第5話 文具検定は苦手だけど

 「検定やるなら席を移動させないと。さあ、岡崎と大平はこっち側に移動して。」


 間仁田の仕切りは止まらない。岡崎と大平は居酒屋一角のテーブルの向こう側に横に並んで座らされた。テーブルの反対側には間仁田と内野が座った。そして、テーブルの横にブッコローが座る。


「では、これからブッコロー検定を開始します。」


 とブッコローが宣言した。いつの間にか岡崎と大平の前には、キュリアスIRという紙の束と、ゼブラのサラサグランドというペンが置かれていた。


「こんな高級な紙とペンどうしたの?高かったでしょ。」


 と岡崎が間仁田に聞くと、


「メーカーからもらったサンプルを持ってきた。」


 という話だった。そのあたり間仁田は要領がいい。


「さあ、始めるよ。まず、第一問。」


 とブッコローが叫ぶ。


「ブッコローの誕生日はいつでしょう?」

「知らないなー。」


 大平が早々にぼやく。


「私も。」


 岡崎も知らなかった。


「知らなくても適当に書けよ。はい、ふたりとも書けたかな。じゃあ、回答を出して。」

「1月1日。」


 と大平が出すと、


「4月4日。」


 と岡崎も出した。


「正解は、6月30日でした。ふたりとも外れ。」


 ブッコローがふてくされたように言う。


「ふたりともドンマイ。」


 間仁田が声を掛ける。


「さあ、第二問。」


 とブッコローが叫ぶ。


「ブッコローは何という種類の鳥でしょう?」

「何だっけー。」


 と岡崎が天を仰ぐと、


「聞いた気がするけど忘れた。」


 と大平が頭をかかえる。


「はい、時間切れ。回答を出して。」


 ブッコローが二人をせかす。


「ふくろう。」


 と岡崎。


「コンドル。」


 と大平。


「正解は、ミミズクでした。ふたりとも外れ。そもそもコンドルって全然別の鳥だから。」


 とブッコローがあきれて言う。


「ミミズクとふくろうって違うの?」


 と内野が間仁田に尋ねると、


「知らない。同じじゃないの?」


 と間仁田が答えた。早くも会場の空気はぐだぐだになりつつあった。


「さあ、最終問題。今のところ、同点。というかふたりとも0点。」


 とブッコローが叫ぶ。


「ブッコローが好きな文房具は何でしょう?」

「文房具問題か。でも知らないなー。」


 と大平がぼやくと、


「これ、私、知ってるかも。」


 と岡崎が目を輝かせる。


「はい、出して。」


 とブッコローに催促されて大平は回答を出しながら、叫ぶ。


「これで勝負だ。ローズおりがみ!」


 岡崎も叫ぶ。


「三代目 直記ペン!」


 ブッコローはふたりの回答を見て、にやり、と笑った。そして、


「正解は、三代目 直記ペンでした。ザキさん、正解。優勝は、ザキさん。」

「やった!」


 岡崎は喜びを隠しきれない。一方、大平は、


「ローズおりがみ、私好きなんだけどなあ。しょうがない、ブッコローは、ザキさんに譲るよ。お幸せに。」


 と言って祝福するのだった。

 岡崎は、こう心の中でつぶやいた。「私は三代目 直記ペンの良さがいまひとつわからないけど、結果オーライ。」

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