二節 部活

 先生のくだらない提案や話を聞いて過ごす毎日に、僕を含め、クラスのみんなは段々と新しい環境に慣れていった。そうして授業も始まり、何人か高校からの友人もできた。

 

 授業や休み時間はもちろん、身体測定や体力測定などで話す機会もあったため、自然といろいろな人と話をした。気が合う人も、あまり合わない人も、合わせようとしてくれる人も、いろいろな人がいた。僕が求めていた、いろいろな人との出会いは、叶いつつあった。


 体育館での部活紹介が終わり、教室に戻ろうと歩いていると、倖成君を見つけた。


「倖成くん、部活入る?」

「僕はバレー続けようかな。まこは?」

「うーん、じゃあ僕もバレー続けようかな」

「おお、そっか。またよろしく」


 放課後、僕と倖成君はバレー部の体験入部に行った。背の高い先輩が何人もいる。かなり真剣な部活らしく、練習も厳しそうだった。先輩二人だけが僕たちの相手をし、他の人たちはずっと練習から離れなかった。そしてその二人も、早く練習に戻りたそうだった。


「え、倖成くん入るの?」

「うん、入ろうかなと思ってる」

「まこは?」

「うーん、どうしようかな」


 僕は、あまり乗り気になれなかった。帰りの時間が遅くなるため、家のことができなくなる。それは、少し困る。それに、僕にはあのバレー部で楽しめるとは思えなかった。良い雰囲気ではあったものの、僕はすでに温度差を感じている。


 倖成君は中学のときもかなり真剣なほうだったから、こういう部活こそ望んでいたものなのだろう。

 しかし僕は、誰かと楽しくできたらそれでよかっただけで、別段バレーボールにこだわる理由もなかった。バレー自体は嫌いではなかったし、むしろ楽しんでやっていた。勝つための努力もしたし、同じ部活の人たちとの練習も頑張った。だけどそこには、よくない思い出もある。

 正直にいえば中学のときのあの感じは嫌だった。うわべだけ取り繕って、気に入らない人と一緒のチームで勝ちを目指すのは、気が乗らない。


 結局僕はどこにも入部しなかった。僕にはもう、部活を本気でやる気力はない。新しい環境で心を入れ替えて取り組むのもいいかと思っていたけれど、きっと信用できる人だけではないだろうし、人間関係でも疲れてしまうだろう

 

 だから、もういっそのこと部活はやめて、クラスでのほどほどの関係を維持するほうが楽だと思った。それほどに、僕は部活に対していい印象を持っていなかった。




――――登場人物――――

玉木悠太たまきゆうた 僕

 中学時代はバレーボール部。


前川倖成まえかわこうせい 倖成くん

 中学時代は、僕と同じくバレーボール部。

 二年間クラスも同じでよく話をした。

 僕をまこと呼ぶ。


田原友貴たはらともき 友貴ともき

 中学は同じだが、話したのは高校受験の日が初めて。


江口えぐち先生

 高校一年生のときの担任。担当科目は国語。

 役者めいた話し方をする人。

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