つの属性を内包する、魔法の一つの完成形。触れた物は全て消失する力を持っている。
危険だから人相手には使えないけど、ゴーレムなら話は別だ。
「
僕がそう言うと、球体の形がうにょうにょと変化し、そして一振りの剣の形になる。
真っ黒い刀身に艶はなく、見ていると吸い込まれそうな不思議な魅力がある。
僕はその剣に……命令を出す。
「――――いけ」
黒剣は僕の命に従いものすごい勢いで射出される。
そして攻撃を続けているゴーレムの肩、胴体、足、そして首を一瞬にして切断してしまうのだった。
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