四節 夏休み

 夏休みの何日かは、今年もまたかさと過ごしていた。

 お互い特に変化はなく、迫る受験に備えてひたすら勉強をした。目の前で勉強を頑張るかさにあてられて、僕も勉強に身が入る。

 ふと英語の問題集のなかにあった、大学という単語が目に入る。


「そういやかさって、国公立は受けないの?」

「うん。国公立で行きたいところもないし、あと受験科目も増えるし。まこは大学決めたの?」

「まだ。なんかもう、国公立ならもうどこでもいいかなって。滑り止めも、まあそこら辺のところにすると思う」

「へえー。オープンキャンパスとかは行った?」

「行ってない」


 この前小林君に一緒に行こうと誘われたが、あまり興味が湧かなくて断ってしまった。


「まあ、まこがそれでいいならいいけど」

「僕はどこでもいいよ。とりあえず就職したくないから進学するだけだし」

「やっぱりまこもそういう感じか。就職に関しては、僕も似たようなものだわ」

「みんなこんなものでしょ。結局大学なんて偏差値しか見てないよ」


「まあ、僕は京都に住みたいってだけだしね。でもだからこそ、できる限りはいいところ行かないと」

「そうだね」


 僕たちにとって大学は口実でしかない。働くことが嫌だったり、やりたいことが見つけられていなかったり、そのための猶予としての時間が欲しいだけだ。

 その時間を得るためだけに、僕たちは勉強をしている。

 だけどその猶予を得るためには、僕はもう少し頑張る必要がある。




――――登場人物――――

玉木悠太たまきゆうた 僕

 中学時代はバレーボール部。

 父親と兄との三人暮らし。


永野司ながのつかさ かさ

 小学校からの付き合い。

 僕をまこと呼ぶ。

 京都に住むために勉強をしているらしい。


前川倖成まえかわこうせい 倖成くん

 中学時代は、僕と同じくバレーボール部。

 二年間クラスも同じでよく話をした。

 僕をまこと呼ぶ。

 高校でもバレーボール部に入った。


今井俊いまいしゅん 今井くん

 僕と似た空気を感じる。

 親戚の家で暮らしており、少しだけ僕と境遇が似ている。

 曜子という人ともめたらしい。

 一年生の文化祭のときに、曜子という人ともめた話を聞いた。

 それからは、距離が開いてしまった。


小林正樹こばやしまさき 小林くん

 昔やっていたゲームの話をした。気が合わないわけではない。

 勉強に打ち込んでおり、部活もしている。

 高校一年生のときは室長もしていた。


田原友貴たはらともき 友貴

 中学は同じだが、話したのは高校受験の日が初めて。

 部活をやっている。坊主頭。


森島もりしまさん

 今井君のことを教えてくれた人。

 冷静な人のようだが、意図はよくわからない。

 曜子という人の友人。


伊藤恵いとうめぐみ 伊藤さん

 吹奏楽部。フルートが上手らしい。

 わかりやすい感情表現をする。

 気さくな人でクラスの中心的存在。


江口えぐち先生

 高校一年生のときの担任。担当科目は国語。

 役者めいた話し方をする人。

 表面を繕って核を守る振舞いが、僕に少し似ている。


中川なかがわ先生

 高校二年生のときの担任。担当科目は国語。

 やさしい笑顔が特徴。

 いろいろと見抜かれている気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る